アラサー独身の俺が義妹を預かることになった件~俺と義妹が本当の家族になるまで~

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義妹との生活

慌ただしい年頃

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 ……ん? なんだ?

 ……お兄ちゃん!

 春香の声がする……。

 なんだ、昔の夢か……。

 そういや、よく俺の布団に潜り込んできたっけ……。

 仕方のないやつだ……しようがない、入れてやるとするか。


「ほら、こいよ」

 昔のように腕を引いて、腕の中におさめる。
 あれ? なんか、大きい気がする。
 まあ、気のせいか。

「へっ……きゃっ!?」

「全く、いくつになっても甘えん坊だな」

「お、お、お兄ちゃん!?」

 ……ん? 何かおかしい。
 夢の中なのに、香りまで……それも、花のような……。
 なんか、色々柔らかいし……。

「ひゃあ!? お、お、お兄ちゃんのエッチ——!」

「イテッ!?」

「あぅぅ……! お兄ちゃんのばかぁぁ——! もうお嫁にいけないよぉ~!」

 ドタドタと音がして、ベットから春香が出て行く。
 なんか、やたらリアルな夢だな……夢?

「……なんてこった」

 ここは俺の家。
 春香と詩織と同居中。
 春香はもう小学生ではなく、女子高生の女の子だ。
 つまりは……現実ということだ。

「やっちまった……いつもと起きる時間が違うからな」

 ていうか、抱き心地が全然違ったのだが?
 ……変態か、俺は。

「とりあえず……土下座から始めるのしようか」





 ……はい、変態です。

 いえ、おじたんでお兄ちゃんです。

「おじたん?」

「わ、わかったから!」

「どうぞ、蹴るなり殴るなりしてくれ。俺の気がすまん」

 というか、こんなことが兄貴に知られたら……ブルブル。

「そ、そんなことできないよぉ~!」

「ふむ……では、何か一つだけ願いを聞こう。それで許してくれるか?」

「ふえっ? ……何でもいいの?」

 オロオロした姿が一変して、急に真面目な表情になる。
 ……もしや、何か恐ろしいことを要求されるのでは?

「お、おう、俺にできることならな」

「じゃあ……」

「おねえたん! 遅れちゃうお!」

「はっ! いけない! お兄ちゃん! とりあえずご飯!」

「お、おう!」




 二人で朝飯を用意して、その間に詩織に着替えてもらう。

 何とかすぐに用意でき、朝食をとる。

「よし、いただきます」

「いただきます」

「いたーきます!」

 特に喋る事もなく、黙々と食事を進める。





 ……ふぅ、これなら間に合うか。

 急いだからか、少しだけ余裕が出来た。

「詩織、偉かったな。今日も一人で出来たな?」

「あいっ!」

「じゃあ、お兄ちゃん! わたし行ってくるねっ!」

「おう、気をつけろよ。友達作りがんばんな」

「うっ……はぃ……」

 いつもの強気は何処へやら、弱気のまま玄関を出て行った。

「おねえたん?」

「はは……詩織は友達いるか?」

「あいっ!」

「そっか、ならよかった。お姉ちゃんは新しい友達ができるが不安なんだよ」

「平気だおっ! お姉ちゃん優しいもん!」

「おっ、そうだな。お姉ちゃんの良さをわかってくれる人もいるよな……さて、俺たちも行くとするか」

「あいっ!」

 元気いっぱいの詩織を連れて、家を出て商店街を歩く。

「どこにいくお?」

「車に乗って行くからなー」

「おくるまっ!?」

「おっ、知ってるか」

「ブーンてやつ!」

「はは! 正解だな」

 すると、声をかけられる。

「あら、おはようございます」

「おはようございます」

「おはようごじゃいます!」

「あらあら、元気いっぱいね~」

 次々と挨拶をされては、詩織は元気よく返していく。
 俺一人では、こんなに挨拶されないが……やっぱり、素直な子供は可愛いだろうな。




 車に乗り込み、まずはアレをしなくてはいけない。

「詩織、自分で乗れるか?」

「あいっ!」

「よし、偉いぞ」

「きゃはー」

 きちんと座れたので、優しく頭を撫でてあげる。
 しかし……俺の車にチャイルドシートか。
 まだ独身のアラサーで、彼女もいないのに。
 ……悲しくなってきたな。




 安全運転で車を走らせ、幼稚園に向かう。

 もう少し手がかかるかと思ったが、意外と大人しくしている。

「どうした? 静かにして」

「ほえっ? おはなししていいの?」

「うん?」

「パパとママが、二人きりのときは、危ないからやめなさいって……」

 なるほど……眼に浮かぶようだ。
 そして、俺にはその理由が痛いほどわかる。
 俺と兄貴の両親は、交通事故で亡くなっているからだ。

「偉いな、約束を守れて。すぐ着くからな、良い子にしてくれると助かる」

「あいっ!」

 やれやれ、少し甘えん坊なところはあるが……。
 それ以上に良い子に育って……兄貴と桜さんの育て方が良かったんだな。



 信号待ちなどで、少しだけお話をしつつ……無事に幼稚園に到着した。

「あら、詩織ちゃん、おはようございます」

 還暦くらいに見える保母さんが、優しく挨拶をしてくる。

「おはようごじゃいます!」

「よ、よろしくお願いします」

 い、いかん、よくわからないが緊張する。
 未知の世界というか、久々の感覚というか……場違い感が。

「貴方は……」

「おじたんだお!」

「芹沢宗馬と申します」

「お話は伺っております。桜さんが、頼りになる弟がいるって」

「そんなことを……はい、そうなれたら良いと思ってます」

 本当に、あの人には頭が上がらないなぁ。

「ふふ、良い答えですね。あっ——私、この園の園長を務めております、中村友恵と申します」

「中村友恵さんですね、わかりました」

「では、どれくらいになるかわかりませんが、よろしくお願いしますね」

「こちらこそ、よろしくお願いします。色々と至らない点もあると思いますが、ご指導して頂けると嬉しいです」

「あらあら、しっかりした男性なこと。詩織ちゃん、カッコいいおじたんね?」

「あいっ!」

「では、きちんとお預かりしますね」

「ええ。詩織、後で迎えに来るからな。いい子にしてろよ?」

「あいっ! おじたんもにんむがんばって!」

「おう!」

「任務……?」

「へっ……はは、仕事のことですね」

「なるほど、いい言葉ですね。じゃあ、私も任務をしましょう。詩織ちゃん、行きましょうか?」

 中村園長に手を引かれ、詩織は幼稚園の中に入って行った。

「なんか、少し思い出してきたな」

 春香をよく送り迎えしてたんだよな……。

「今では、あんなに大きくなって……」

 ……そういや、朝の俺はどこを触ったんだ?
 めちゃくちゃ柔らかかったが……。

「ヤベッ! そんなこと言ってる場合じゃねえ!」

 俺が店を開けないと誰も入れない。

 俺は安全運転を心がけつつ、急いで家へと戻る。



 こうして……慌ただしい日々が始まりを告げたのだった。
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