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少年期

かき氷

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 お刺身を食べ終わったら、いよいよアレである。

 そう、白くてふわふわしたものですね!

「お刺身ですか……初めて食べましたけど美味しいかった」

「……悪くはなかったですね」

「そんなこと言って~ガイ君ってば、すごい勢いで食べてたし完食してるじゃん」

「う、うるさい!」

「えへへ、喜んでもらえて良かったです」

「……ふんっ」

 ちょっと素直じゃないだけで、ガイ君も少し可愛く思えてきた。
 多分、親に言われたり、王太子の側近ということで気を張ってるのかも。
 俺達といることで、少しは変わっていくと良いけど。
 側近が気を張ってると、主人は安らげないしね。
 すると、トレイを持ったランドさんがやってくる。

「お待たせしました。こちらが、当店自慢のかき氷でございます」

「さっきも見たけど、これはなんだろ?」

「何やら白くてふわふわしてますね」

「あっ、これ顔を近づけるとひんやりして冷たいよ? というとは氷ってこと?」

「ふふふ、よく聞いてくれました! そう、これは氷なのです! 白くてふわふわしたかき氷という商品です!」

 俺が開発に漕ぎ着けた、かき氷を作ろう計画。
 鍛錬の甲斐もあり、ようやく白い氷を出すことに成功した。
 といっても、まだまだ量も質も足りないので商人ギルドには提出してない。
 ランドさんのご好意によって、お試しで店で出してもらっている。

「これが氷……あっ、スプーンでほじるとしゃくって言った」

「でも、この赤い液体はなんだ?」

「それはイチゴを砂糖で煮詰めたソースですよ」

 幸い、イチゴは北にある森から採取できる。
 今は冒険者に依頼しないといけないけど、いずれは自分で取りに行きたい。
 オレンジとか、葡萄とか、メロン味もあったら良いよね。
 大人向けにラズベリーとかでもありかも。

「へぇ、砂糖をかけて食べることはあるけど……どうしてこうなるの? 僕が食べてたのは、こんなに液体状にはなってなかった」

「ちょっと手間がかかるんですよ。まずは普通に砂糖とイチゴを鍋に入れて混ぜます。そして、その状態で。すると砂糖によってイチゴの水分が出てきます。あとは、それを火にかけて煮詰めていくだけですね」

「へぇ、手間がかかってるんだね。なるほど、アレス君以外には作れないってことだ」

「ええ、今のところはそうですね。さあさあ、溶ける前に食べてください」

「それではいただきます、はむっ……ん~!」

 その瞬間、ハロルド様が目を見開いて足をバタバタさせる!
 ふふ、初めて食べるとキーンとするよね。

「へ、平気ですか!? 貴様、何を入れた!?」

「わぁー! 落ち着いてって!」

「ガイ! 平気だって! ……冷たくて驚いただけだから。それに、すっごく甘くて美味しいよ」

「冷たいものを一気に食べると、頭が痛くなることがあります。なので、ゆっくり食べてくださいね」

「ふん、それを先に言え——おっ!?」

 そして、一気に食べたガイ君も足をバタバタとさせる。
 俺の話、聞いてたかな?

「だから言ったのに」

「くっ……しかし、たしかに美味いな。冷たくてシャクシャクした食感もいい」

「うん、そうだね。口の中ですぐに溶けちゃう感じも楽しいし」

「気に入ってもらえたら嬉しいです」

 ふふふ、彼らは王族と侯爵家の方々だ。
 これで、宣伝とかしてもらえたらラッキーだね。
 将来的に店をやるつもりだから、スポンサーは欲しいし。

「ルナ、俺達も食べようか?」

「はいっ! はむっ……んー! 美味しいですっ!」

「どれどれ、はむっ……ん~! これこれ!」

 甘くて美味しいのはもちろんだけど、脳内にキーンと響く感じ!
 そうなるとわかっていても、一気に食べたくなる!
 中毒性があり、手が止まらない!

「ねえ、みんな、おいし……はは」

「はむっ、美味しい」

「はむはむ……悔しいが美味い」

「んー!  何回でも感動しますっ!」

 ふと見ると、みんなが夢中で食べ進めていた。

 ふふ、かき氷作戦は大成功のようです。

 そのうち、練乳とかも作ってみたいね!
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