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最終章

旅立ち

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 すると……皆の時が動き出す。

「あれ? クロス君はいるけど……」

「二人がいないのだ?」

「ご主人様?」

「二人は帰ったよ……元の世界に」

 俺は手短に説明をする……思い出して涙が出ないように。
 結衣はもちろんのこと、和馬との別れが辛かった。
 彼がいなければ、今の俺はいない。

「そうなんですね……でも、わたし達がついてます!」

「そ、その! 拙者たちがいますから!」

「そうですよ~」

「……ああ、ありがとう」

 どうやら、見抜かれてしまったらしい。
 ふむ……和馬がいなくなったからというわけではないが。
 今、このタイミングが良いかもしれない。

「じゃあ、三人共——俺と結婚……家族になってくれるか? 爵位もなければ皇位継承権もない、ただの男だが……皆と一緒に年を重ねていきたいと思ってる」

「……グスッ……はいっ!」
「うぅ……もちろんなのだ!」
「えっと……私もいいんですか?」

 セレナは泣きそうになり、カグラは笑顔で頷き、アスナは怪訝な顔をしている。
 それぞれ魅力的な女の子ばかりで、俺にはもったいないほどだ。

「ああ、アスナもだ。嫌なら断っていいぞ?」

「嬉しいですけど……どういう心境の変化ですかね?」

「いや、今の俺は

 前世の倫理観から、正直抵抗があったのだと思う。
 しかし、それは和馬を言い訳にしていたのかもしれない。
 成人もしたし、良い機会だ……改めて、俺はアレスとして生きていこう。

「そうですか……じゃあ! 早速子作りですね!」

「アスナ! 拙者が最初なのだ! そういう約束だったのだ!」

「わ、わたしは二番目でも……最初でも良いですよ?」

「セレナさん? おかしくありません? 」

「ほほう? 腹黒セレナが出てきたか?」

「腹黒じゃないもん!ほ、ほら! もう正妻とかないですから! この大陸から出て行くわけですし!」

「むぅ……確かに一理あるのだ。アレス様は職につくわけでもないし」

「言えてますね~、爵位もありませんし……ということは戦いですね」

「いいだろう! 拙者が一番乗りなのだ!」

「ま、負けません!」

「おい? 三人共?  ……聞いちゃいないな」

 やれやれ、嬉しいが……少し勢いに負けそうだな。
 男性一人に、女性三人か……やっぱり、オルガについてきてもらうべきだったか?

「キュイ?」

「うん?」

「キュイ!」

 クロスが、俺に頭を擦り付ける。

「そっか……俺にはお前がいたな。相棒、俺の相談を聞いてくれな?」

「キュイ!」

「「「まさか……ライバルはドラゴン?」」」

「キュイ?」

 どうかなるか心配だったが、楽しい旅になりそうだ。




 その後、結界の外に出て……。

「さあ、行こうか。クロス、俺は腕に乗る。三人を背中に乗せてくれ」

「キュイ!」

 全員が乗ったのを確認して、クロスが空へと羽ばたく!

 そして、そのまま海を越えていく!

 見えてくるのは……闇の結界だ。

「皆! 準備はいいな!? あれを抜ければ別世界だ! おそらく未知の敵もいる!」

「魔法、いつでもいけます!」

「前衛は拙者に任せるのだっ!」

「わたしは補佐に回りますねー」

「キュイ~!」

 俺が、いや……和馬がこの世界に転生した意味、それは結衣を救ったことで終わった。

 もちろん、和馬と共に過ごした日々は掛け替えのない宝物だ。

 大切な仲間、愛する女性……辛いこともあったが、忘れることのない日々だった。

 そして、アレスとしての役目もひとまず終わった。

 これからは……アレスとして第二の人生を生きていこう。

 アレスにしかできないこと……いや、俺がしたいことを。

「よし……クロス! 俺たちを連れてってくれ——まだ見ぬ新大陸へ!」









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