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義妹との生活
変わる生活
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急いで戻った俺は、すぐに店の鍵を開けて中に入る。
「パスタソースの仕込みをして……」
車の中でシュミレーションをしてきたので、素早く作業に取り掛かる。
「玉ねぎニンニクをオリーブオイルで炒めて……」
その間にトマトホール缶を処理する。
今作っているのは、全てのトマト系のベースになるソースだ。
すると……。
「おはようございます!」
「悪いな、和也。いつもより早くて。平気そうか?」
「はいっ! 余裕っすよ! 友達とかの通勤時間を考えたら楽なもんですし」
「まあ、俺もそれがあって自宅兼仕事場にしたけど。それとありがとな、きちんと上乗せはするから」
「い、良いんですか? ただでさえ売り上げ下がってるのに……俺のしては指導代だと思ってたんですけど……」
「うん? 上の者が下の者に教えるのに金なんかとるか。セミナーや昔の料理人じゃあるまいし。俺が、そういうのが嫌いなのは知ってるだろ?」
教えてもらいたければ、無償で何かをしろとか。
酷いやつは、仕事以外の雑用まで頼んだりしてたからな。
さっさと仕事を教えて、それで手伝ったもらった方が効率が良いに決まってる。
「ええ、知っていますけど……」
「なら、この話はおしまい。その代わりに、さっとと覚えてくれれば良いから」
「は、はいっ! よろしくお願いします!」
「おう、こちらこそよろしく。じゃあ、これからやってもらうか」
「手羽元ですか?」
「ああ、これを水から煮出す」
「えっ? 水からですか?」
「ああ、そうだ。骨つきだし、その方が出汁が出やすいんだよ。何より濁りにくく、透き通るような色になるしな」
「へぇー、そうなんですね」
「しいたけみたいなキノコ類もそうだから覚えておくと良い」
「なるほど……」
和也は一生懸命にメモを取っている。
まあ、最初のうちは逆に時間がかかるが仕方あるまい。
いわゆる、先行投資ってやつだな。
「弱火で煮て、そしてアクが出てきたら、それを丁寧にすくってくれ。そして、真横で野菜類をカットしてくれると助かる。あとは洗い物とか」
「わかりました!」
「よし、任せた。何かわからなかったら……わかるな?」
「はいっ! すぐに聞きます! 何回でも!」
「そういうことだ」
そっからは時間もないので、黙って作業をする。
いつもより三十分ほど早くきてもらったが……。
はっきりいって、それだけでも大きな違いだ。
その間は自分のことに集中できるし、洗い物なんかも気にしなくていい。
ふぅ……なんとか間に合ったか。
「おはよーございまーす」
「おはようございます」
和也のおかげで、アルバイトの子が来る前に終わらせる作業をこなすことができた。
「おはよう、今野さん、健二君」
「店長、これ母さんからです」
俺を唯一店長と呼んでくれるこの子は、澤村健二君。
俺が野菜を仕入れている店の店主である、よしえさんの息子さんだ。
大学生一年生になったので、一度バイトをさせたいということで頼まれたんだっけ。
「えっと……いやいや! 悪いって!」
貰った袋の中には、新鮮なお野菜がたくさん入っていた。
「母さんが是非受け取ってほしいって言ってました。売り物にならない商品ですが、味は保障しますって」
貰った野菜は、どれも不揃いだ。
確かに売り物にはならないが、味は良いのは知っている。
「ああ、それは知ってるよ。そっか、捨てちゃうやつだもんな?」
「ええ、そうです。僕たちも食べ切れませんし」
「じゃあ、有難く頂くよ。お母さんに、今度お裾分けするから何が良」
「ビーフシチューだそうです」
「……はい?」
俺が言い切る前に答えが返ってきたぞ?
「母さんが、店長ならそういうだろうって。家族みんな好きですし、俺も大好きです」
「ハハ……これは1本取られたな。わかった、用意しておくよ。それと、ありがとな」
「大将! 私には!?」
「なんで今野さんにもあげない……いや、いいか。春香や詩織が世話になるしな」
「わぁーい! よーし! お仕事頑張ります!」
「ええ、僕も頑張ります」
「少年! 元気出してこー!」
「僕は元気ですけど……それに一個しか違わないじゃないですか」
「ほら! 細かいことは気にしない! 行くよ!」
健二君は、今時の子にしては真面目な青年だ。
しっかり挨拶もできるし、落ち着いている。
よしえさんは、自己主張がないのが悩みだって言ってたっけ……。
うーん、難しい問題だよなぁ……俺も世話になってるから何か出来れば良いけど。
そして、いつもの激戦のランチタイムを終え……休憩とはいかない。
「お疲れ様でした」
「お疲れでーす! 私は夜もきますねー」
「ああ、二人ともありがとね」
アルバイトの子が帰ったら、俺にはすぐにやることがある。
「和也、悪いが頼めるか?」
「はいっ!」
「助かる、では行ってくる」
準備を済ませ、店を出て行く。
信頼できる和也だからこそ、店を任せることができるな。
そして車に乗って……再び、この場所にやってくる。
「おじたん!」
そう、俺にはお迎えがある。
ちょうどいい時間に休憩時間になるからな。
「おう、詩織。楽しかったか?」
「あいっ!」
「よし、じゃあ帰るとするか」
先生方に挨拶をして、再び車を走らせる。
「ルンルン~」
「随分とご機嫌だな?」
「あいっ! おねえたんなのっ!」
「うん?」
「ちっちゃい子たちのお世話したのっ!」
……なるほど、年長さんだからか。
「そっか、偉いぞ。後で、お姉ちゃんにも言わないとな」
「あいっ!」
それからも一人で鼻歌を歌っている。
どうやら、幼稚園生活はうまく行っているらしい。
春香の方は……大丈夫かね?
