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一章 義妹を預かる

承諾する

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 覚悟を決めた俺は、再び兄貴に電話する。

「もしもし、兄貴。いいよ、俺が面倒みるよ」

『おおっ! そうかっ! ありがとな!』

「ただし、条件がある。春香に代わってもらえる?」

『ん? ああ、構わないが……ほら、春香』

『ふえっ? わ、わたし? 』

 どうやら近くにいたようだな。

『宗馬が、お前と話したいってさ』

『う、うん……お、お兄ちゃん?』

「おっ、またお兄ちゃんって呼んでくれるのか?」

『も、もう! むぅ……それだけなの?』

「いや、お前はどう思ってるんだ?」

『えっ?』

「俺と一緒に暮らすことをさ。お前が嫌なら、俺が部屋借りて別々にしても……」

 正直言ってお金に余裕があるわけではないが……。
 このくらいのことなら問題ない……俺がしてもらったことに比べれば。

『おっ』

「おっ?」

『お兄ちゃんのバカァァァ!』

「うおっ!? な、なんだ!?」

『い、一緒に暮らすもん!』

「そ、そうか」

 あれ? なんかおかしいぞ?
 ここ二、三年は、避けられてたのに……。

『も、もぅ……お、お父さんに代わるねっ!』

『ははっ! 叱られたな!』

「若い娘はよくわからん」
 
『相変わらず、鈍感なやつだ。詩織の方がいじけているが、よろしく頼むな』

 そりゃそうだろう。
 五歳児では、転勤とかは理解しきれないだろうな。

「わかった、今から考えておく」

 寂し思いをさせないように、何か考えておかないと……。

『頼れる長男がいて助かるよ。こういう時は、お前が自営業で良かったよ』

『ふふ、そうね。あなた、代わってくれる?』

『ああ、桜に代わるよ』

『もしもし、宗馬君?』

「どうも、桜さん」

『お母さんって呼んでもいいのよ?』

「か、勘弁してください」

 どうも桜さんと話すのは緊張する。
 お姉さんであり、母親ではない……俺の中の位置付けが難しい人なのだ。
 もちろん、大事な人で恩人ということは間違いない。

『仕方ないわね、娘に任せるとしましょう』

「はい?」

『二人のこと、よろしくお願いね。悪いことしたら、遠慮なく叱ってくれていいから』

「難しいですが……出来る限りやってみます」

『じゃあ、また連絡するわね。多分三月末からお世話になると思うわ』

 今が二月始めだから、二ヶ月後か……片さないといけない。

「ええ、わかりました。荷物はどの程度ですか?』

『今住んでいるところは引き払ってちゃって、荷物や家具もほとんど処分するつもりよ。ちょうど、色々変え時だったこともあるし』

「では、姉妹に一部屋を与えれば良いですかね?」

『ええ、十分だわ。ありがとね、宗馬君』

「い、いえ」

『宗馬、そういうわけだ。よろしくな』

「ああ、わかったよ」

 そこで通話が終わる。

 さて……色々と考えておかないとな。
 
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