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義妹との生活

みんなに相談

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 一夜明けて、昨日と同じように行動する。

 朝は春香に起こされ……。

 三人で慌ただしくも楽しい朝食を済ませ……。

 詩織を幼稚園に送って、店へと戻ってくる。



「おっ、仕込みやってるな」

「兄貴、おはようございます!」

 やはり、下手に知識がない分成長が早い。
 教えたことを、どんどん吸収していく。
 言った通りに、わからないことがあったら聞いてくれるし……。
 これなら、色々なことを教えても平気かもな。

「おう、おはよう。じゃあ、俺はビーフシチューを作るか。試しに、少しだけ見てるといい」

「はいっ!」

「まずは、蜂蜜を塗っておいた牛ブロックを冷蔵庫から取り出す」

「確かブドウ糖でしたっけ? それが、肉のタンパク質が硬く変質するのを防いでくれるとか」

「おっ、偉いぞ。よく覚えてたな」

「へへ、あざっす」

「そうすることで焼いた時に、硬くなりにくくなるからな。さて、これを油とバター火にかけていく。中火より少し弱くして焼き色をつけるイメージだ」

 説明をしながら、フライパンに油とバターを入れ火にかける。

「肉は一口大に切り、フライパンに入れる」

 ジューっと、小気味よい音が聞こえる。
 焼いている間に、この先の工程を伝えておく。

「この4面に焼き色をつけたら、野菜を焼く前に火から取り出す。さて、なぜだ?」

「肉を焼きすぎないようにですね?」

「そうだ。あと、野菜たちの邪魔をしないようにだ。肉がある分温度も上がりにくくなる」

「あっ、なるほど……」

「次にその肉から出た油で、玉ねぎやジャガイモと人参等を炒めていく。さて、順番は?」

「えっと……ジャガイモからですか?」

「これも覚えていたな、偉いぞ。そう、硬く火の通りにくい物から順に入れていく」

「よし!」

「後は日 火を通したら赤ワインと、特製出汁スープで煮詰めていくだけだ。そして市販のデミグラスを少々、最後にケチャップを入れるのがポイントだな」

「あとは煮込むだけと……書けました!」

「まあ、とりあえず流れを覚えてくれれば良い」

「ありがとうございました!」




 その後はそれぞれの作業に戻り、ランチタイムの時間となる。

 今日のバイトは健二君と加奈子さんだ。

 親子ほど年齢は離れているが、二人とも仲良くやってくれてるようで一安心だ。

 多分、健二君が大人っぽい子だからだろうな。

 今時の子にしては珍しく、髪も染めてないし短髪だ。

 身長も180くらいあるし、顔も悪くない。

 まさしく、好青年というやつだ。

 何より仕事にも隙がないし、お母さんを見てるからか接客業はお手の物だ。

 というか、ここの出身なので常連さんは皆顔見知りだし。





 そして、魔の金曜日のランチタイムを終えた……。

「みんな、お疲れ様」

「お疲れっす!」

「お疲れ様でした」

「お疲れ様~」

「みんな、今日もありがとね。で、相談があるんだが……」

 妹が、ここでバイトをしたいことを伝える。

「僕は賛成ですよ。まだ会ったことはないですけど、僕もお店の店番なんかで学ぶことは多かったですから」

「そうか、健二君は小さい頃から手伝ってるって言ってたもんな」

「俺も良いですよ! ただ、俺嫌われてるかもしれないけど……」

「悪いな、それこそ人見知りする子でな。でも、お前の良さもすぐにわかってくれるさ」

「私も良いですよ。娘を持つ親として、ものすごく理解できますからね。何なら、初めてのバイトに娘をここで働かせたいもの」

「はは、ありがとうございます。もし、その時までやっていたら面接しますよ。とりあえず、ありがとうございます。もしその時が来たらご迷惑をおかけすると思いますが、どうかよろしくお願いします」

「ちょっ!? 兄貴!」

「宗馬さん、頭を上げてください。僕たちだって、それぞれに事情があって雇ってもらってるんですから。宗馬さんのおかげで、僕の実家は立て直すことができました。なので、宗馬さんへの恩返しができるのを喜んでるくらいです」

