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一章 義妹を預かる

大事な人と食べるご飯は美味しい

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 ほっ、良かった。

 ひとまず笑顔になってくれたな。

 大事な義妹達で、大事な預かりものだ。

 期間はわからないが、寂しい思いをさせないようにしないとな。



「ほら、口についてる」

「ふにゃ?」

「クク、すっかりお姉さんだな? 昔は、お前がそうだったのに」

「もう! お兄ちゃん! 」

「可愛かったなぁーお兄ちゃん拭いて!とか、お兄ちゃん食べさせて!とか」

「おねえたんも!?」

「そうだぞー、お姉ちゃんはなー……わかった、俺が悪かった」

 顔を真っ赤にして、今にも泣き出しそうだ。

「うぅー……」

「すまんすまん、ほらもっと食うか?」

「……食べる」

 食うんかい! まあ、良いや。
 せっかく笑顔になったのに、台無しになるところだった。


 その後部屋に戻り、暖かいお茶を飲む。

「あぁ……これだよ、これ」

「あったまるね……」

「ふぅー、ふぅー……飲めないよぉ」

「はいはい、水を足しなさい」

 予め用意していた水を入れる。

「……飲めた!」

「偉い偉い」

「お兄ちゃん、わたしたちの部屋って見ても良い?」

「ああ、もちろんだ。お前達専用にしてある」

 全員でその部屋に入る。
 ちなみに、俺の家の間取りは 2LDKだ。
 リビングは16畳ほどで、キッチン、こたつテーブル、ソファーなどがある。
 キッチンはカウンター式で、繋がっている。
 こたつテーブルの奥には、でかいテレビが置いてある。

「この部屋は八畳ってところだ。狭いか?」

「ううん、贅沢は言わないよ。わざわざ片してくれてありがとう!」

「平気だお!」

「良い子に育って……まあ、荷物はなさそうだしな」

 断捨離も兼ねて、色々と捨てたみたいだしな。
 あと元々引っ越す予定だったらしい。
 まあ、兄貴の家も子供二人に大人二人は狭いかもな。
 詩織がこれからどんどん大きくなるし。

「私は、元々物が多いタイプじゃないから……お、オシャレとかしたいなぁとは思うんだけど……」

 兄貴も稼ぎが良いとは言えない。
 それなのに、俺に援助までしてくれた。
 ならば、俺にできる恩返しは……。

「せっかく可愛いんだ。おしゃれもしたらいい。今度、買い物でも行くか」

「ふえっ? か、可愛い?」

「可愛い!?」

「ああ、二人とも可愛いさ。なにせ、桜さんの娘なんだからな」

「そ、そういう意味……もう!」

「ママに似てる!?」

「ああ、将来は美人さん間違いないなしだ」

「きゃはー」

 抱っこして頬ずりをする。
 子供って体温が高いんだなと、割とどうでもいいことを思ったりする。

「ずるい……」

「ん? 何か言ったか?」

「ふんっ! なんでもないですっ!」

 何を怒っているんだ? 相変わらず、年頃の娘は謎が多い……。



 ひとまず荷物整理を手伝おうかと思ったのだが……。

「だ、だめっ!」

「あん?」

「し、下着とかあるもんっ!」

「 はっ! ガキの下着を見たところでどうにも思わん」

「わ、わたしが思うのっ! お兄ちゃんのばかぁぁ~!」

「へいへい、わかりましたよ。じゃあ、先にそれをやってくれ。俺は詩織の荷物をやるかいら」

 詩織の荷物だけ持ってリビングに戻る。

「おねえたんは?」

「自分でやるってさ。ほら、お前はどれを着るんだ?」

「うー……これっ! ぷりきゅ○!」

「はぁー、まだやってんのか」

 俺がガキの頃からあるぞ?
 まあデジモ○とかもあるし、変なことではないか。

「かわいい!?」

「ああ、可愛いぞ」



 その後も詩織の相手をしつつ待っていると……。

「お、お兄ちゃん、見られちゃダメなやつは終わったよ……」

「おう、次は詩織の荷物だな」


 そして夜になる前に、どうにか荷物整理をすることができた。

「ふぅ……疲れた」

 力仕事は、ほぼ俺がやったからな。
 今日は定休日にして正解だったな。

「ありがとう、お兄ちゃん」

「おじたんあいがとう!」

「おう、気にすんな」

 ただ、今から飯を作るのはしんどい。

「うう~お腹ついたお……」

「わ、わたしが何か作ろうか?」

「出来るのか?」

 俺の記憶では作れなかったが……。

「うっ……で、できるもん!」

「はいできない」

「うぅー……」

「詩織、寿司は好きか?」

「すし……?」

「詩織、回ってるやつよ」

「しゅき!」

「よし、じゃあ決まりだな」

「外食でいいの?」

「ああ、それくらい安いもんだ」

 兄貴達には怒られるかもしれないが、ここにいる間くらいはな。
 といっても、回らない寿司だけど。



「わぁ~! いっぱいあるおっ!」

「こら、ダメ。お姉ちゃんがとってあげるから」

「いやっ! 自分で取るのっ!」

「あれを頼んだらいいんじゃないか?」

「あっ、そうかも」

 適当に注文して、待っていると……。

「ひゃー!」

 おもちゃの新幹線に乗って、寿司がやってくる。

「おっ、きたな。ほら、取ってみ」

 後ろで様子を見つつ、一緒に取る。

「できたっ!」

「ああ、偉いな」

「ふふ、良かったね」

「ほら、なんて言うんだっけ?」

「いただきましゅ!」

「いただきます」

「いただきます」

「おいひい!」

「美味しいね、詩織」

「………」

「お兄ちゃん? どうしたの?」

「いや、なんでもない。美味いなと思ってな」

 ……大事な人と飯を食うのって美味いんだな。

 ただの回転寿司が、こんなに美味く感じるとは。

 今更、そんなことに気づくなんてな ……料理人失格だな。
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