上 下
1 / 67
一章 義妹を預かる

プロローグ

しおりを挟む
 ……やれやれ、大変だな、こりゃ。

「こらー! 詩織! 裸で出ないのっ!」

「やっー!」

「おい!?  お前もだよ!」

 俺の目の前には、バスタオル一枚姿の義妹がいる。
 子供の頃とは違い、すっかり女性らしい体つきになっている。
 あんなにつるぺただったのに、時が経つのは早いもんだ。
   俺がおっさんになるわけだな。

「へっ? ……きゃあ~!? お兄ちゃんのばかぁぁ——!」

「グハッ!?」

 座布団がぶん投げられて、顔面に直撃する。

「きゃははっ! おじたんぶっ飛んだ!」

「なにすんだよ!?」

「こっち見ないでよぉ~!」

「お前が風呂場に戻れよっ! ここはリビングだっ!」

「はっ! そ、そうだった! 詩織! 戻るわよ!」

「うんっ! あぁー楽しかった!」

「こら、あんまり騒いじゃダメよ。いくら一軒家だからって」

「はーい」

 ドタドタと足音を立てて、風呂場に戻っていく。

「ったく、床が濡れてるっーの」

 タオルで濡れた床を拭いていく。

「まあ、でも……詩織に元気が出て良かったな」

 両親が海外転勤でいなくて、こっちに来た時は塞ぎ込んでいたが……。
 まだ五歳だ、無理もないことだ。
 だが、あいつのおかげもあって、詩織も笑顔を見せるようになってきた。

「春香も、なんか知らないが避けないし」

 ついこの間まで、少し避けられていたというのに。
 中学二年になったあたりから避けられていたが……。
 急に、懐いてきたというか……年頃の女の子はよくわからん。

「二人とも、俺の店での評判も良いし」

 いつのまにか、看板娘になってやがった。
 いや、別にいいんだけど。
 ただ、男共が寄ってくるのは許せん。

「俺は兄貴に、あの子達を託されたわけだし……まだ春香に恋人なんて早すぎる!」

 だいたい、そんなことになったら……。

「俺が兄貴に殺される……監督不行き届きかんとくふゆきとどきとして」

 娘を溺愛してるからなぁ、兄貴は。
 まあ、一緒に暮らすと、それも無理はないかと思う。

「お兄ちゃん?」

「うおっ!?」

「おじたん、どしたのー?」

 いつの間にか、二人が俺の顔を覗き込んでいた。

「いや、何でもない。ほら、ガキ共は寝ろ。明日も早いんだろ」

「お兄ちゃんも早く寝てよね? 身体休めないと……」

「ああ、わかってるよ」

「むにゃ……」

「あらら、眠いなっちゃったね。ほら、いこ」

「うん……おじたん、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ。春香もな」

「うん、おやすみなさい」

 二人が寝室に入るのを見届ける。

「ふぅ……何年振りかに人と暮らすが、やっぱり大変だな」

 だが、しっかりしないと。

 短い間だが、今は俺が母であり父であり、お兄ちゃんなんだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラスの双子と家族になりました。~俺のタメにハーレム作るとか言ってるんだがどうすればいい?~

いーじーしっくす
恋愛
ハーレムなんて物語の中の事。自分なんかには関係ないと思っていた──。 橋本悠聖は普通のちょっとポジティブな陰キャ。彼女は欲しいけど自ら動くことはなかった。だがある日、一人の美少女からの告白で今まで自分が想定した人生とは大きくかわっていく事になった。 悠聖に告白してきた美少女である【中村雪花】。彼女がした告白は嘘のもので、父親の再婚を止めるために付き合っているフリをしているだけの約束…の、はずだった。だが、だんだん彼に心惹かれて付き合ってるフリだけじゃ我慢できなくなっていく。 互いに近づく二人の心の距離。更には過去に接点のあった雪花の双子の姉である【中村紗雪】の急接近。冷たかったハズの実の妹の【奈々】の危険な誘惑。幼い頃に結婚の約束をした従姉妹でもある【睦月】も強引に迫り、デパートで助けた銀髪の少女【エレナ】までもが好意を示し始める。 そんな彼女達の歪んだ共通点はただ1つ。 手段を問わず彼を幸せにすること。 その為だけに彼女達は周りの事など気にせずに自分の全てをかけてぶつかっていく! 選べなければ全員受け入れちゃえばいいじゃない! 真のハーレムストーリー開幕! この作品はカクヨム等でも公開しております。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...