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一章 義妹を預かる

みんなそれぞれ仕事がある

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 朝食を食べ終えたら、もうすぐ仕事の時間だ。

「ご馳走さまでした」

「ご馳走さまでした」

「ごちそーたま!」

「お兄ちゃん、すぐにお仕事?」

 時計を見ると八時になっていた。
 随分と久々にゆっくり食事を取っているな。
 自分1人だと十分程度だが、詩織に合わせているからか。
 これは明日からも、時間に気をつけないといけないな。

「いや、まだ時間には少し余裕がある」

「そうなんだ。じゃあ、ゆっくりしてて。わたしが食器を洗っておくから」

「おっ、良いのか? というか、できるのか?」

「そ、それくらいはできるもん!」

「そっか、悪かったな。いや、助かる。お願いしてもいいか?」

「うんっ!」

「しおりもっ!」

 さて、出たな。
 とりあえずお手伝いしたいっ子が。
 だが、昨夜から作戦は練ってある。

「詩織には任務を与える」

「なぁに?」

「プリキュ○を見るという任務だ」

 昨日寝る前に確認して、しっかりと録画をしておいた。
 CS番組だから、過去作なんかも色々あったし。

「見れるおっ!?」

「おう、おじたんはできる男だからな」

「ありがとっ!」

「じゃあ、一人でいい子で見れるな?」

「あいっ!」

「お兄ちゃん……あれって有料じゃないの?」

「いや、いいさ。元々契約自体はしてたし」

「えへへ、ありがとう」

「あれで喜んでくれるなら安いものだ」

「じゃあ、今のうちにやっちゃうね」

「おう、任せた」

 春香が台所に向かい、食器を洗いにいく。
 ふむ……しかし、なんだか悪い気がするな。
 食器洗い込みで、時間を計算していたし。

「あっ、アレをやってしまうか」



 お風呂場に向かい、確認すると……。

「やっぱり、洗濯物が溜まってるな」

 人がいきなり三人に増えればそうなるわな。
 昨日、今日はそれどころじゃなかったし。

「さて……おわっ!?」

 こ、これは……なんで、俺の家にこんなものが?

「い、いや、落ち着け……春香のか?」

 俺の手には、女性物の下着がある。

「ふむ……いつの間にか、こんなに成長したのか」

 中々感慨深いものがあるな……あの小さかった春香が。
 しかし、これで一安心した。
 これを見たところで、俺の男の部分は反応しない。

「つまりは、ただ単に春香が大人になってきて戸惑ってるだけだな」

 その時、ガチャッという音がする。

「お兄ちゃん? そこにいるの?」

「おう、いるぞ」

「なにして……キャ——!?」

「へっ?」

「お、お兄ちゃんのエッチ——!」

 しまった! 下着を持ったままだ!

「ま、待て! これは誤解だっ!」

「な、な、何が誤解なのっ!?」

「俺はお前の下着なんかに興味はない! 絶対に!!」

「そうなんだ……」

「ほっ、わかってくれたか妹よ。うんうん、俺がガキの下着に興味なんか持つわけが……」

「おっ」

「おっ?」

「お兄ちゃんの——ばかぁぁ——!!」

「な、何故だ?」

「もう! 洗濯物もわたしがやるからいいのっ! お兄ちゃんは仕事まで詩織のところに行ってて!」

「お、おう」

「これからは洗濯物と洗い物は、わたしの任務にしますっ!」

「は、はいっ!」

 あまりの迫力に、つい返事をしてしまった。

 俺は追い出されるよに、詩織の元に行くのだった。



 詩織は良い子にテレビを見ている。
 どうやら夢中になっていて、騒ぎには全く気づいていないようだ。

「意外と大物になるかもしれないな」

 そんなことを考えつつ、コーヒーを飲んでゆっくりと過ごす。
 いやはや、春香には感謝しないとな。
 お詫びも兼ねて、何かしたいことでも聞いてみるか。


 そのまま十五分ほどのんびりしていると……。

「お、お兄ちゃん」

「おっ、春香」

「お、終わったよ」

「ありがとな……ところで、目が合わないのは何故だ?」

「うぅー……」

「おじたん? おねえたん?」

「おっ、こっちも見終わったようだな」

「続きも見るおっ! おじたんもいっしょ!」

「すまんな、おじたんは仕事があるからな」

「見れないお……? おじたんもお仕事……グスッ」

 しまった! 兄貴たちのことを思い出させてしまった!

「詩織、お姉ちゃんが一緒に見てあげるから」

「おじたんもっ!」

「わがまま言わないの。お兄ちゃんは……そう! 任務があるのよ!」

「へっ?」

「あう?」

「プリキュ○は世界の平和を守ってるわね?」

「あいっ!」

「お、お兄ちゃんはね! お腹を空かしている人達を助ける任務があるのよっ!」

「にんむっ!」

 泣きそうだったのに、目がキラキラしてきた。
 なるほど! そういうことかっ!

「そ、そうなんだよっ! おじたんは人々を空腹から救わないと!」

 なにも間違ってはいない……はず?

「お兄ちゃんの料理美味しかったよね?」

「あいっ! すっごく!」

「それを自分の身を削って、他の人達にも分け与えてあげるのが、お兄ちゃんの任務なのよ」

「わぁ……! おじたんすごいっ!」

「はは! そうだろ!」

 いや、俺アンパンマ○じゃないし。
 別に削ってもいないし、分け与えてもいないし。
 めっちゃお金頂いてるし。

「だから、お兄ちゃんは出掛けないといけないの」

「おじたん! にんむがんばるおっ!」

「おう! 行ってくるぜ!」

 せっかく機嫌が良くなったので、そのまま家玄関に向かう。

「お兄ちゃん、いってらっしゃい」

「おう、フォローありがとな。内容はよくわからんけど」

「自分でもどうかと思う……でも、これでいなくても平気かも」

「そうだな、毎日言われたんじゃ困るしな。じゃあ、お昼は適当に食べてくれ。昨日も言ったが、冷凍庫に色々入ってるから」

 俺は靴を履いて、玄関を出て行く。

 よし! お仕事(任務)開始だっ!

 ……いや、まあ、下の階に行くだけなんですけどね。
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