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少年期
お散歩
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ランのリードを持って、アイラがご機嫌で都市の中を歩く。
俺は隣に並び、その横顔を眺める。
ちなみに、ランの尻尾も揺れてご機嫌である。
「フンフフーン」
「ワフワフ」
「そうね、ラン! 散歩は楽しいわ!」
「アオーン!」
自惚れてはなく、俺がいるから機嫌がいいのか。
最近は教室で残っていたし、二人を放ってしまった。
これからは、少し気をつけないと。
「それで、今日は何処に行くの?」
「うーん、特に決めてないわ。ただエリゼとアレスがいるなら、好きに歩いて良いって。いない場合は、この家周辺って決まってるのよ」
「どうして、エリゼはともかく僕?」
「そりゃ、エリゼがアレス至上主義だからよ。エリゼは私よりアレスを優先するから、アレスがいないと来ないもの」
俺が振り返ると、後ろを歩くエリゼが頷く。
そして、相変わらず神出鬼没である。
一体、いつからいたのだろう。
「はは……それってアイラ的にはどうなの?」
「別に構わないわ。それは最初から聞いていたし、エリゼが仕えているのはアレスだもの」
「アイラ様、お気遣い感謝します」
どうやら、その辺りは問題ないらしい。
ただ皇女殿下より、男爵子息を優先でいいのだろうか。
「まあ、いいか……それじゃ、行きたい場所はある?」
「そうね……お買い物かしら? 来週末に校外学習があるから」
「ん? それって僕達も行くやつ? 二年生も行くの?」
「あれ? まだ聞いてないの? 私達は二年目の経験者ってことで、一年生に教えたりするらしいわ。というか、そこに担任がいるけど」
「ふむふむ、教えることで復習にもなるってことか。さて、そういやそうだったね」
俺は後ろを歩くエリゼに視線を向ける。
「確かにそのような話は出ました。ですが、ほぼ決まりとはいえ調整中とのことでしたので」
「なるほど。不確定情報はよくないね」
しかし、それはチャンスだ。
アイラの友達作りをどうしようかと思っていたけど、実際に状況を見ないことにはわからない。
そこで様子を見つつ、どうしたらいいのか考えて見よう。
「でも、どっちしろアレスは行くわけだし。だから、商人ギルドにいこっ!」
「なんで商人ギルド? 確かに物は揃うけど、別に買い物だけなら他でも良くない?」
「そ、それは……ほ、ほら! そろそろかき氷の試作品を出さなきゃ!」
「ははん、そういうことね」
商人ギルドには、いずれかき氷の試作品を提出するつもりだった。
レナのお父さんの店での評判もいいし、タイミング的にはありかな。
そしてアイラは、そのおこぼれにありつきたいと。
「そういうこと!」
「でも、別にアイラが行く必要なくない?」
「うっ……うぅー」
なにかを言おうとしたが、上手く言い訳が思いつかなかったらしい。
口をもごもごさせて唸っている……少し可愛い。
まあ、あんまり意地悪しちゃダメだね。
「ごめんごめん、連れてくよ。最近、放っておいたお詫びにさ」
「そうよ! これは私が食べたいわけじゃなくて、アレスに罪滅ぼしを与えてるの!」
「はいはい、わかりました」
「ワフッ」
一生懸命に言い訳をするアイラを、俺とランは微笑ましく見るのだった。
その後、商人ギルドに入る。
そこでは手前に店舗がいくつかあり、奥の方では受付があり商談などをしている。
ちなみに、かき氷に使うシロップ系はエリゼが持ち歩いていた。
本当に、万能メイドさんである。
「わぁ……相変わらず凄い人ね!」
「そうですね、アイラ様」
「……むぅ」
「ここでは人が多いですから。何より、高位貴族や大商人もいますし」
人が多いところでは、王女様と男爵子息モードである。
分別を弁えることも、この先のため必要だ。
婚約者だからと気安くしてたら、場合によっては印象が悪くなる。
好感度は高いに越したことはない。
「その代わり……ほら、はぐれないように手を繋ぎますよ。あと、ランのリードを離さないようにお願いします」
「う、うん……えへへ。ラン、しっかりついてきなさい」
「ワフッ!」
そして人波を避けて、奥の方に行き受付のお姉さんに話しかける。
「お姉さん、こんにちは」
「あら、こんにちは……白い狼に銀髪の少年……そしてアイラ様!? もしや、アレス様でしょうか?」
「へっ? そ、そうですけど……」
「誰か! ギルドマスターにアレス様が来たとお伝えして!」
お姉さんが急に立ち上がり、後ろにいる人たちに叫んだ。
それを聞き、受付の方々が騒ぎ出す。
「えっ!? 来たんですか!」
「ギルドマスターに知らせてきます!」
「それと各支部に連絡を!」
……なんだ、なんだ?
めちゃくちゃ大ごとになってるぞ?
アイラじゃなくて俺なの?
