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少年期
森の探索
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前衛であるガイ君を先頭に、連携が取れる上にガイ君のやる気が出る魔法使いのハロルド様が続く。
三番目には純粋な魔法使いであるルナ、最後に魔法剣士である俺が並ぶ。
俺の役目は索敵と、後ろから指示を飛ばすことだ。
ちなみにエリゼは少し離れた位置にて、俺たちを見守っている。
「……暑いな」
「ガイ、これでもマシだよ。アレス君がいなければ、もっと大変だ」
「……確かにそうですね。なるほど、こういう環境も入れて行軍しなくてはいけないのですか」
ガイ君はいずれは、皇族直属の近衛騎士になる可能性が高い。
最後の砦である近衛騎士が行軍する可能性は低いが、覚えておくに越したことはないだろう。
ちなみに俺のおかげというのは、周りに氷の塊を浮遊させているからだ。
それによって、冷たい空気を感じることができる。
「でも、アレス君の魔力は平気なのかな?」
「ええ、平気ですよ。これくらいの魔力なら、そこまで減りませんし。何より、今はルナがいるので」
エリゼに師事したルナは、朧気ながらも風魔法の結界を覚えた。
それを使って、俺達の周辺の空気を感じている。
こうすれば、奇襲にも対応できるはず。
お陰で俺は水魔法による気配察知をすることなく、魔力も温存できるってわけだ。
「えへへ、まだ未熟なんですけどね……」
「いやいや、立派だよ。今のうちに慣れていけば、ダンジョン探索をする頃には少しは使えるようになるんじゃないかな」
「が、頑張ります……!」
「アレス君もルナさんも凄いなぁ……よし、僕も頑張らないと」
そういえば、ハロルド様が戦ったところは見たことない。
というか、そもそも王太子が戦うのがおかしいし。
確か火属性魔法の適正があるとか……森の中だと使い辛いかも。
「お、俺だって頑張りますよ!」
「うん、ガイを頼りにしてるから」
仲間はずれかと思ったのか、ガイ君が振り向く。
その顔は不満といったところだ。
ただ、先頭の人としてはマイナスだ。
俺たちだって振り向くようなことはしてない。
「ガイ君、前衛に集中するように。君が対処を間違えると、死人が出ると思ってくださいね」
「くっ……はい」
「それとお三方も確認はいいですが、お喋りはお控えください。もちろん、リラックスするためとかあるので一概には言えないですが」
「「「はい」」」
エリゼの忠告に従って、全員集中して森を進んでいく。
日差しが遮られているのはいえ、やはり暑いので体力が減っていく。
「はぁ……はぁ……ただ歩くだけだというのに」
「ほ、ほんとだね。でも、兵士や冒険者達はこういうのを日常的にやっているんだ」
「後は平民とか農民もそうですよ。この暑い中で、みんなが食べるために作業したり。下手すると、それだけで死んでしまう人もいるとか」
「「………」」
俺の言葉に二人が黙ってしまう。
身分の高い二人にとっては、信じられないのかも。
ただ俺は、彼らには下の者の環境を知ってほしいと思った。
すると、ルナが俺の服の端を掴んだ。
「アレス君、気のせいかな? 何か感じた気がするの……」
「ん? そうなの? わかった、すぐに確認するね」
大気中の水を感じ、索敵を行う。
これは魔力をかなり消費するので、短期間しかできない。
その代わりに魔力任せに行うので範囲は広い……見つけた。
「ルナ、お手柄だよ。凄いね、僕の方でも見つけた。何か、生き物がいる」
「ど、どうしよう?」
「大丈夫、落ち着いて。二人とも、話は聞こえたかな?」
すると、前を歩くガイ君とハロルド様が手を挙げる。
「それじゃ、そのまま気づいてないフリをして歩いて行こう。その生き物が敵かどうかもわからないけど、敵だったらルナが知らせるから」
「が、頑張ります」
それから数分後、その気配が近づいてくる。
俺の水魔法では気配を感じることが限界だ。
だが、ルナは違う。
風の音を拾うので、生き物の動きや声までも感じられるはず。
「アレス君、右方向から魔物の声です……!」
「了解。二人とも、先頭準備! 右方向に構えて!」
「おう!」
「わ、わかった!」
ガイ君が槍を構え、ハロルド様は護身用の短剣を構える。
弓を持つルナは俺の後ろに誘導して、俺も剣を構えるのだった。
本日より、アルファポリス様にて本作のコミカライズが開始となりました!