 俺が健二君の実家から野菜を買い取り、それをお客さんに宣伝していることだろう。
 でも、それはお互い様だし……父親がいない健二君の家が大変なのは知ってるけど。

「そうですよ、宗馬君。私もここにいるお陰で、娘も嫌な目に遭わずに済みました。何より、送り迎えができるようになりましたから。それにお給料の上に、作り置きの食材まで頂いて……私、精一杯フォローしますね」

「……ありがとうございます」

「まったく、礼を言うのはこっちですよ。でも、ちょうど良いタイミングじゃないっすか?忙しくなってきたんで、一人増やすかどうか悩んでましたよね?」

「ああ、それな。ただ、高校生は初めてだからな。ほとんど中学生と変わらんし……色々とミスも多いだろうから、少し迷ったんだよ」

「みんな、誰でもそうです。僕も最初はお母さんには叱られましたし」

「みんなでフォローすれば平気ですよ。私も一緒に謝りますから」

「決まりっすね!」

 ……いかん、つい泣きそうになってしまった。

 俺は……良い仲間を持ったな。



 その後車に向かう道中で、電話をかける。

「もしもし」

『大将ー? あれ? 今日のシフト変更ですかー?』

『すまん、それはそのままで。夜は話す時間がないからさ。実は……』

 皆と同じ内容を伝える。

『はぁー、なるほどなるほど。可愛い子は大歓迎ですよー!』

『今野さんなら、そう言うと思った。多分、年も近いし接しやすいと思うから、面倒をかけるかもしれないけど……』

『いえいえー、私が大将にしてもらったことに比べたら大したことはないですよー。下の子たちの面倒を見なくてはいけないので、シフトに融通利かしてくれますし。余った食材を使ってカレーとか持たせてくれますし。両親も、いつもありがとうございますってお伝えしてと』

 今野さん家は、いわゆる大家族ってやつだ。
 しかも両親が共働きなので、長女である今野さんが面倒を見ているらしい。
 なので、バイトがしたくてもできる場所がなかったと言っていたな。

『いや、こっちこそ助かってるよ。空気が読めるし、場の空気を明るくしてくれるからね』

『ふふー、惚れちゃダメですよ? 私、彼氏一筋なのでー』

『はいはい、知ってます。じゃあ、よろしく』

『はーい、ではではー』

 電話を切り、すぐさま次の電話をする。

『おや、どうしましたか?』

『亮司さん、こんにちは。今、お時間は平気ですか?』

『ええ、平気ですよ』

『実は……』

 同じ説明をする。

『ふむ……全員に許可を?』

『えっ? ええ、まあ……』

『従業員もお店の人で、自分だけの店ではないと思っている証拠ですね』

『当たり前ですよ。俺はそういう傲慢な人達を見てきましたから』

 ほとんどがワンマンなところだったからな。
 奴らは自分が偉いと勘違いしたり、自分のおかげで店があると思い込んでいた。
 そんなわけがないんだよ、自分一人で出来ることなんてたかが知れている。

『その若さで、それに気づけるのを喜ぶべきか……それとも、今の世の中を嘆くべきなのでしょうかね。ですが、ステキな考え方です。では、この老骨もお手伝いさせて頂きましょう』

『あ、ありがとうございます!』

『いえ、久々に嬉しい気持ちになります。では、また』





 電話を終えた俺は、車に乗り込み……詩織を迎えにいく。

「おじたん!」

「おう、良い子にしてたか?」

「あいっ!」

「悪いな、少し遅くなって」

「平気だお! 先生がいいなって!  若くてカッコいいって! 彼女がいるのって聞かれたお!」

「そ、そうか」

 保母さんに言われたのか……うむ、意外な出会いがあるかもしれん。

 何人か見たが同年代もいるし、可愛い人もいたな……。

 いやいや! 今はそんな余裕ないだろ!

 はて? 今、一瞬……春香の顔が浮かんできたのは何故だ?

 あれかもな……またお兄ちゃんのばかとか、エッチとか言われると思ったのかもな。
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