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少年期

商談成立?

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 俺達がランを撫でつつ待っていると、受付の奥の方にある扉が勢いよく開いた。

 するとギルドマスターであるロバートさんと、その息子さんであるロンドさんが慌ててやってくる。

「ア、アレス様! ようこそいらっしゃっいました!」

「はぁ……はぁ……ささ! こちらへどうぞ!」

 二人は似たような動きで俺を奥へと誘導する。
 顔は似てないのに、やっぱり親子って似るものなんだな~……って、そうじゃない。

「えっと……何かあったの?」

「アレス様がきたからでございます!」

「あ、はい……とりあえず、奥に行けばいいですか?」

「ええ、お願いいたします。アイラ様や、お付きの方や従魔も平気ですから」

「わかりました」

 あんまり目立つのもあれなんで、とりあえず従うことにした。
 ロバートさんの後をついていき、奥の通路を抜けてとある部屋に案内される。
 ちなみに、息子であるロンドさんは途中で何処かに行ってしまった。
 部屋にあるソファーに促され、俺とアイラはロバートさんの対面に座る。
 ちなみに、ランはアイラの腕の中で大人しくしている。

「それで、どうしたんですか?」

「お騒がせして申し訳ありません。実は、アレス様がきたら私かロンドに知らせるように全職員に通達を出していたのです」

「あっ、そうだったんですね」

「ええ。私達にとって大事なお客様なので、間違っても失礼のないようにと思いまして」

 なるほど、あの受付の方々の慌てように納得。
 社長と副社長がそう言ったならああなる……うんうん、わかるよ。
 俺も前世では大手の取引先が来ると緊張したし……この場合、俺がそうなのか。

「……でも、また特に契約は結んでないですよね?」

「はい。アレス様がいずれ試作品を我々に持ってきて、それを鑑定した上で取引をというお話でしたので……だったのですが、私どもはアレス様を甘く見ておりました。アレス様にも失礼だ——商人としても失格です!」

 そう言い、テーブルに頭を打ち付けた!
 ゴン!って言ったけど大丈夫!?
 というか土下座だよ! ギルドマスターが子供相手に!

「ま、待って! 話が見えません! えっと、俺を待っていた……俺はまだ試作品を渡してないのに……」

「申し訳ありません。こちらも待ちに待ったことなので慌ててしまいました。簡単に言いますと、私達はアレを……カキ氷を食べてしまったのです。こっそりと、おろしてるお店まで行って」

「あっ、そうだったんですね。いえば、あげましたのに」

「いえ、売っている所を確認してこそ商人ですから。アレは素晴らしい……シャクシャクと小気味いい音と、それでいて冷たく爽やかな味わい……暑さも忘れさせ、まるで天国のようでした」

 そう言い、天井に向かって顔を上げる。
 その表情は恍惚としていた。

「いやー、わかりますけど大袈裟ですって」

「いえ! そんなことはありません!」

「いや! そんなことないわ!」

「ワフッ!」

 何故か、アイラやランまで身を乗り出してきた。
 ……俺からしたら前世で馴染みのあるものだけど、確かにこの世界では珍しいだろう。
 俺からしたら懐かしいって感覚だったけど、彼らからしたら初めての食べ物だもんね。

「とにかく、事情はわかりました。つまり……試作品を出すまでもなく、取引がしたいということでいいですか?」

「ええ! 是非、こちらからお願いいたします! 本当はこちらが見極めるつもりでしたし、こうして下手に出るのは商人としては失格なのですが……命の恩人であるアレス様を試そうなどと思ったことが良くなかったのでしょうな。まさか、こちらから頼みたいほどとは」

「いやいや、そこは別で考えて当然ですよ。大丈夫です、僕は気を悪くもしてないですから。予定通り、貴方に卸させて頂きます」

「……なんと懐の広い方だ! それでは、早速商談に入りましょう!」

「はい、構いません。ただ僕にはわからないので、エリゼにお願いすることになるかと……」

 すると、アイラが俺の服の端を掴む。
 振り返ると、両手を膝において上目遣いをしてきた。
 ついでに言うと、ランも俺を見つめていた。

「……どうしたの?」

「し、試作品は出さないの?」

「ククーン……」

 二人は、とても悲しそうな表情を浮かべている。
 ……そういうことね。

「はぁ……ロバートさん、試作品をここで食べて頂いても良いですか?」

「ええ、もちろんですとも。私としても、アレを食べられるのは嬉しいですから」

「ありがとうございます。二人共、用意するから待ってて」

「わぁ……やったぁ!」

「ワオーン!」

 二人は抱き合って嬉しそうにしている。

 なんというか、この二人は似ている気がする。

 割と自由奔放だし、食い意地もはってる。

 ペットは飼い主に似るというけど……うん、そっくりだ。

 いや、正確な飼い主は俺なんだけどね。

 やっぱり、一緒に過ごすと勝手に似ていくものなのかもしれない。
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