漫画ならではの違いがあるので、よろしければご覧くださいませ(*´∀`*)
https://www.alphapolis.co.jp/manga/official/841000633/8896
三番目には純粋な魔法使いであるルナ、最後に魔法剣士である俺が並ぶ。
俺の役目は索敵と、後ろから指示を飛ばすことだ。
ちなみにエリゼは少し離れた位置にて、俺たちを見守っている。
「……暑いな」
「ガイ、これでもマシだよ。アレス君がいなければ、もっと大変だ」
「……確かにそうですね。なるほど、こういう環境も入れて行軍しなくてはいけないのですか」
ガイ君はいずれは、皇族直属の近衛騎士になる可能性が高い。
最後の砦である近衛騎士が行軍する可能性は低いが、覚えておくに越したことはないだろう。
ちなみに俺のおかげというのは、周りに氷の塊を浮遊させているからだ。
それによって、冷たい空気を感じることができる。
「でも、アレス君の魔力は平気なのかな?」
「ええ、平気ですよ。これくらいの魔力なら、そこまで減りませんし。何より、今はルナがいるので」
エリゼに師事したルナは、朧気ながらも風魔法の結界を覚えた。
それを使って、俺達の周辺の空気を感じている。
こうすれば、奇襲にも対応できるはず。
お陰で俺は水魔法による気配察知をすることなく、魔力も温存できるってわけだ。
「えへへ、まだ未熟なんですけどね……」
「いやいや、立派だよ。今のうちに慣れていけば、ダンジョン探索をする頃には少しは使えるようになるんじゃないかな」
「が、頑張ります……!」
「アレス君もルナさんも凄いなぁ……よし、僕も頑張らないと」
そういえば、ハロルド様が戦ったところは見たことない。
というか、そもそも王太子が戦うのがおかしいし。
確か火属性魔法の適正があるとか……森の中だと使い辛いかも。
「お、俺だって頑張りますよ!」
「うん、ガイを頼りにしてるから」
仲間はずれかと思ったのか、ガイ君が振り向く。
その顔は不満といったところだ。
ただ、先頭の人としてはマイナスだ。
俺たちだって振り向くようなことはしてない。
「ガイ君、前衛に集中するように。君が対処を間違えると、死人が出ると思ってくださいね」
「くっ……はい」
「それとお三方も確認はいいですが、お喋りはお控えください。もちろん、リラックスするためとかあるので一概には言えないですが」
「「「はい」」」
エリゼの忠告に従って、全員集中して森を進んでいく。
日差しが遮られているのはいえ、やはり暑いので体力が減っていく。
「はぁ……はぁ……ただ歩くだけだというのに」
「ほ、ほんとだね。でも、兵士や冒険者達はこういうのを日常的にやっているんだ」
「後は平民とか農民もそうですよ。この暑い中で、みんなが食べるために作業したり。下手すると、それだけで死んでしまう人もいるとか」
「「………」」
俺の言葉に二人が黙ってしまう。
身分の高い二人にとっては、信じられないのかも。
ただ俺は、彼らには下の者の環境を知ってほしいと思った。
すると、ルナが俺の服の端を掴んだ。
「アレス君、気のせいかな? 何か感じた気がするの……」
「ん? そうなの? わかった、すぐに確認するね」
大気中の水を感じ、索敵を行う。
これは魔力をかなり消費するので、短期間しかできない。
その代わりに魔力任せに行うので範囲は広い……見つけた。
「ルナ、お手柄だよ。凄いね、僕の方でも見つけた。何か、生き物がいる」
「ど、どうしよう?」
「大丈夫、落ち着いて。二人とも、話は聞こえたかな?」
すると、前を歩くガイ君とハロルド様が手を挙げる。
「それじゃ、そのまま気づいてないフリをして歩いて行こう。その生き物が敵かどうかもわからないけど、敵だったらルナが知らせるから」
「が、頑張ります」
それから数分後、その気配が近づいてくる。
俺の水魔法では気配を感じることが限界だ。
だが、ルナは違う。
風の音を拾うので、生き物の動きや声までも感じられるはず。
「アレス君、右方向から魔物の声です……!」
「了解。二人とも、先頭準備! 右方向に構えて!」
「おう!」
「わ、わかった!」
ガイ君が槍を構え、ハロルド様は護身用の短剣を構える。
弓を持つルナは俺の後ろに誘導して、俺も剣を構えるのだった。
本日より、アルファポリス様にて本作のコミカライズが開始となりました!
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