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義妹との生活

春香との話

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 ……確か、兄貴が言っていたな。

 何回か電話しあって色々と確認したはすだ……。





『兄貴、何かさせてはいけないこととかあるか?』

『男女交際だっ!』

『お、おう。いや、でも高校生だぜ?』

『まだ早すぎる!』

『兄貴、それってブーメランだからな? 兄貴が桜さんと付き合ったの、高校一年だろうに』

『ぐっ!? ……いや、しかし……』

『というか、そればっかりは俺にはどうにもできないし』

『いや、お前なら問題ないのだが……』

『あん?』

『い、いや、なんでもない。そうだな……バイトはさせないでくれ』

『なに? 出会いが出来るからか?』

『それもあるが……俺たちはお金で苦労しただろ? 特に、お前は春香の世話とバイトでろくに遊ぶこともできなかった。しまいには、彼女に振られているだろう? まあ、俺の稼ぎが良くないのが原因だが』

『言っておくけど、それを悔やむことだけはやめてくれ。俺は春香の世話を嫌だと思ったことはないし、バイトだって自分で決めたことだ。振られたのも、全部俺が悪かったし』

『宗馬……ありがとな、お前が弟で良かったよ』

『はいはい、そうですね』

『まあ、照れるなよ。そうだな……俺は学生の本業は勉強だと思っている。今の世の中は多様性があって、勉強は必要ないという人もいるがな。それでも努力して勉強したことや、学校生活で経験したことは無駄にはならないと思う』

『まあ、言いたいことはわかる。俺も大学行けば良かったかなとか思うこともあるし。経済学とか心理学、あとは税金関係の本を読んでるけど独学だと中々難しいし』

『行かせてやり……いや、今のなしだ』

『ああ、そうしてくれ。行きたかったなら、奨学金でも何でもして行けば良かっただけだ。でも、バイトだって社会経験になるぜ?』

「それもわかる。だから……もし春香がバイトしたいと言い出したら、お前のところで雇ってもらえないか?』

『……なるほど』

『もちろん、最終的な判断はお前に任せる。お前だって生活がかかっているしな。まあ、そんなにすぐには言ってこないだろう。その前に俺の転勤も終わるかもしれんし』








 ……兄貴、一週間も経たずに早速言ってきたけど?

「お、お兄ちゃん……?」

「そうだな。まずは……どうしてだ?」

「う、うんとね……わ、わたし、人見知りなの」

「ああ、そうらしいな。俺には大分遠慮ないけど」

「お兄ちゃんのばか……」

「あん?」

「なんでもない! そ、それでね、それを直したいなって思って……でも、勉強もあるから週二回くらいで……こんな理由じゃ雇ってもらえないかな? 色々調べては見たんだけど」

「なるほど。まあ、雇うかどうか微妙だな。相手は慈善事業じゃないし。バイトとはいえ、お給料は発生するし、店の一員となる」

「そうだよね……」

「ただ、その真っ直ぐさは良いと思うがな」

「ふえっ?」

「大体の奴は面接で嘘をつくからな。社会経験がしたいとか、週五で入れますとか。実際は遊ぶ金欲しさや、週に三回くらいになったりする」

「そ、そうなの?」

「まあ、俺の知る限りではな。あと、バイト募集に記載してあるものは鵜呑みにしない方がいい。大体が嘘……とは言えないが、そういうものもある」

「えっと……どういうこと?」

「実際の時給が違ったり、研修という名のもとにこき使ったりもする。あとは希望した時間帯とは違うシフトになったりな」

「えぇー……そんなことしても良いの?」

「良くはないさ。しかし、それがまかり通ってるところもある」

「ふぇ~怖いね……」

「まあ、どんなところでしたいかにもよるけどな」

「接客業かなって……人と話すの苦手だから」

「ふむふむ。まあ、可愛いからケーキ屋さんとかカフェなら雇ってもらえるかもな」

「か、可愛い!?」

「あん? ああ、俺の妹は可愛い決まってる」

 というか、あまり自覚がないのか?
 周りの男子たちは何をしている?
 それとも、清楚系美少女は最近では人気ないのか?

「あぅぅ……そ、そういう意味かぁ……ばか」

「おい? ばかばかいうなよ」

「だ、だってぇ……」

「何故泣きそうになる? ……さて、突然だが提案だ」

「えっ?」

「ここにお店を経営しているオーナー兼店長がいるのだが?」

「そ、それって」

「俺の店で働くか?」

「うぅー……グスッ」

「な、何故泣く?」

「だ、だってぇ……わたし、迷惑ばっかりかけてるのに……」

「俺が一言でも迷惑だと言ったか?」

「ううん……言ったことない。でも、生活まで面倒みてもらってるのに……」

「それ、やめにしないか?」

「ふぇ?」

 俺の言葉に、まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。

「してもらってるのにとか、迷惑とか、面倒とか。俺は俺の意思でお前を預かってるし、嫌々暮らしているわけでもない。むしろ、お前と詩織には助けられてるさ」

「えっ? な、何もしてないよ?」

「家に帰ってきて、誰かがいるっていうのは良いもんだ。それが寝てたとしても、空気感っていうのかな。人の気配がするって安心するんだよ」

「……わかるよ。わたしも、お兄ちゃんが帰ってきてると安心したもん」

「まあ、そういうことだ。それに片付けや料理だって頑張ってるだろ?」

「でも、全然上手くできないよ……?」

「初めから上手く行く奴なんていないさ。少なくとも、俺は嬉しいけどな」

「で、でもぉ……」

「それに——家族なんだから」

 今、自然とそう言えた気がする。
 一度は家族になることから逃げ出した俺が……。
 でも、そういうことなのかもしれない。
 その暖かさ、有り難みを……二人が思い出させてくれた。

「お兄ちゃん……」

「だから、遠慮なく俺を頼ってくれ。俺はお兄ちゃんなんだからな」

「う、うん! ……ありがとう、お兄ちゃん」

 そう言って、ようやく笑顔を見せてくれた。

「おう……ほら、さっさと寝なさい」

 いかん、今更恥ずかしくなってきた。
 我ながら、なんつーくさいセリフを……!

「う、うん、おやすみなさい」

 春香の方も照れ臭いのか、そそくさと退散して部屋に戻る。

 ……とりあえず明日の金曜日に、従業員の皆に相談だな。
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