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少年期

血の繋がった家族

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 今日は使用人やメイドさんも暇を出している。

 ゼノスさん曰く、信用してないわけじゃないけど、ハロルド様がリラックスできるようにと配慮したみたい。

 なので、この屋敷には三人しかいない。

 これなら、砕けた口調をしても問題ないしね。

 ひとまず三人で、応接室の一室に入りソファーに座る。

「……不思議な感じです」

「ん? 何がですか?」

「い、いえ、護衛もいなければメイドもいない……そんなことは初めてなので」

 ……それは当然だ。
 彼は皇族で唯一の男子にして、正真正銘の皇太子だ。
 常に周りには人がいる生活を強いられてきたはず。
 きっと、生まれた頃から自由などなかったのだろう。

「まあ、俺もだがな。だが、たまには良いさ。そうしないと、自分という者がわからなくなる」

「で、でも、良いのですか? 今、誰かが襲ってきたら……」

「平気だ。屋敷にこそいないが、その周りには警護を固めてある」

 どうやら、隠密系の方々があちこちにいるらしい。
 それこそ、エリゼみたいな人たちが。
 何よりエリゼが風の結界をかけているので、入ってくる者イコール敵である。
 遠くには散歩に行かないので、数分でエリゼがやってくるはず。

「大丈夫です! いざとなったら僕が命をかけてお二人を守るので!」

「おいおい、それは困る。何かあったら、親友に会わせる顔がない」

「そうですよ、僕が姉上に叱られてしまいます」

「ありゃりゃ……うん、間違いないです」

「「ははっ!」」

 俺が頬をかいて気まずそうにすると、二人が同じように笑う。
 その笑った顔は似ており、やっぱり親子なんだなと思う。




 その後、それぞれ学校の話や、夏休みの過ごし方などを話して過ごす。

「ハロルド様はどうしていたのですか?」

「僕はですね、皇族だけが行ける避暑地があって……姉上と父上は来れなかったですけど、母上とガイと一緒に過ごしてたよ。アレス君は、港町に行ったんだよね?」

「へぇ、そんな場所があるんですね。はい、そうです。海が綺麗で、食べ物とかも美味しかったですよ」

「へぇー! 良いですね! 僕も行ってみたいですね!」

「では、次はお誘いしますね」

「ええ、お願いします」

 そうきて楽しく話していると、ハロルド様から硬さが取れ敬語がなくなってくる。
 それを、ゼノスさんが暖かく見守っていたが……突然立ち上がる。

「さて……では、俺はこの辺りで失礼しよう」

「えっ? 良いんですか? もっと話したら……僕ばっかり話してますけど」

「ああ、俺は十分だ。何より、久しぶりに可愛い息子に会えたしな。それに、部屋に戻って仕事をせねばならん」

「ち、父上……僕も話せて良かったです」

「それなら良い。ハロルド、俺はお前を愛している。他の誰がなんと言おうと、それだけはわかってくれ」

「は、はいっ!」

 それだけ言い、ゼノスさんが部屋を出て行く。

 アイラもそうだけど……なにやら、色々としがらみが多そうだ。

 俺が力になれることがあったら良いんだけど……。

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