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少年期

馬車にて

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馬車に乗り、王都を出発する。

今回向かうのは、王都より北にある森……通称初心者の森だ。

王都に近いこともあり、定期的に冒険者や兵士達が魔物退治をする。

なので強い魔物が少なく、新兵や新人冒険者の鍛錬の場でもあるとか。

そして俺たちのような学生の実習としても使われるってわけだ。

そんなことを、一緒の馬車に乗るエリゼに説明される。

「へぇー、そうなんだ。そこには、どんな魔物がいるの?」

「ゴブリンやオークがほとんどですね。あれらは減らしても減らしてもすぐに増えるので」

ゴブリンは倒したことあるけど、オークはまだ会ったこともないよね。
通称、豚人間とか呼ばれてるとか。
多分、イメージ通りの姿なのだろう。

「ふんふん、食べられる魔物とかはいないのかな?」

「あの辺りだとホーンラビットやイノブタなどですね。イノブタはともかく、ホーンラビットを倒すのは至難の技かと」

「どうして? 初心者の森にいるんでしょ?」

「戦闘力自体は弱いのですが、警戒心とそのスピードだけは侮れません。おそらく、見つけることすら大変かと」

金色鳥のような感じかな?
あれも捕まえるのは大変だった。
やっぱり、弱い魔物とかは生きるために逃げることに特化するのかも。

「ふむふむ……美味しい?」

「ふふ、やはりそこですか。ええ、量は少ないですが絶品だと言われてますよ。それこそ、王城に献上されることもあるとか」

「おおっ……! 食べてみたい! ハロルド様、そうなんです……みんな、どうしたの?」

そこで、今更気づく。
俺以外、誰も話してないことに。
みんなを見ると、顔が硬直して固まっていた。 
出かける前の遠足気分とはえらい違いである。

「え、えっと……緊張してるんだ。王都は出たことあるけど、魔物とかがいる場所にはいったことないから」

「わ、わたしもですぅ……これから自分達が戦うかもしれないと思うと」

「お、俺はビビってなどいない! ……ただ、少し緊張してるだけだ」

……そうか、彼らは実戦経験がないんだ。
当たり前の話だけど、彼らはまだ九歳の子供だ。
前の世界で言えば、小学四年生くらい……そりゃ、怖いに決まってるよね。
俺は転生してるし、実戦経験があるから落ち着いてるけど。
よし! ここは俺が頑張らないと!

「大丈夫だよ! 頼りになる兵士さんや冒険者の人達もいるし!」

「ア、アレス君は怖くないの? 魔物がいる森に入るのに」

ハロルド様がビクビクしながら、俺に聞いてきた。
ルナもコクコクと頷き同意している。
ガイ君はやせ我慢なのか、むすっとした表情だ。

「そりゃ、魔物とか怖いです。ですが、少しだけワクワクしませんか? だって、これも冒険の一環じゃないですか。こんなに恵まれた状態で体験できるなんて、滅多にないことかなって……そしたら、楽しまないと損ですよ」

「えへへ、アレス君ってば……でも、確かにそうかも」

「ふんっ、相変わらずお気楽なやつだ」

どうやら、ガイ君とルナの緊張は少しはマシになったみたい。
そんな中、ハロルド様が下を向いていた。
……あんまり効果なかったかな?
そう思った瞬間、ハロルド様が顔を上げた。

「……あははっ! アレス君らしいや! 姉さんと気が合うわけだね!」

「えーと……それって褒めてます?」

「うん、褒めてるよ。というか、その言い方は姉さんに失礼じゃない?」

「おっと、そうですね。これは内密に……」

「えー、どうしようかなー」

「ハロルド様、ご勘弁をー!」  

俺とハロルド様の小芝居に、ガイ君とルナも我慢しきれずに笑う。

ふとエリゼを見ると、その目は『よくやりましたね』と書いてあった。

それを見ると、俺も嬉しくて笑う。

こうして良い空気の中、俺達の馬車は森へと進んで行くのだった。






~あとがき~


更新が空き、申し訳ありませんでした🙇‍♂️


書籍化作業も終わり、これより更新を再開してまいります。

本日。二巻が発売したので、よろしければ買ってくださると嬉しいです。
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