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義妹との生活

モヤモヤ

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 久々の一人の休日だが……。

 結局、二人のことを考えてしまう。

「そういや、幼稚園ってお遊戯会とかあったよな?」

 それっていつだ? あと、お泊まり会とかもあったはず。

「春香も林間学校とかあるのか? あれって入学して、割とすぐだった記憶があるな」

 体育祭やら文化祭もあるだろうし……。

「兄貴達の代わりに行かないといけないよなぁ」

 そんなことを考えつつ、スマホについて調べる。

「使い放題? いや、それはどうなんだ?」

 春香はしっかりしてるから平気だと思うが……。
 一応、最低限のルールは決めておいた方がいいか。
 例えば、食事中は触らないとか。
 寝る前には、部屋に持っていかないとか。






 ……ん? あれ?

「……俺は……寝ちまったのか」

 どうやら、自覚はないが疲れていたらしい。
 良かった、二人がいない時で。
 自分たちのせいだと思ったら可哀想だからな。

「……時間!?」

 慌ててスマホを確認し……。

「ほっ、良かった。まだ二時か……いや、飯も食ってないから意外と時間ないぞ」


 軽く顔を洗って、素麺を食べる。

「んー……今日は外食でもするかね」

 素麺すすりながら、そんなことを考える。

 食べ終わり、少し休憩したのち……家を出る。





「おじたん!」

「おう、詩織。きちんとお昼寝はしたか?」

「あいっ! あのね! お友達と遊ぶの!」

「うん?」

 すると、俺より歳上に見える女性が近づいてくる。

「すみません、宗馬君ですか?」

「あれ……佐々木さん?」

「あらー! 良い男になって!」

「背中が痛いっす」

 そういや、桜さんが言ってたな。
 佐々木さんがいるから、もしあれだったら頼ってって。

「あら、ごめんなさいね。桜から聞いてるわよ、偉いわね」

 この方は桜さんの同級生で、詩織と同い年の女の子がいる。
 つまり、俺の小さい頃を知っているということだ。

「いえいえ、大したことは出来てないですよ」

「おじたんはえらいお!」

「ほら、子供は素直なんだから」

「そっか……ありがとな、詩織」

 そっと頭を撫でる。

「きゃはー」

「それで、うちで遊ばせても良いかしら? お夕飯も用意するし。もちろん、きちんと面倒は見させてもらいます」

 まあ、この方なら安心だな。
 それに友達と遊ぶことは大事だ。

「では、お言葉に甘えさせてもらいますね。詩織、きちんと言うことを聞くんだぞ?」

「あいっ!」

「良い返事だ。では、よろしくお願いします」





 その後迎えに行く約束をして、学校付近まで行く。

「おっ、もう終わったみたいだな」

 すでに登下校の生徒達が見える。
 そして、視線も感じる。

「……あれ? これってめちゃくちゃ怪しいんじゃ?」

 完全に不審者だと思われてしまう。

「おっ、コンビニあるな。あそこで一度車を止めてくるか」





 校門前のコンビニに車を止めて、ひとまずジュースだけ買う。
 当たり前だが、パーキングエリアに止めるよりは安いし。
 それに、何も買わないのも客商売の者としてはどうかと思うし。

「冷やかしはしたくないもんなぁ……」

 そして、車に寄りかかって待っていると……。

「あ、あの、困ります」

「良いじゃん! 遊び行こうぜ!」

 春香が、同じ学校の生徒に絡まれているな……。
 随分とチャラいな……ふむ、アレはないな。
 すぐに決断をして、そいつに近づく。

「おい」

「あぁ!?」

「お、お兄ちゃん!」

 春香が俺の後ろにきて、ぎゅっと身を縮める。
 すると、そのチャラい男が一歩下がる。

「お、お兄さん?」

「うちの妹に何か用か?」

「い、いえ! すいませんでしたー!」 

 ひと睨みすると、そいつは逃げていった。

「なんだ、根性のない奴だ。春香を口説くなら、俺に喧嘩売るくらいの度胸はないとな」

「お、お兄ちゃん……ありがとぅ」

「ったく……ほら、行くぞ」

 さっきから目立って仕方ない。

「あらあら、助けるまでもなかったわね」

「舞衣ちゃん!」

「ん? 友達か?」

「う、うん!」

「初めまして、お兄さん。桜井舞衣っていいます」

 そう言い、きちっとお辞儀をしてくる。
 見た目や雰囲気といい、大人っぽい子のようだ。
 綺麗タイプで、春香とはタイプが違うが……。

「初めまして、兄の宗馬です。妹がお世話になってます」

「お、お兄ちゃん!」

「なるほどなるほど……クラスの男子に見向きもしないわけね。お兄さん、春香のことは任せてください。あとで、きっちりとやっておきますので」

 ……これは、敵に回さない方がいいタイプだ。
 しかし、味方になれば頼もしいと言える。

「よろしくお願いします。こいつ、抜けてるところがあるので」

「むぅ……そんなことないもん」

「ほら、行くぞ」

 彼女に礼を言って、その場を後にする。

 まったく、結局目立ってしまった。

 しかし……見て見ぬ振りをするわけにはいかないしなぁ。

 うん、これは兄として当然の感情だ。

 ムカついているのも、きっとそれが理由に違いない。




 ひとまず、車に乗り込む。

「あれ? 詩織は?」

「ああ、佐々木さんのお子さんと遊ぶってさ」

「なら安心だね。佐々木さん、昔から知ってるもん」

「俺もだな。それにしても、危なっかしいやつ」

「うぅ……だってぇぇ」

 落ち込んでいるが、こればっかりはしっかり言わないとな。

「もう高校生なんだからな? 男はそういう目で見てくるし、中学とは違って力で敵わないんだぞ? 」

「はぃ……」

「全く……お前は可愛いんだから、これからああいうのは増えるからな……気をつけろ」

「お兄ちゃん……えへへ」

「おい? 何をニヤニヤしている? 俺は叱っているんだが?」

「お兄ちゃん! ありがとう!」

「へいへい」

 笑顔でそう言われちゃ、もうお手上げである。

 結局のところ、俺は春香には敵わんようだ。

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