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義妹との生活

成長

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 翌朝の月曜日になり……。

 ガチガチになっている春香を見送る。

「い、行ってきます!」

 すでに顔には、不安です!と書いてある。

「お、おう。落ち着け、大丈夫だ。いいか? まずは、隣の人におはようございますだ」

 単純なようで挨拶というのは馬鹿にできない。
 ある意味で、一番大事なコミュニケーションの取り方だ。

「う、うん!」

「こっちは、別に話したくないわけじゃないことをアピールしろ。間違っても机で寝たふりや、意味もなく教科書を眺めたりするなよ? あと、必ず相手の目を見て話すんだ。大丈夫だ、お前は良い子だから。きっと、それをわかってくれる子がいるさ」

「お兄ちゃん……が、頑張る!」

「で……もしスマホを聞かれたら明日買って貰うんだと言うんだ」

「ふえっ!?」

「明日は定休日だからな。一緒に行って買いに行くとしよう」

「お兄ちゃん……うん!」

 笑顔を見せて、玄関のドアを開けて出て行く。

「さて、あとは本人次第だな」

「おじたん!」

 振り返ると、詩織がお着替えをして待っていた。

「おっ、偉いな。もう一人でも準備できるな?」

 春香とは違う、その量のある髪を撫でる。
 春香は細いサラサラタイプで、詩織は量が多いしっとりタイプって感じか。
 ……そうか、美容院とか連れて行かないと行けないのか。

「あいっ!」

 ……うむ、俺も生活に慣れてきたし。
 来週あたりに、うさぎを見に行ってみるか。





 詩織を車に乗せて、幼稚園に向かう。

「ルンルン~」

 何やら、ご機嫌に鼻歌を歌っている。

 少し渋滞をしているので、詩織に話しかける。

「何の歌だ?」

「ぷりきゅあだお!」

 あれって、シリーズいっぱいあってよく分からん。
 俺がガキの頃は、デジモ○とかポケモ○見てたし。

「そっか、歌が好きなのか?」

「お歌歌うの好き!」

「ほう、そうだったのか」

「おねえたんも上手だお!」

「なに? そいつは初耳だな」

 小さい頃は……どうだったっけ?
 そういや、カラオケなんかは行ったことないな。

「おじたんは!?」

「うーん、どうだろうな?」

 あんまり行ったことないかもな。
 中学時代は、兄貴達もお金なかったし。
 高校に入ってからはバイト三昧だったし……。
 あれ? 俺って……あんまり青春してこなかったのかもな。
 まあ、それを不幸だと思ったことはないけど。






 詩織の送り、家へと戻る。

「さて、今日もお仕事頑張りますか」

 店に入ると、すでに和也が仕込みをしている。

「おっ、進んでいるな」

「あざっす!」

 日に日にスピードと正確さが増してきている。
 これなら、色々と任せてみてもいいかもな。

「もうピザを見せなくていいからな」

「えっ?」

「失敗したところで、誤魔化したりしないだろ? 完全にピザ場はお前に任せるよ」

「兄貴……はいっ……!」

 見る見るうちに涙が溢れていく……。

「おいおい、これから仕事だってのに」

「す、すみません」

「ほれ、洗面所で顔洗ってこい」

「うっす!」

 でも、そうか……。

 もう半年以上は経ってるってことか。

 そろそろ、色々なことを考えても良いかもな。

 仕事ばかりしていては、人生はつまらないと亮司さんも言ってたし。





 ◇◇◇

 うぅ……緊張するよぉ~。

 席替えをしたから、隣の人に話しかけたいんだけど……。

 というか、また窓際の席だよぉ~。

 それにしても、大人っぽい雰囲気の人なんだよね……。

 わたしなんかと、仲良くしてくれるかな?

 タ、タイミングはいつが良いのかな?

 今は、スマホ見てるし……良いのかな?

「あ、あの……」

 このままだと、先生が来てしまうので、意を決して話しかけます。

「うわっ!?」

「ご、ごめんなさい!」

 集中してたかな!? 邪魔しちゃったかな!?

「う、ううん、平気よ。どうかしたの?」

「いや、その……松井春香っていいます」

「へっ?」

「あ、あぅぅ……」

 や、やっちゃった……自己紹介はしたんだから知ってるに決まってるのに。

「ふふ……桜井舞衣よ」

 あっ——笑ってくれた。
 それも、嫌な感じじゃなく……。

「あの、これからよろしくお願いします」

「ええ、よろしくね。そっか、そっちのパターンだったのね」

「ふえっ?」

「ううん、なんでもないわ。何か困ったことがあれば言ってちょうだい」

 そう言い、長い髪をかきあげました。
 うわぁ……美人さんだし、余裕もあるなぁ。
 やっぱり、高校生ってこんな感じなのかな?

「じゃ、じゃあ……お友達になってくれませんか?」

 桜井さんは騒がしくないし、なんかグループに入ってない感じだし。

「ふふ、久々に聞いたわね。ええ、もちろんよ」

「あ、ありがとうございます」

「硬いわよ、もっと気楽でいいわ」

「は、はい……う、うん」

「そうそう。あと、舞衣って呼んでちょうだい。私は、春香で良いかしら?」

 い、いきなり名前!? しかも呼び捨て!?

「ま、舞衣ちゃんでも良い?」

「へっ?」

 あれ!? ダメだったかな?
 なんか、びっくりした顔してる……。

「い、嫌かな?」

「い、いいえ。ちゃん付け……まあ、それも新鮮で良いわね」

「じゃ、じゃあ、舞衣ちゃんで」

「わかったわ、春香。ちょっと待ってね——」

 そう言うと、周りに視線を向けました。
 すると、見ていた男子達が視線を逸らします。
 やっぱり舞衣ちゃんが綺麗だから見てたのかな?

「舞衣ちゃん、綺麗だもんね」

「……本気で言ってそうね。なるほど、面白いわ」

「えっと……?」

「よくこんなに真っ直ぐ育ったわね。あなた、中学の友達に言われなかった? 高校に入ったら、色々気をつけなさいって」

「な、なんでわかるの!?」

 みぃちゃんとか、さっちゃんとかに言われた!   
 世間知らずとか、騙されそうとか、悪い人に捕まりそうとか……。

「友達に恵まれたようね。いや、それも違うかしら……素で良い子だから、みんながそうしたかったのかも」

「よくわからないんだけど……」

「可愛いってことよ。じゃあ、これからよろしくね」

「う、うん……よろしくです」

 ……お、お兄ちゃん! やったよ!

 お兄ちゃんのアドバイスのおかげで、友達ができたよぉ~!

 早く家に帰って、お兄ちゃんに報告したいなぁ。
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