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少年期
ハロルド視点
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僕の名前はハロルド-オルレアン。
皇帝を父に持ち、このオルレアン皇国の皇太子の地位にある。
姉はいるけど男子は一人なので、生まれた頃から唯一の皇子として生きてきた。
なので常に誰かが側にいたりして、気が休まる時間がなかった。
唯一対等である姉上とは疎遠だし、ガイとは友達だけど対等ではない。
父上である皇帝陛下は忙しい方だし、母上は体調が悪いので無理は言えない。
そんな僕だけど、最近気になる男の子と出会った。
皇城にある自分の部屋の椅子に座り、ここ最近出会ったアレス君について考える。
「アレス君か……不思議な男の子だ」
彼の名前はアレス-ミストル。
ミストル男爵家の末っ子で、僕と同い年の男の子だ。
なんでも、今期の生徒の中で一番の成績で通過したとか。
「立ち振る舞いもしっかりしているし、魔法や剣まで使えるとか……すごいなぁ」
僕は魔法は使えるけど、それ以外はからっきしだ。
無論、皇太子である僕には必要ないとか言われるけど。
でも、僕だって男だ……そういう憧れがないわけじゃない。
「それに、姉上が剣をやってるし……なのに、男の僕はてんで駄目なのは恥ずかしい」
あと、剣を習ったりしたら……姉上と仲良くなれるかなって。
母親が違うことと、母方の家がうるさいことから、小さい頃から疎遠だったから。
僕は唯一の姉であるアイラ姉上に甘えたかった。
ただ、僕達自身にはそんなつもりはないけど……皇位継承権争いの二人とか言われていた。
「まあ、それは落ち着いたし……姉上と関わるのは、少しだけ叶ったんだけど」
父上が母方の家に何か言ったのか、僕と姉上が関わっても何も言わなくなった。
お陰で少しだけ交流をして、ようやく普通の姉弟みたいな会話が出来てきたり。
そんな普通のことが、今まで出来てなかったんだ。
「ただ、甘えるとはちょっと違ったかも。姉上ってば、めちゃくちゃお転婆だし」
僕はいつも揉みくちゃにされたり、あちこちに引っ張り回されたり。
でも、そういった扱いを受けたことがなかったから少し楽しかったり。
「あれ? なんかずれたかな? ……そうそう、アレス君の話だった」
あのお転婆な姉上とうまく付き合ってるし……何というか手綱を握ってるというか。
姉上はお姉ちゃんぶりたいけど、アレス君の方が大人って感じだ。
「ガイの態度にも気を悪くした様子はないし、僕に対しても普通というか……うん、普通なんだ」
もちろん敬語は使うし、立ち振る舞いは臣下のそれだ。
ただ、上手く言えないけど……畏まりすぎてないというか。
「僕を対等に見てる? ……うーん、少し違うかな。別に馬鹿にされたり、舐められてる感じもしないし」
……僕という個人を見てくれてる?
皇太子ハロルドではなくて、ただのハロルドとして。
「うん、これがしっくり来るかも」
アレス君には、僕を特別視する視線がない。
多分、それが心地よいのかもしれない。
「この間、二人で話した時も自然体だったし。ガイとだって、あんな風に話したことはないかも」
父上と話せると思ってきたのに、いつの間にかアレス君と話すのが楽しくなったり。
もちろん、父上と話せたことも嬉しかったけどね。
「改めて、不思議な男の子だよね。姉さんの婚約者なのに、そんな野心もなさそうだし。むしろ、僕が励まされちゃった。僕の欠点を褒めてくれたり……目から鱗だった」
あんな風に言われたのは初めてだった。
ずっと、もっと自分を持ちなさいとか堂々としなさいとか言われてきたから。
「もちろん、そういうおべっかを使う人はいたけど……なんか、アレス君に言われると素直に信じられるというか。それに、なんだか自然体で居られる気がする」
……なんだろ? もしも男兄弟がいたら、こんな感じなのかな?
いや、姉さんの婚約者なのも関係あるのかも。
「父上の信頼も厚いし、仲も良さそうだし」
それは少し羨ましいけど、それを見てるのも心地よかった気がする。
あの三人の空間が、とても良い時間だった。
また行きたいって言ったら、許可が出るかな?
