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少年期

休み明け

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 この夏休みは色々とあった。

 楽しかった旅……かき氷の商売に関すること……そしてランという新しい家族。

 何より、皇太子であるハロルド様と仲良くなれた。

 ひとまず、順調に自分のやりたいことが出来て来ている気がする。

 そして……気持ちよく夏休みが明けた。

「アレス! いくわよ!」

「ワフッ!」

「ちょっ!? ラン! 散歩じゃないわよ!」

 迎えにきたアイラに、ランがじゃれついている。
 どうやら、散歩に連れてってくれると勘違いしたらしい。

「ラン!」

「ワフッ!」

 俺の言葉に反応し、目の前でお座りをする。
 これも、教育の一環の成果だ。
 甘やかすことだけが教育ではない。

「昨日、言ったろ? 明日から、僕達は忙しくなるって。帰ってくるまで、良い子で待ってなさい」

「ククーン……」

 その潤んだ目は可愛らしく、思わず意思が揺らぎそうになる。

「……そんな目をしてもダメだよ。きちんと良い子で待ってたら、帰ってきたら散歩するから」

「……ワフッ!」

 どうやら、わかってくれたらしい。
 この子も独りぼっちだったから、寂しいのは当たり前だよね。

「でも、ずっとこの部屋じゃ可哀想じゃない?」

「まあ、それはそうなんだけど……」

「そのうち、連れて行けるかと」

「エリゼ?」

「ランは従魔登録もしてますし、かなり賢い子です。まだ子供だし、色々と躾は必要ですが、ある程度したら自由にさせて良いかと。都市の人々にも、大分認知はされてきていますし」

 確かに、散歩を通して顔見せはしている。
 住民の方々に可愛いとか撫でても良いとか聞かれるようになった。

「なるほど。ラン、だそうだよ? そのためには良い子でいないとね?」

「ワオーン!」

「よし、良い子だ。それじゃあ、行ってくる」

「ラン! またね!」

 ランに挨拶をして、俺とアイラは学校へと向かうのだった。




 休み明けの教室に入ると……。

「あっ、アレス君! おはようございます!」

「おはよう、ルナ」

 ルナに挨拶をした俺は、そのままハロルド様の元に向かう。

「ハロルド様、おはようございます」

「アレス君、おはよう」

「ガイ君も、おはようございます」

「……おはよう」

「ガイ君は、夏休みどうでしたか?」

「別に普通だ。ハロルド様と別荘に行ったり、稽古に励んだり……」

「そうなんですね。僕も旅行に行ったり、鍛錬はしてましたよ」

「そうか。だが、国を守る貴族として当たり前だな」

「まあ、そうですね」

 おお、ぎこちないけど会話が成立している。
 どうやら、ハロルド様が何か言ってくれたらしい。
 俺としては皇位なんかに興味はないので、このまま軟化してくれれば良いなぁ。




 そして初日ということで、午前中のうちに学校が終わる。

 ……あっという間に一年は過ぎちゃうし、今のうちに行動を起こしておくかな。

「ハロルド様、この後時間はありますか?」

「えっ? う、うん、平気だよ」

「良かったら、一緒にご飯でも食べに行きませんか? もちろん、ガイ君も一緒に」

「僕は構わないけど……ガイ、良いかな? 僕としては行きたいと思ってる」

「……わかりました、ご一緒しましょう」

 よし、第一関門を通過……次だね。

「ルナもいいよね?」

「わ、わたしも良いんですか?」

「もちろんだよ。だって、同じクラスの仲間だし。せっかく四人しかいないのに勿体ないし」

「待て、流石に平民は……」

「ここでは関係ないはずだよ? それに卒業試験はこの四人でダンジョンに入るんだよ? 良い加減、話しておかないと」

 特例として九歳から冒険者になれる俺達だが、そのための試験は当然ある。
 それが 一年時のパーティーでダンジョンに入ることだ。
 他のクラスを見たが、この四人が変わることはなさそうだし。

「……ちっ、わかった」

「ガイ、ダメだよ。今回は、アレス君の言う通りだよ。ルナさん、今まであまり話したことないけど、これからはよろしくね」

「……よろしく頼む」

「は、はいっ! こちらこそ、よろしくお願いします!」

 ……ほっ、とりあえず第二関門を通過かな。

 完全に警戒を解くのは難しいけど、こっちにだって秘策はある。

 フフフ、後はあの作戦で距離を縮めてやろうじゃないか。


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