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少年期

四人でお出かけ

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 俺は三人を連れて、ルナの店に向かう。

 当然、入る前に……ガイ君が難色を示す。

「ここに入るのか? 王族であるハロルド様もいるのに」

「ここはルナのお父さんがやってるお店だよ。それに、アイラ様もきたことあるから問題なし」

「それを言われると……」

「ガイ、良いじゃないか。僕は、この店に入ってみたいよ」

「……わかりました」

「そうそう、きっと後悔はさせないからさ」

 そして、扉をあけて中に入ると……店は相変わらず繁盛していた。
 しかし、その理由はお刺身だけではない。
 俺が提案した新商品も関係してる。

「こっちにも!」

「こっちにもくれ!」

「これで午後の仕事も頑張るぜ!」 

 みんなが食べているのは刺身ではなく、
 特にこの世界にはデザートという概念がない。
 お菓子とかはあるけど、デザートは氷がないと話にならないし。

「な、なんだろ? あの白くてふわふわしたものは……」

「何やら人気みたいですが……」

「まあまあ、二人とも。とりあえず、奥の席に座ろう。ルナ、案内をよろしく」

「はい! こちらへどうぞ!」

 そしてレナの案内の元、一番奥の席に通される。
 俺とレナが並んで座り、奥の席にハロルド様とガイ君が座った。
 店主には以前から伝えていたので、これで計画通りに事が運ぶはず。
 すると、ランドさんがお刺身の盛り合わせを持ってくる。

「アレス様、いらっしゃいませ。おかげさまで、繁盛しております」

「いえいえ、それはランドさんの料理が美味しいからですよ。僕がやったのは、おまけみたいなものですから」

「相変わらず謙虚というか、少年っぽくないですな」

「も、もう! お父さん!」

「はは、すまんすまん」

 俺はそこでおろおろしてる二人に目を向ける。
 笑っちゃいけないけど、やっぱりまだまだ子供なんだなと思った。
 初めての場所で、護衛もいないから緊張してるみたいだ。
 実際には、何処かにエリゼがいるはずだから問題はないけど。

「この二人は、ハロルド君とガイ君っていうんだ。同じクラスで、友達になったから連れてきたんだ」

「お、俺がいつから」

「ガイ、いいじゃないか」

「……わかりました」

「初めまして、店主のランドと申します。そしてえ、ルナの父でもあります。娘がご迷惑をお掛けするかもしれませんが、よろしくお願いいたします」

 当然、ランドさんには二人の身分を伝えてある。
 それを言った時は、めちゃくちゃ恐縮してたけど。
 ……まあ、王子様と侯爵家御子息だから当然か。

「ええ、もちろんですよ。ねっ、ガイ?」

「……できる限りは」

「ありがとうございます。それでは、どうぞお召し上がりください」

 そして、ランドさんが一度下がっていく。
 もちろん、デザートも後で出してもらうことになってる。

「これは生で食べるのかな?」

「ええ、そうですよ。新鮮なので安心してください。仮に何かあっても、ここには回復も使える俺がいますから」

「そういえばそうだったね。ガイ、もうここまできたんだから煩いことは言わないようにね」

「はい、わかっております」

「それじゃあ、いただきます……美味しい。焼いた魚とは違う食感、それでいて噛むと甘みが出てくる」

「……確かに美味しいです。醤油をつけることによって、素材の味が活きている気がしますし」

 流石は王子と侯爵家御子息だ、中々に舌が肥えていらっしゃる。

 だが、次に出てくるアレはどうかな?

 俺は少しワクワクしながら、二人が食べる様子を眺めるのだった。
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