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少年期
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ランを連れて屋敷に帰ると、案の定アイラが突撃してくる。
それこそ、体当たりでもしそうな勢いで。
「アレスー!」
「ワフッ!?」
「待って! ストップ!」
俺の声が届いたのか、アイラがギリギリで立ち止まる。
「な、何よ?」
「ダメだよ、アイラ。ランがびっくりしちゃうから」
「そ、そうね……ラン、よくきたわね」
「ワフッ!」
「良い返事ね! 改めて、私がアイラよ! これからよろしく!」
「ワォーン!」
うんうん、微笑ましい光景だ。
すると、アイラがもじもじし出す。
「どうしたの?」
「ククーン?」
「……も、もふもふしてもいいかしら?」
「ワフッ?」
ランが伺うように、俺に視線を向ける。
どうやら、許可を確認しているらしい。
「ランの好きにして良いよ。俺はランの飼い主ではあるけど、ランを縛り付けるつもりはないから。ただし、悪さをしたら叱るからね?」
「ワフッ!」
「えっと……良いのかしら?」
すると、ラン自らが近づき……アイラに擦り寄る。
「わぁ……可愛い……ふわふわ」
「ワフッ」
「えへへ」
ひとまずアイラが夢中になっているので、奥にいるゼノスさんの元に行く。
今回のことは、この方の許可がなければ無理だったからお礼を言わないと。
「ゼノスさん、この度はありがとうございます」
「なに、気にするな。人に友好的な貴重な魔物を守るのも、俺の仕事のうちの一つだ。むしろ、こちらが感謝したいくらいだ。よくぞ、助けてくれた」
「そう言って頂けると助かります」
「何より、皇帝として礼を言う。あの港町は、我が国にとっては無くてはならない場所だ。改めて、重ね重ね礼を言う。本当なら謁見の間にて褒美を取らせたいところだが……」
「そ、それは勘弁してもらえると……」
俺としては、出来るだけ目立ちたくはない。
いくら、アイラの婚約者として功績が必要とはいえ。
「ははっ! わかっておる! 確かに功績は大きいし、それに見合う物をあげたいが……やりすぎると問題かもしれん」
「そうですよ。それより、少し相談があるんですけど……できれば二人で」
迷ったけど、相談することにした。
本当なら、自然と仲良くなりたかったけど。
「ふむ……アイラ! その水狼を連れて、散歩に行くといい!」
「ほんと!? うん! 行きたい!」
「エリゼ、アイラのことを頼む」
「はい、畏まりました」
「アレスはいかないの?」
「僕はゼノスさんと商談があるので。ラン、アイラのいうこと聞くようにね」
「ワフッ!」
「あっ、そうよね。じゃあ、行ってくるわ」
二人がランを連れて屋敷から出るのを確認して……。
「さて、せっかくだ……お主の部屋にて話しをしようか」
「はい、お願いします」
その後、俺の部屋に入り……。
「さて、話とはなんだ?」
「その、実は……ハロルド皇子についてなんです」
「……ほう?」
「せっかく同じクラスですし、アイラの弟なので仲良くなりたいと思っているのですが……中々そうはいかなくて」
俺自身は何回か話しかけようとしているが、とある人物に邪魔をされてしまう。
できれば彼のいないところで話をしたいところだ。
「ガイ-ロンダードか……ふむ、難しいところだ」
「どのような関係か聞いても良いですか?」
「そうだな……ハロルドの母は、ロンダード家出身といえばわかるか?」
「正妃がロンダード家出身ということは……ガイ君とも血縁ってことですね」
「ああ、ガイの父親とハロルドの母親は兄妹にあたる。そして正妃よりも……ロンダード家が、ハロルドを皇位につけたいと思っている。なので、アイラの婿候補であるお主を敵意しているのだろう」
「なるほど……へっ? いやいや!」
なるほどじゃないよ!
それって俺が皇位を狙ってると思われてるってことじゃん!