「パスタソースの仕込みをして……」
車の中でシュミレーションをしてきたので、素早く作業に取り掛かる。
「玉ねぎニンニクをオリーブオイルで炒めて……」
その間にトマトホール缶を処理する。
今作っているのは、全てのトマト系のベースになるソースだ。
すると……。
「おはようございます!」
「悪いな、和也。いつもより早くて。平気そうか?」
「はいっ! 余裕っすよ! 友達とかの通勤時間を考えたら楽なもんですし」
「まあ、俺もそれがあって自宅兼仕事場にしたけど。それとありがとな、きちんと上乗せはするから」
「い、良いんですか? ただでさえ売り上げ下がってるのに……俺のしては指導代だと思ってたんですけど……」
「うん? 上の者が下の者に教えるのに金なんかとるか。セミナーや昔の料理人じゃあるまいし。俺が、そういうのが嫌いなのは知ってるだろ?」
教えてもらいたければ、無償で何かをしろとか。
酷いやつは、仕事以外の雑用まで頼んだりしてたからな。
さっさと仕事を教えて、それで手伝ったもらった方が効率が良いに決まってる。
「ええ、知っていますけど……」
「なら、この話はおしまい。その代わりに、さっとと覚えてくれれば良いから」
「は、はいっ! よろしくお願いします!」
「おう、こちらこそよろしく。じゃあ、これからやってもらうか」
「手羽元ですか?」
「ああ、これを水から煮出す」
「えっ? 水からですか?」
「ああ、そうだ。骨つきだし、その方が出汁が出やすいんだよ。何より濁りにくく、透き通るような色になるしな」
「へぇー、そうなんですね」
「しいたけみたいなキノコ類もそうだから覚えておくと良い」
「なるほど……」
和也は一生懸命にメモを取っている。
まあ、最初のうちは逆に時間がかかるが仕方あるまい。
いわゆる、先行投資ってやつだな。
「弱火で煮て、そしてアクが出てきたら、それを丁寧にすくってくれ。そして、真横で野菜類をカットしてくれると助かる。あとは洗い物とか」
「わかりました!」
「よし、任せた。何かわからなかったら……わかるな?」
「はいっ! すぐに聞きます! 何回でも!」
「そういうことだ」
そっからは時間もないので、黙って作業をする。
いつもより三十分ほど早くきてもらったが……。
はっきりいって、それだけでも大きな違いだ。
その間は自分のことに集中できるし、洗い物なんかも気にしなくていい。
ふぅ……なんとか間に合ったか。
「おはよーございまーす」
「おはようございます」
和也のおかげで、アルバイトの子が来る前に終わらせる作業をこなすことができた。
「おはよう、今野さん、健二君」
「店長、これ母さんからです」
俺を唯一店長と呼んでくれるこの子は、澤村健二君。
俺が野菜を仕入れている店の店主である、よしえさんの息子さんだ。
大学生一年生になったので、一度バイトをさせたいということで頼まれたんだっけ。
「えっと……いやいや! 悪いって!」
貰った袋の中には、新鮮なお野菜がたくさん入っていた。
「母さんが是非受け取ってほしいって言ってました。売り物にならない商品ですが、味は保障しますって」
貰った野菜は、どれも不揃いだ。
確かに売り物にはならないが、味は良いのは知っている。
「ああ、それは知ってるよ。そっか、捨てちゃうやつだもんな?」
「ええ、そうです。僕たちも食べ切れませんし」
「じゃあ、有難く頂くよ。お母さんに、今度お裾分けするから何が良」
「ビーフシチューだそうです」
「……はい?」
俺が言い切る前に答えが返ってきたぞ?
「母さんが、店長ならそういうだろうって。家族みんな好きですし、俺も大好きです」
「ハハ……これは1本取られたな。わかった、用意しておくよ。それと、ありがとな」
「大将! 私には!?」
「なんで今野さんにもあげない……いや、いいか。春香や詩織が世話になるしな」
「わぁーい! よーし! お仕事頑張ります!」
「ええ、僕も頑張ります」
「少年! 元気出してこー!」
「僕は元気ですけど……それに一個しか違わないじゃないですか」
「ほら! 細かいことは気にしない! 行くよ!」
健二君は、今時の子にしては真面目な青年だ。
しっかり挨拶もできるし、落ち着いている。
よしえさんは、自己主張がないのが悩みだって言ってたっけ……。
うーん、難しい問題だよなぁ……俺も世話になってるから何か出来れば良いけど。
そして、いつもの激戦のランチタイムを終え……休憩とはいかない。
「お疲れ様でした」
「お疲れでーす! 私は夜もきますねー」
「ああ、二人ともありがとね」
アルバイトの子が帰ったら、俺にはすぐにやることがある。
「和也、悪いが頼めるか?」
「はいっ!」
「助かる、では行ってくる」
準備を済ませ、店を出て行く。
信頼できる和也だからこそ、店を任せることができるな。
そして車に乗って……再び、この場所にやってくる。
「おじたん!」
そう、俺にはお迎えがある。
ちょうどいい時間に休憩時間になるからな。
「おう、詩織。楽しかったか?」
「あいっ!」
「よし、じゃあ帰るとするか」
先生方に挨拶をして、再び車を走らせる。
「ルンルン~」
「随分とご機嫌だな?」
「あいっ! おねえたんなのっ!」
「うん?」
「ちっちゃい子たちのお世話したのっ!」
……なるほど、年長さんだからか。
「そっか、偉いぞ。後で、お姉ちゃんにも言わないとな」
「あいっ!」
それからも一人で鼻歌を歌っている。
どうやら、幼稚園生活はうまく行っているらしい。
春香の方は……大丈夫かね?
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