アラサー独身の俺が義妹を預かることになった件~俺と義妹が本当の家族になるまで~

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
上 下
24 / 67
一章 義妹を預かる

優しさには回復効果がある

しおりを挟む
 翌朝、俺がいつも通りに起きると……。

「おはよう、お兄ちゃん」

 ピンクの、女の子らしいエプロンをした春香が台所にいた。
 うんうん、実に可愛いらしい。
 これなら、良いお嫁さんになれそうだ……料理を覚えればな。

「おはよう、春香。ちゃんと寝たんだろうな?」

 近くに寄って、顔をよく見てみる……。

「ちょっ!?」

「何故、顔を背ける?」

「いや、その……」

「あっ——すまん、俺が悪かったな」

「お、お兄ちゃん!?」

 いかんいかん!
 寝起きのおっさんとか、女子高生にとっては気分良くないだろうに。
 俺は急いで顔を洗って、綺麗に整えるのだった。



 俺が戻ると……。

「おじたん……おはよ~」

「おっ、起きたな。うん、偉いな。一人で着替えたんだな?」

「あいっ……」

 まだ眠いのか、うつらうつらしている。
 子供って凄いよなぁー、十時間くらい寝てるのに。
 俺なんか、もう八時間以上寝られないし。
 寝てたとしても、逆に疲れるっていう……悲しいぜ。

「おし、うさぎさんに一歩近づいたな?」

「うさぎさん!?」

「おう、その調子で歯ブラシもしなさい」

「あいっ!」

 急に目が爛々と輝き、詩織は洗面所へ行った。
 やれやれ、子供の切り替えは早いことで。



 その後、朝食を食べる。

「うん、美味いよ」

「ほ、ほんと!?」

「ああ、普通に食べられるよ」

「あいっ!」

「よ、良かったぁ~……」

 いや、まあ……昨日と同じメニューだから、失敗しようがないんだが。
 しかし、それを口に出してはいけないことくらいはわかる。
 また、お兄ちゃんのばかぁぁと言われてしまうところだ。
 ふっ、俺とて成長するのさ。
 これからは、そうそう言われることはないだろう。










「お兄ちゃんばかぁぁ——!!」

 ……どうやら、フラグを立ててしまったようだ。

「な、なにを怒ってる?」

「な、なんで洗濯物干してるの!? それはわたしがするのっ!」

「うん? しかし洗濯物を洗った上に、料理もしてるしこれくらいは……」

「だめっ! というか、下着とかあるんだよ!?」

「いや、お前……洗濯した下着なら誰でも変わら」

「良いからっ! うぅー……」

「わ、わかった! わかったから! なっ! 俺が悪かったからっ!」

 俺は急いで洗面所から出るのだった。

 うーん、別にそこまで気にすることなのか?

 年頃の娘を持つ人は大変そうだな……。





 その後、昨日と同じように仕事をして……。

 お昼頃に春香達がやってくる。

 カウンター席に着いた春香が、あたりを見渡して言う。

「あれ? お兄ちゃん、今日はお客さん少ないね?」

「春香、月曜日ってのはこんなもんだ。飲食店は月曜と火曜は暇なんだよ。そんで、金土日が忙しい」

「そうなんだ……あれ? どうして、土曜日を休みにしてるの?」

「そ、そりゃー……」

「アレですよねー。二人が来るから定休日を変えたんですよねー」

「おい!?」

「あう?」

「そ、そうなの!?」

「今野さん……なぜ言った?」

「怖い顔しないでくださいよー。そういうって言った方が良いですよ?」

「そうだよっ!」

「あいっ!」

「そ、そういうもんなのか?」

「チッ、チッ、大将甘いですよ。言わなくてもわかるとか、勝手に判断して言わなくて良いとか……それって、男の人の悪い癖ですよー」

 やはり、今野さんはしっかりしているな。
   まだ成人したばかりなのに。

「そうか……まあ、そういうことだ。土曜日休みにしておけば、1日はお前達と過ごせるしな」

「でも、稼ぎが減っちゃうんじゃ……?」

「それくらいは仕方あるまい。一応、お客さんには説明したし、期間限定とも言ってある」

「そっか……ありがとう、 お兄ちゃん!」

「おねえたん?」

「詩織、お兄ちゃんがね、私達のために土曜日を休みにしてるんだって」

「うぅ……どうなるの?」

「一緒に遊べるってこと」

「ほんと!? わぁーい!」

「お兄ちゃん優しくて……元気出ちゃうねっ!」

「あいっ!」

「ほらね、大将」

「へいへい、こいつは参ったな。ありがとな、今野さん」

「むぅ……仲が良い」

「はっ?」

「ふふー、安心してください。私は彼氏いますのでー」

「ふえっ!? な、なにがですか!?」

「なんの話だ?」

「な、なんでもない!」

「そうですよー。大将、女の子には秘密が沢山あるんですー」

「はぁ……まあ、いいけど」

「おじたん! おいちい!」

「そうかそうか、お前は可愛いな」

「きゃはー」

「むぅ……私も撫でてくれても……」

「ふふー、乙女ですね」

 なにやら。二人でこそこそと話しているが……。
 年も近いし、良い相談相手になってくれるかもな。



 そして、空き時間になり……。

「お兄ちゃん……これ!」

 そのお皿には、昨日より少しましになったおにぎりがある。

「おう、ありがとな」

「こ、これからも作るからっ!」

「いや、あんまり無理すんなよ?」

「作るのっ!」

「お、おう」

「じゃ、じゃあ! お仕事頑張ってねっ!」

 そう言って慌ただしく出て行った。

「全く、出来た妹だこと。無理しないといいが……」

 あいつはあいつで、きっと悩みとかあるだろうけど。
 俺には言ってくれそうにないなぁ……どうする?
 加奈子さんとかに頼んでみるか?

「兄貴っ! 」

「おっ、もういいのか?」

 母親の病院に行った和也が、いつもより早く戻ってきた。

「はいっ! お袋に言ったら、ちゃんと恩を返してきなさいと言われました!」

「なにを言ってる。お前がいて助かってるのは俺の方だ。ありがとな、和也……こんな俺についてきてくれて」

「兄貴……」

「柄にもないことを言ったな……じゃあ、始めるとしようか」

「はいっ! よろしくお願いします! 兄貴は指示だけして、のんびりしててください!」

「そういうわけにもいかんだろ」

「じゃあ、せめてゆっくり食べてください!」

「……そうだな、それくらいなら。じゃあ、魚の仕込みからやっていこう」

 カウンター席に座り、おにぎりやサンドイッチを食べる。

 そして、そこから指示を出して、和也を指導する。

 それは、とても心温まることで……単純に休憩できるという意味だけでなく……。

 和也と春香の優しさにより、休憩してる以上の回復効果がある。

    少し味の濃いタマゴサンドを食べながら、そんなことを思った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...