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少年期
キャンプ地に到着
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その後、戦闘をしつつ森を進んでいく。
そしてゴブリン以外の相手は、エリゼが一撃で仕留めているようだ。
ようだというのは、俺達が発見する前に倒してるからだ。
何かに気づき、一瞬で消えてすぐに戻ってくる。
「エリゼがすぐに気づくのって、前に言ってた風の結界だよね?」
「ええ、アレス様も水で代用してましたね」
「うーん、流石に常時展開は難しいや」
「それはそうでしょうね。本来の用途とは違いますし」
すると、ルナがエリゼの服の端を掴む。
その瞳には力がこもっていた。
「あ、あの! わたしに覚えられますか!?」
「……きついですよ? 魔力量もそうですが、繊細な調整が必要とされますから」
「が、頑張ります!」
「そうですか……わかりました、少しずつ教えましょう」
「ありがとうございます!」
お辞儀をして、自分の隊列に戻っていく。
それを確認し、エリゼに問いかける。
「あのさ、随分とルナに気をかけるよね?」
「ふふ、嫉妬ですか? 大丈夫ですよ、アレス様が一番ですから」
「そ、そういうのじゃなくて……笑わないでよ」
振り返ると、クスクスと微笑むエリゼがいた。
どうやら、からかわれたらしい。
ほんと、エリゼには敵わないや。
「すみません。たしかに気にかけてはいますね……以前、お話したこともありますし」
「あぁ、そうだったね」
確かエリゼが才能を見出したし、同じエルフ族って話だった。
でも、見ているとそれだけじゃない気もする。
……といけないいけない、あんまり詮索しちゃダメだった。
そして、歩き続けること数時間……ようやくキャンプ地に到着する。
俺達は全身から力が抜け、その場に座り込む。
「「「「「ついたぁぁぁ……」」」」」
「ふふ、ハモるとは仲が良いですね」
エリゼの軽口に、この時ばかりはガイ君も何も言えない。
ぜえぜえと息をし、口だけパクパクさせていた。
俺は大きく息を吸い、一足先に立ち上がる。
「よっと……」
「ふふ、アレス様は流石ですね」
「まあ、伊達にランの相手はしてないよ」
こちとら朝も夕方も散歩をしてたし。
そういや、良い子にやってると良いんだけど。
少し待ち全員の息が整ったので、キャンプ地の中央に向かう。
そこでまとめ役の先生に報告を済ませて、再びエリゼのところに集まる。
「それでは、先に昼食にしましょう」
「やった!」
「もう、アレス君ってば。でも、わたしもお腹すいた……」
「ふん、情けない」
すると、ガイ君からグルルーという音が。
見る見るうちに、ガイ君の耳が赤くなっていく。
「こ、これは……!」
「あれれ?」
「うんうん、ガイと同じで僕もお腹減ったかな。もう、お昼過ぎたし」
「ハロルド様……すいません、やせ我慢しました」
ハロルド様のフォローにより、ガイ君が落ち着きを取り戻す。
ほんと、ハロルド様には素直だなぁ。
いつか、俺達にも同じようにしてくれたら良いな。
昼飯は用意されていたサンドイッチを食べつつ、この後の説明を受ける。
「食べ終わって休憩したら、まずは騎士や冒険者達に教わってテントを張りましょう。それが済んだら、武器を持った戦闘訓練に入ります」
「ぶ、武器の戦闘訓練ですか?」
「うぅー……苦手です」
その言葉に、ハロルド様とルナが苦い顔をする。
二人は俺と違い、完全な魔法寄りタイプだからなぁ。
「はい、ハロルド君。貴方やルナさんは苦手でしょうが、やはり戦いにおいて武器は欠かせない要素ですので。魔力温存の意味や、いざという時の為に」
「「……頑張ります」」
「はい、頑張りましょう。それが済んだら、今度は夕飯の材料集めで森に入ります。そして料理を作り、食べ終わったら自由時間になります」
「「「「はい!」」」」
「良いお返事ですね。それでは、私はこれで」
気を使ったのか、エリゼが先生用の天幕に入っていく。
俺は気にしないけど、やっぱり他の三人はエリゼいたら気を使うよね。
すると、珍しくガイ君が近づいてきた。
そのまま手を引かれ、ハロルド様達から離れる。
「なんか話かな?」
「あ、あぁ……く、くそぉぉ」
「ん? どうかしたかな?」
「お前は実戦経験があるんだな? いや、知ってはいたが……今日の動きで改めて思った」
「まあ、多少はね。領地にいた頃、父上とかと狩りに行ったりしてたから」
あの時は五歳になったばかりだったっけ。
本来なら、戦いを学ぶのも八歳くらいからって話だったね。
今思うと、領地に貢献しないとって焦ってたなぁ……そう言えば、領地はどうなっただろう。
前も思ったけど夏休みも帰らなかったし、こんなんで良いのかな?
