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少年期

仲良くしかばね

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 これにて、作戦は大成功だ。

 美味しいものを一緒食べれば仲良くなれるし、連帯感も生まれてるはず。

 こういうのを繰り返して行って、もっとハロルド様やガイ君と仲良くなれたらいいね。

 よし! これからも頑張ろっと!

 ……と、意気揚々と帰宅したんだけど……どうやら、お怒り様子。

 玄関の前で、アイラが仁王立ちをしていた。

「アレス! 遅いわよ!」

「ごめんごめん、ちょっと寄り道しててさ」

「どこに行ってたのよ?」

「ハロルド様とかとお昼食べてきたよ。レナの店に連れてってさ」

 すると、顔がプクーと膨れていく。
 怒るから絶対に言わないけど少し可愛い。

「私も行きたかったんだけど? 私だって、かき氷食べたいわ」

「いやいや、流石に皇子と皇女両方は無理だって。今度、連れてくからさ。というか……俺、昨日も作ったよね?」

「な、なんの話? ふふーん、そんなことは忘れたわ」

 ラン専用に氷を作っていたら、アイラが部屋にやってきた。
 もじもじしてるから何いうかと思ったら、かき氷を食べたいということだった。
 俺は仕方ないので、その場で作って食べさせてあげたってわけ。
 ……あんまり甘やかすのも良くないかな。

「へぇー、そんなこと言っちゃうんだ? どうしようかなー、もう作るのやめようかなー」

「あっ、えっ? うぅー……」

「何かいうことはあるかな?」

「ご、ごめんなさい! 謝るからぁぁ!」

 うんうん、相変わらず素直じゃない子けど可愛い。
 なんというか、妹のような感じなんだよなぁ。
 ……これも絶対に怒られるから言わないけどね!

「はい、よくできました。それじゃ、また作るね」

「うんっ! 約束よ!」

「そういえば、ランはどうしたの?」

 てっきり、出迎えてくれるかと思ったけど。
 俺達がいないから拗ねちゃったのかな?

「ランなら部屋にいるわ」

「そうなの? それじゃ、見にいきますか」

「そうね、そうしましょう」

 そして、自分の部屋を開けて中に入ると……そこにはランが倒れていた。
 それこそ、まるで屍のように。
 まさか、暑さで倒れちゃった!?
 俺は慌てて、ランに駆け寄る。

「ラン! 平気!?」

「ククーン……」

「ほっ、生きてはいるね。一体、何かあったんだい?」

 よく見ると氷はまだあるし、部屋の中も暑くなってない。
 ただ毛がやたら散乱してるのと、どちらかというとランは疲れただけに見える。

「ワ、ワフッ……」

「ラン? 誰を指差して……アイラ?」

「わ、私は何もしてないわよ。ただちょっと、一人でつまんなかったから遊んだだけで……」

「なるほど、そういうことね。ラン……よく頑張った、後は俺に任せて休んでね」

「ワフッ……!」

 やりきった顔をして、ランが眠りについた。
 どうやら、アイラの相手をしてくれてたらしい。
 それで疲れ切ったのだろう。

「わ、私、悪いことした?」

「ううん、ランが怒らないでって顔してたから平気だよ。ランも、きっと楽しかったんだろうし。ただ、やりすぎには注意すること……いいかな?」

「わ、わかったわ……うぅー、私の方がお姉さんなのに」

「だったら、お姉さんらしくしないと」

「が、頑張るもん」

 ここにきた頃は少し意地を張ってたのか、お姉さんらしくしたかったのか……少しずつ、出会った頃のような感じに戻ってるよう気がする。
 これはこれでありかなって思う……ただ、少しからかいたくなっちゃうけど。

「それじゃ、かき氷は食べなくてもいいかなー」

「それとこれとは話が別よ! むぅ……ちょっと調子に乗りすぎじゃない?」

「あ、あの? アイラさん? 何をじりじりと迫っているのですかね?」

「ええーい! アレスもこうしてやるんだから!」

「うぎゃー!? やめてぇぇ~!!」

 そうして俺は、アイラに揉みくちゃにされるのだった。

 そして終わった後……俺はランと仲良く並んで屍になってたとさ。

    お互いに、やりすぎには注意が必要だね!


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