よし……今度は、僕から提案してみようかな。
~あとがき~
みなさま、更新が遅れて申し訳ありませんでした🙇♂️
二月に流行病(コロ)にかかり、それから本業や締め切りや更新に追われておりました。
ペースも戻ってきたので、これからはぼちぼち更新するので宜しければご覧ください。
皇帝を父に持ち、このオルレアン皇国の皇太子の地位にある。
姉はいるけど男子は一人なので、生まれた頃から唯一の皇子として生きてきた。
なので常に誰かが側にいたりして、気が休まる時間がなかった。
唯一対等である姉上とは疎遠だし、ガイとは友達だけど対等ではない。
父上である皇帝陛下は忙しい方だし、母上は体調が悪いので無理は言えない。
そんな僕だけど、最近気になる男の子と出会った。
皇城にある自分の部屋の椅子に座り、ここ最近出会ったアレス君について考える。
「アレス君か……不思議な男の子だ」
彼の名前はアレス-ミストル。
ミストル男爵家の末っ子で、僕と同い年の男の子だ。
なんでも、今期の生徒の中で一番の成績で通過したとか。
「立ち振る舞いもしっかりしているし、魔法や剣まで使えるとか……すごいなぁ」
僕は魔法は使えるけど、それ以外はからっきしだ。
無論、皇太子である僕には必要ないとか言われるけど。
でも、僕だって男だ……そういう憧れがないわけじゃない。
「それに、姉上が剣をやってるし……なのに、男の僕はてんで駄目なのは恥ずかしい」
あと、剣を習ったりしたら……姉上と仲良くなれるかなって。
母親が違うことと、母方の家がうるさいことから、小さい頃から疎遠だったから。
僕は唯一の姉であるアイラ姉上に甘えたかった。
ただ、僕達自身にはそんなつもりはないけど……皇位継承権争いの二人とか言われていた。
「まあ、それは落ち着いたし……姉上と関わるのは、少しだけ叶ったんだけど」
父上が母方の家に何か言ったのか、僕と姉上が関わっても何も言わなくなった。
お陰で少しだけ交流をして、ようやく普通の姉弟みたいな会話が出来てきたり。
そんな普通のことが、今まで出来てなかったんだ。
「ただ、甘えるとはちょっと違ったかも。姉上ってば、めちゃくちゃお転婆だし」
僕はいつも揉みくちゃにされたり、あちこちに引っ張り回されたり。
でも、そういった扱いを受けたことがなかったから少し楽しかったり。
「あれ? なんかずれたかな? ……そうそう、アレス君の話だった」
あのお転婆な姉上とうまく付き合ってるし……何というか手綱を握ってるというか。
姉上はお姉ちゃんぶりたいけど、アレス君の方が大人って感じだ。
「ガイの態度にも気を悪くした様子はないし、僕に対しても普通というか……うん、普通なんだ」
もちろん敬語は使うし、立ち振る舞いは臣下のそれだ。
ただ、上手く言えないけど……畏まりすぎてないというか。
「僕を対等に見てる? ……うーん、少し違うかな。別に馬鹿にされたり、舐められてる感じもしないし」
……僕という個人を見てくれてる?
皇太子ハロルドではなくて、ただのハロルドとして。
「うん、これがしっくり来るかも」
アレス君には、僕を特別視する視線がない。
多分、それが心地よいのかもしれない。
「この間、二人で話した時も自然体だったし。ガイとだって、あんな風に話したことはないかも」
父上と話せると思ってきたのに、いつの間にかアレス君と話すのが楽しくなったり。
もちろん、父上と話せたことも嬉しかったけどね。
「改めて、不思議な男の子だよね。姉さんの婚約者なのに、そんな野心もなさそうだし。むしろ、僕が励まされちゃった。僕の欠点を褒めてくれたり……目から鱗だった」
あんな風に言われたのは初めてだった。
ずっと、もっと自分を持ちなさいとか堂々としなさいとか言われてきたから。
「もちろん、そういうおべっかを使う人はいたけど……なんか、アレス君に言われると素直に信じられるというか。それに、なんだか自然体で居られる気がする」
……なんだろ? もしも男兄弟がいたら、こんな感じなのかな?
いや、姉さんの婚約者なのも関係あるのかも。
「父上の信頼も厚いし、仲も良さそうだし」
それは少し羨ましいけど、それを見てるのも心地よかった気がする。
あの三人の空間が、とても良い時間だった。
また行きたいって言ったら、許可が出るかな?
よし……今度は、僕から提案してみようかな。
~あとがき~
みなさま、更新が遅れて申し訳ありませんでした🙇♂️
二月に流行病(コロ)にかかり、それから本業や締め切りや更新に追われておりました。
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