あんなに良くして貰ったのに、自分のことばかりしてる気がする。
「……おい……おいって」
「あっ、ごめんね。えっと、何かな?」
どうやら、話を聞いてなかったみたい。
領地については、また考えようっと。
「だから、次の鍛錬を……俺と組んでくれ」
「へっ? 僕はいいけど……いいのかな?」
ガイ君はいつもハロルド様と組んで、俺はルナと組んでいた。
そもそも、こうしてあちらから何かを提案してくること自体が珍しい。
「俺はハロルド様の一番でなければならない……そのためには、お前に負けられないのだ!」
「ガイ君……」
「だから頼む! ハロルド様を守れるように!」
そう言い、俺に頭を下げてくる。
きっと、俺に頼むなんて嫌なはずだろうに。
それでも彼は、ハロルド様の為に自分のプライドを曲げたんだ。
それは、とても凄いことだと思った。
「うん、わかった。僕にできることならするよ」
「……感謝する。その代わり、これは貸しだからな」
「あらら、律儀なこと」
「ふんっ、放っておけ」
そう言い、ガイ君は苦笑した。
どうやら、少しは認めてもらえたみたいだね。
そしてゴブリン以外の相手は、エリゼが一撃で仕留めているようだ。
ようだというのは、俺達が発見する前に倒してるからだ。
何かに気づき、一瞬で消えてすぐに戻ってくる。
「エリゼがすぐに気づくのって、前に言ってた風の結界だよね?」
「ええ、アレス様も水で代用してましたね」
「うーん、流石に常時展開は難しいや」
「それはそうでしょうね。本来の用途とは違いますし」
すると、ルナがエリゼの服の端を掴む。
その瞳には力がこもっていた。
「あ、あの! わたしに覚えられますか!?」
「……きついですよ? 魔力量もそうですが、繊細な調整が必要とされますから」
「が、頑張ります!」
「そうですか……わかりました、少しずつ教えましょう」
「ありがとうございます!」
お辞儀をして、自分の隊列に戻っていく。
それを確認し、エリゼに問いかける。
「あのさ、随分とルナに気をかけるよね?」
「ふふ、嫉妬ですか? 大丈夫ですよ、アレス様が一番ですから」
「そ、そういうのじゃなくて……笑わないでよ」
振り返ると、クスクスと微笑むエリゼがいた。
どうやら、からかわれたらしい。
ほんと、エリゼには敵わないや。
「すみません。たしかに気にかけてはいますね……以前、お話したこともありますし」
「あぁ、そうだったね」
確かエリゼが才能を見出したし、同じエルフ族って話だった。
でも、見ているとそれだけじゃない気もする。
……といけないいけない、あんまり詮索しちゃダメだった。
そして、歩き続けること数時間……ようやくキャンプ地に到着する。
俺達は全身から力が抜け、その場に座り込む。
「「「「「ついたぁぁぁ……」」」」」
「ふふ、ハモるとは仲が良いですね」
エリゼの軽口に、この時ばかりはガイ君も何も言えない。
ぜえぜえと息をし、口だけパクパクさせていた。
俺は大きく息を吸い、一足先に立ち上がる。
「よっと……」
「ふふ、アレス様は流石ですね」
「まあ、伊達にランの相手はしてないよ」
こちとら朝も夕方も散歩をしてたし。
そういや、良い子にやってると良いんだけど。
少し待ち全員の息が整ったので、キャンプ地の中央に向かう。
そこでまとめ役の先生に報告を済ませて、再びエリゼのところに集まる。
「それでは、先に昼食にしましょう」
「やった!」