「いや、俺もわかっている。だが、そうは思わない輩もいるということだ」
「は、はぁ……」
「だが、そういうお主だから俺も安心している。基本的には、ハロルドに継がせる気だからな」
「……それが、俺が選ばれた理由ですか?」
「それもある。野心ある者を、アイラの婿候補にするわけにはいかん。お主には、すまないと思っている……こっちで、色々決めてしまって」
「い、いえ! こちらはお世話になってる身なので!」
むしろ、わかりやすい理由がわかって安心した。
どうして、俺なんかが選ばれてたのか疑問だったけど。
親友の息子である俺を信頼してということだ。
「感謝する。その代わりと言ってはなんだが、何か希望があれば聞こう」
「そうですね……できれば、ハロルド皇子と二人きりで話が出来たらなと」
「ふむ……」
「い、いや、無理ですよね! 皇太子と二人きりとか!」
「いや、そんなことない。むしろ……わかった、そのように手配をしよう。その時には、ハロルド一人でこさせよう」
「へっ? い、良いんですか? 男爵の息子と皇太子を二人きりで会わせるとか……」
「ああ、お主なら安心だ。それに、俺とお主の父親も似たような関係だ。では、そのように手配をしよう」
「あ、ありがとうございます」
自分で言ってはなんだが、通るとは思ってなかった。
でも、これでようやく話す機会ができるね。
それこそ、体当たりでもしそうな勢いで。
「アレスー!」
「ワフッ!?」
「待って! ストップ!」
俺の声が届いたのか、アイラがギリギリで立ち止まる。
「な、何よ?」
「ダメだよ、アイラ。ランがびっくりしちゃうから」
「そ、そうね……ラン、よくきたわね」
「ワフッ!」
「良い返事ね! 改めて、私がアイラよ! これからよろしく!」
「ワォーン!」
うんうん、微笑ましい光景だ。
すると、アイラがもじもじし出す。
「どうしたの?」
「ククーン?」
「……も、もふもふしてもいいかしら?」
「ワフッ?」
ランが伺うように、俺に視線を向ける。
どうやら、許可を確認しているらしい。
「ランの好きにして良いよ。俺はランの飼い主ではあるけど、ランを縛り付けるつもりはないから。ただし、悪さをしたら叱るからね?」
「ワフッ!」
「えっと……良いのかしら?」
すると、ラン自らが近づき……アイラに擦り寄る。
「わぁ……可愛い……ふわふわ」
「ワフッ」
「えへへ」
ひとまずアイラが夢中になっているので、奥にいるゼノスさんの元に行く。
今回のことは、この方の許可がなければ無理だったからお礼を言わないと。
「ゼノスさん、この度はありがとうございます」
「なに、気にするな。人に友好的な貴重な魔物を守るのも、俺の仕事のうちの一つだ。むしろ、こちらが感謝したいくらいだ。よくぞ、助けてくれた」
「そう言って頂けると助かります」
「何より、皇帝として礼を言う。あの港町は、我が国にとっては無くてはならない場所だ。改めて、重ね重ね礼を言う。本当なら謁見の間にて褒美を取らせたいところだが……」
「そ、それは勘弁してもらえると……」
俺としては、出来るだけ目立ちたくはない。
いくら、アイラの婚約者として功績が必要とはいえ。
「ははっ! わかっておる! 確かに功績は大きいし、それに見合う物をあげたいが……やりすぎると問題かもしれん」
「そうですよ。それより、少し相談があるんですけど……できれば二人で」
迷ったけど、相談することにした。
本当なら、自然と仲良くなりたかったけど。
「ふむ……アイラ! その水狼を連れて、散歩に行くといい!」
「ほんと!? うん! 行きたい!」
「エリゼ、アイラのことを頼む」
「はい、畏まりました」
「アレスはいかないの?」
「僕はゼノスさんと商談があるので。ラン、アイラのいうこと聞くようにね」
「ワフッ!」
「あっ、そうよね。じゃあ、行ってくるわ」
二人がランを連れて屋敷から出るのを確認して……。
「さて、せっかくだ……お主の部屋にて話しをしようか」
「はい、お願いします」
その後、俺の部屋に入り……。
「さて、話とはなんだ?」
「その、実は……ハロルド皇子についてなんです」
「……ほう?」
「せっかく同じクラスですし、アイラの弟なので仲良くなりたいと思っているのですが……中々そうはいかなくて」
俺自身は何回か話しかけようとしているが、とある人物に邪魔をされてしまう。
できれば彼のいないところで話をしたいところだ。
「ガイ-ロンダードか……ふむ、難しいところだ」
「どのような関係か聞いても良いですか?」
「そうだな……ハロルドの母は、ロンダード家出身といえばわかるか?」
「正妃がロンダード家出身ということは……ガイ君とも血縁ってことですね」
「ああ、ガイの父親とハロルドの母親は兄妹にあたる。そして正妃よりも……ロンダード家が、ハロルドを皇位につけたいと思っている。なので、アイラの婿候補であるお主を敵意しているのだろう」
「なるほど……へっ? いやいや!」
なるほどじゃないよ!
それって俺が皇位を狙ってると思われてるってことじゃん!
「いや、俺もわかっている。だが、そうは思わない輩もいるということだ」
「は、はぁ……」
「だが、そういうお主だから俺も安心している。基本的には、ハロルドに継がせる気だからな」
「……それが、俺が選ばれた理由ですか?」
「それもある。野心ある者を、アイラの婿候補にするわけにはいかん。お主には、すまないと思っている……こっちで、色々決めてしまって」
「い、いえ! こちらはお世話になってる身なので!」
むしろ、わかりやすい理由がわかって安心した。
どうして、俺なんかが選ばれてたのか疑問だったけど。
親友の息子である俺を信頼してということだ。
「感謝する。その代わりと言ってはなんだが、何か希望があれば聞こう」
「そうですね……できれば、ハロルド皇子と二人きりで話が出来たらなと」
「ふむ……」
「い、いや、無理ですよね! 皇太子と二人きりとか!」
「いや、そんなことない。むしろ……わかった、そのように手配をしよう。その時には、ハロルド一人でこさせよう」
「へっ? い、良いんですか? 男爵の息子と皇太子を二人きりで会わせるとか……」
「ああ、お主なら安心だ。それに、俺とお主の父親も似たような関係だ。では、そのように手配をしよう」
「あ、ありがとうございます」
自分で言ってはなんだが、通るとは思ってなかった。
でも、これでようやく話す機会ができるね。
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