アラサー独身の俺が義妹を預かることになった件~俺と義妹が本当の家族になるまで~

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義妹との生活

変わる生活

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急いで戻った俺は、すぐに店の鍵を開けて中に入る。

「パスタソースの仕込みをして……」

車の中でシュミレーションをしてきたので、素早く作業に取り掛かる。

「玉ねぎニンニクをオリーブオイルで炒めて……」

その間にトマトホール缶を処理する。
今作っているのは、全てのトマト系のベースになるソースだ。

すると……。

「おはようございます!」

「悪いな、和也。いつもより早くて。平気そうか?」

「はいっ! 余裕っすよ! 友達とかの通勤時間を考えたら楽なもんですし」

「まあ、俺もそれがあって自宅兼仕事場にしたけど。それとありがとな、きちんと上乗せはするから」

「い、良いんですか? ただでさえ売り上げ下がってるのに……俺のしては指導代だと思ってたんですけど……」

「うん?  上の者が下の者に教えるのに金なんかとるか。セミナーや昔の料理人じゃあるまいし。俺が、そういうのが嫌いなのは知ってるだろ?」

 教えてもらいたければ、無償で何かをしろとか。
酷いやつは、仕事以外の雑用まで頼んだりしてたからな。  
さっさと仕事を教えて、それで手伝ったもらった方が効率が良いに決まってる。

「ええ、知っていますけど……」

「なら、この話はおしまい。その代わりに、さっとと覚えてくれれば良いから」

「は、はいっ! よろしくお願いします!」

「おう、こちらこそよろしく。じゃあ、これからやってもらうか」

「手羽元ですか?」

「ああ、これを水から煮出す」

「えっ? 水からですか?」

「ああ、そうだ。骨つきだし、その方が出汁が出やすいんだよ。何より濁りにくく、透き通るような色になるしな」

「へぇー、そうなんですね」

「しいたけみたいなキノコ類もそうだから覚えておくと良い」

「なるほど……」

和也は一生懸命にメモを取っている。
まあ、最初のうちは逆に時間がかかるが仕方あるまい。
いわゆる、先行投資ってやつだな。

 「弱火で煮て、そしてアクが出てきたら、それを丁寧にすくってくれ。そして、真横で野菜類をカットしてくれると助かる。あとは洗い物とか」

「わかりました!」

「よし、任せた。何かわからなかったら……わかるな?」

「はいっ! すぐに聞きます! 何回でも!」

「そういうことだ」

そっからは時間もないので、黙って作業をする。
いつもより三十分ほど早くきてもらったが……。
はっきりいって、それだけでも大きな違いだ。
その間は自分のことに集中できるし、洗い物なんかも気にしなくていい。




ふぅ……なんとか間に合ったか。

「おはよーございまーす」

「おはようございます」

和也のおかげで、アルバイトの子が来る前に終わらせる作業をこなすことができた。

「おはよう、今野さん、健二君」

「店長、これ母さんからです」

俺を唯一店長と呼んでくれるこの子は、澤村健二君。
俺が野菜を仕入れている店の店主である、よしえさんの息子さんだ。
大学生一年生になったので、一度バイトをさせたいということで頼まれたんだっけ。

「えっと……いやいや! 悪いって!」

貰った袋の中には、新鮮なお野菜がたくさん入っていた。

「母さんが是非受け取ってほしいって言ってました。売り物にならない商品ですが、味は保障しますって」

貰った野菜は、どれも不揃いだ。
確かに売り物にはならないが、味は良いのは知っている。

「ああ、それは知ってるよ。そっか、捨てちゃうやつだもんな?」

「ええ、そうです。僕たちも食べ切れませんし」

「じゃあ、有難く頂くよ。お母さんに、今度お裾分けするから何が良」

「ビーフシチューだそうです」

「……はい?」

俺が言い切る前に答えが返ってきたぞ?

「母さんが、店長ならそういうだろうって。家族みんな好きですし、俺も大好きです」

「ハハ……これは1本取られたな。わかった、用意しておくよ。それと、ありがとな」

「大将! 私には!?」

「なんで今野さんにもあげない……いや、いいか。春香や詩織が世話になるしな」

「わぁーい! よーし! お仕事頑張ります!」

「ええ、僕も頑張ります」

「少年! 元気出してこー!」

「僕は元気ですけど……それに一個しか違わないじゃないですか」

「ほら! 細かいことは気にしない!  行くよ!」

健二君は、今時の子にしては真面目な青年だ。 
しっかり挨拶もできるし、落ち着いている。
よしえさんは、自己主張がないのが悩みだって言ってたっけ……。
うーん、難しい問題だよなぁ……俺も世話になってるから何か出来れば良いけど。




そして、いつもの激戦のランチタイムを終え……休憩とはいかない。

「お疲れ様でした」

「お疲れでーす! 私は夜もきますねー」

「ああ、二人ともありがとね」

アルバイトの子が帰ったら、俺にはすぐにやることがある。

「和也、悪いが頼めるか?」

「はいっ!」

「助かる、では行ってくる」

準備を済ませ、店を出て行く。
信頼できる和也だからこそ、店を任せることができるな。





そして車に乗って……再び、この場所にやってくる。

「おじたん!」

そう、俺にはお迎えがある。
ちょうどいい時間に休憩時間になるからな。

「おう、詩織。楽しかったか?」

「あいっ!」

「よし、じゃあ帰るとするか」




先生方に挨拶をして、再び車を走らせる。

「ルンルン~」

「随分とご機嫌だな?」

「あいっ! おねえたんなのっ!」

「うん?」

「ちっちゃい子たちのお世話したのっ!」

……なるほど、年長さんだからか。

「そっか、偉いぞ。後で、お姉ちゃんにも言わないとな」

「あいっ!」

それからも一人で鼻歌を歌っている。

どうやら、幼稚園生活はうまく行っているらしい。

春香の方は……大丈夫かね?



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