「もう、アレス君ってば。でも、わたしもお腹すいた……」
「ふん、情けない」
すると、ガイ君からグルルーという音が。
見る見るうちに、ガイ君の耳が赤くなっていく。
「こ、これは……!」
「あれれ?」
「うんうん、ガイと同じで僕もお腹減ったかな。もう、お昼過ぎたし」
「ハロルド様……すいません、やせ我慢しました」
ハロルド様のフォローにより、ガイ君が落ち着きを取り戻す。
ほんと、ハロルド様には素直だなぁ。
いつか、俺達にも同じようにしてくれたら良いな。
昼飯は用意されていたサンドイッチを食べつつ、この後の説明を受ける。
「食べ終わって休憩したら、まずは騎士や冒険者達に教わってテントを張りましょう。それが済んだら、武器を持った戦闘訓練に入ります」
「ぶ、武器の戦闘訓練ですか?」
「うぅー……苦手です」
その言葉に、ハロルド様とルナが苦い顔をする。
二人は俺と違い、完全な魔法寄りタイプだからなぁ。
「はい、ハロルド君。貴方やルナさんは苦手でしょうが、やはり戦いにおいて武器は欠かせない要素ですので。魔力温存の意味や、いざという時の為に」
「「……頑張ります」」
「はい、頑張りましょう。それが済んだら、今度は夕飯の材料集めで森に入ります。そして料理を作り、食べ終わったら自由時間になります」
「「「「はい!」」」」
「良いお返事ですね。それでは、私はこれで」
気を使ったのか、エリゼが先生用の天幕に入っていく。
俺は気にしないけど、やっぱり他の三人はエリゼいたら気を使うよね。
すると、珍しくガイ君が近づいてきた。
そのまま手を引かれ、ハロルド様達から離れる。
「なんか話かな?」
「あ、あぁ……く、くそぉぉ」
「ん? どうかしたかな?」
「お前は実戦経験があるんだな? いや、知ってはいたが……今日の動きで改めて思った」
「まあ、多少はね。領地にいた頃、父上とかと狩りに行ったりしてたから」
あの時は五歳になったばかりだったっけ。
本来なら、戦いを学ぶのも八歳くらいからって話だったね。
今思うと、領地に貢献しないとって焦ってたなぁ……そう言えば、領地はどうなっただろう。
前も思ったけど夏休みも帰らなかったし、こんなんで良いのかな?
あんなに良くして貰ったのに、自分のことばかりしてる気がする。
「……おい……おいって」
「あっ、ごめんね。えっと、何かな?」
どうやら、話を聞いてなかったみたい。
領地については、また考えようっと。
「だから、次の鍛錬を……俺と組んでくれ」
「へっ? 僕はいいけど……いいのかな?」
ガイ君はいつもハロルド様と組んで、俺はルナと組んでいた。
そもそも、こうしてあちらから何かを提案してくること自体が珍しい。
「俺はハロルド様の一番でなければならない……そのためには、お前に負けられないのだ!」
「ガイ君……」
「だから頼む! ハロルド様を守れるように!」
そう言い、俺に頭を下げてくる。
きっと、俺に頼むなんて嫌なはずだろうに。
それでも彼は、ハロルド様の為に自分のプライドを曲げたんだ。
それは、とても凄いことだと思った。
「うん、わかった。僕にできることならするよ」
「……感謝する。その代わり、これは貸しだからな」
「あらら、律儀なこと」
「ふんっ、放っておけ」
そう言い、ガイ君は苦笑した。
どうやら、少しは認めてもらえたみたいだね。
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