「アレス、なにをしたの?」
「いや、なにもしてないのですが……というか、しにきたというか」
「そうよね。これから試作品を提出しようって話だったわ」
訳がわからず、俺達は顔を見合わせた。
とりあえず、二人でランを揉みくちゃして待つことするのだった。
俺は隣に並び、その横顔を眺める。
ちなみに、ランの尻尾も揺れてご機嫌である。
「フンフフーン」
「ワフワフ」
「そうね、ラン! 散歩は楽しいわ!」
「アオーン!」
自惚れてはなく、俺がいるから機嫌がいいのか。
最近は教室で残っていたし、二人を放ってしまった。
これからは、少し気をつけないと。
「それで、今日は何処に行くの?」
「うーん、特に決めてないわ。ただエリゼとアレスがいるなら、好きに歩いて良いって。いない場合は、この家周辺って決まってるのよ」
「どうして、エリゼはともかく僕?」
「そりゃ、エリゼがアレス至上主義だからよ。エリゼは私よりアレスを優先するから、アレスがいないと来ないもの」
俺が振り返ると、後ろを歩くエリゼが頷く。
そして、相変わらず神出鬼没である。
一体、いつからいたのだろう。
「はは……それってアイラ的にはどうなの?」
「別に構わないわ。それは最初から聞いていたし、エリゼが仕えているのはアレスだもの」
「アイラ様、お気遣い感謝します」
どうやら、その辺りは問題ないらしい。
ただ皇女殿下より、男爵子息を優先でいいのだろうか。
「まあ、いいか……それじゃ、行きたい場所はある?」
「そうね……お買い物かしら? 来週末に校外学習があるから」
「ん? それって僕達も行くやつ? 二年生も行くの?」
「あれ? まだ聞いてないの? 私達は二年目の経験者ってことで、一年生に教えたりするらしいわ。というか、そこに担任がいるけど」
「ふむふむ、教えることで復習にもなるってことか。さて、そういやそうだったね」
俺は後ろを歩くエリゼに視線を向ける。
「確かにそのような話は出ました。ですが、ほぼ決まりとはいえ調整中とのことでしたので」
「なるほど。不確定情報はよくないね」
しかし、それはチャンスだ。
アイラの友達作りをどうしようかと思っていたけど、実際に状況を見ないことにはわからない。
そこで様子を見つつ、どうしたらいいのか考えて見よう。
「でも、どっちしろアレスは行くわけだし。だから、商人ギルドにいこっ!」
「なんで商人ギルド? 確かに物は揃うけど、別に買い物だけなら他でも良くない?」
「そ、それは……ほ、ほら! そろそろかき氷の試作品を出さなきゃ!」
「ははん、そういうことね」
商人ギルドには、いずれかき氷の試作品を提出するつもりだった。
レナのお父さんの店での評判もいいし、タイミング的にはありかな。
そしてアイラは、そのおこぼれにありつきたいと。
「そういうこと!」
「でも、別にアイラが行く必要なくない?」
「うっ……うぅー」
なにかを言おうとしたが、上手く言い訳が思いつかなかったらしい。
口をもごもごさせて唸っている……少し可愛い。
まあ、あんまり意地悪しちゃダメだね。
「ごめんごめん、連れてくよ。最近、放っておいたお詫びにさ」
「そうよ! これは私が食べたいわけじゃなくて、アレスに罪滅ぼしを与えてるの!」
「はいはい、わかりました」
「ワフッ」
一生懸命に言い訳をするアイラを、俺とランは微笑ましく見るのだった。
その後、商人ギルドに入る。
そこでは手前に店舗がいくつかあり、奥の方では受付があり商談などをしている。
ちなみに、かき氷に使うシロップ系はエリゼが持ち歩いていた。
本当に、万能メイドさんである。
「わぁ……相変わらず凄い人ね!」
「そうですね、アイラ様」
「……むぅ」
「ここでは人が多いですから。何より、高位貴族や大商人もいますし」
人が多いところでは、王女様と男爵子息モードである。
分別を弁えることも、この先のため必要だ。
婚約者だからと気安くしてたら、場合によっては印象が悪くなる。
好感度は高いに越したことはない。
「その代わり……ほら、はぐれないように手を繋ぎますよ。あと、ランのリードを離さないようにお願いします」
「う、うん……えへへ。ラン、しっかりついてきなさい」
「ワフッ!」
そして人波を避けて、奥の方に行き受付のお姉さんに話しかける。
「お姉さん、こんにちは」
「あら、こんにちは……白い狼に銀髪の少年……そしてアイラ様!? もしや、アレス様でしょうか?」
「へっ? そ、そうですけど……」
「誰か! ギルドマスターにアレス様が来たとお伝えして!」
お姉さんが急に立ち上がり、後ろにいる人たちに叫んだ。
それを聞き、受付の方々が騒ぎ出す。
「えっ!? 来たんですか!」
「ギルドマスターに知らせてきます!」
「それと各支部に連絡を!」
……なんだ、なんだ?
めちゃくちゃ大ごとになってるぞ?
アイラじゃなくて俺なの?
「アレス、なにをしたの?」
「いや、なにもしてないのですが……というか、しにきたというか」
「そうよね。これから試作品を提出しようって話だったわ」
訳がわからず、俺達は顔を見合わせた。
とりあえず、二人でランを揉みくちゃして待つことするのだった。
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