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最終章
成人の日
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翌朝……俺たちは用意をして家を出る。
五人を先に行かせ……俺だけが最後の挨拶をする。
「お兄ちゃん……」
「師匠……」
「おいおい、泣かないって約束したろ?」
「だってぇ……どうして良いことしたお兄ちゃんが……」
「そうなのじゃ!」
「仕方ないんだよ。それに、俺自身が決めたことだ。この狭い世界を出て、広い世界を旅したいってな」
そう……俺は仕方なく出て行くわけじゃない。
俺は生まれてこのかた、運命に縛られてきた。
自由になった今……俺は考えていた。
この世界で、俺がしたいことを……。
そして、やりたいことが見つかった。
それが、まだ見ぬ世界への冒険ってやつだ。
「うん……帰ってくるよね?」
「ああ、もちろんさ。お兄ちゃんが約束破ったことあるか?」
すると、二人にぎゅっと足元にしがみつかれる。
泣くかと思ったら……顔を上げて笑顔を見せてくれる。
「……いってらっしゃい、お兄ちゃん!」
「うむ! 行ってくるのじゃ!」
「ああ、行ってくる。父上と母上を頼んだぞ」
「おいおい、まだまだ若いっての。そうだ! もう一人くらい作るか!」
「も、もう! 何言ってるのよ!」
……自分の子供を作る前に、弟か妹が出来てそうだ。
「アレス様」
「カイゼル、片腕のお前には悪いが……」
「いえ、片腕さえあれば充分かと。アレス様不在中の守りはお任せを」
「ああ、カイゼルなら安心だ……俺が子供を連れてくるまで死ぬなよ?」
「クク……それは死ねない理由ができましたな。ええ、この腕に抱く日を楽しみにしております」
「……それじゃあ、みんな……元気でな!」
俺は、振り返らずに背を向けて歩き出す。
……そうしないと、もう涙を堪えるのが限界だったから。
その後、人目を避けるように門の入り口に行き……。
ブリューナグ家の紋章が刻まれた馬車に乗り込む。
もう一台の馬車には、中村君と結衣が乗っているはずだ。
「待たせたな、三人とも」
「いえいえ~」
「カグラちゃん、お願い」
「うむ! 行くのだ!」
そして、ゆっくりと馬車が走り出し……生まれ育った場所を出て行く。
「………」
「アレス様……」
「御主人様……涙が出て……」
「いや、すまん……さっき拭いたばかりなんだが」
俺は二人から目を背け、外の景色を眺める。
以前、グロリア王国に行った時とはまた違う。
今回はいつ帰ってこれるかわからない。
未知の世界に行くということは危険との隣り合わせ。
ワクワクと寂しいという気持ちが混同する。
だが、俺とて一人立ちしないとな。
今日は、俺が成人になった日なのだから。
五人を先に行かせ……俺だけが最後の挨拶をする。
「お兄ちゃん……」
「師匠……」
「おいおい、泣かないって約束したろ?」
「だってぇ……どうして良いことしたお兄ちゃんが……」
「そうなのじゃ!」
「仕方ないんだよ。それに、俺自身が決めたことだ。この狭い世界を出て、広い世界を旅したいってな」
そう……俺は仕方なく出て行くわけじゃない。
俺は生まれてこのかた、運命に縛られてきた。
自由になった今……俺は考えていた。
この世界で、俺がしたいことを……。
そして、やりたいことが見つかった。
それが、まだ見ぬ世界への冒険ってやつだ。
「うん……帰ってくるよね?」
「ああ、もちろんさ。お兄ちゃんが約束破ったことあるか?」
すると、二人にぎゅっと足元にしがみつかれる。
泣くかと思ったら……顔を上げて笑顔を見せてくれる。
「……いってらっしゃい、お兄ちゃん!」
「うむ! 行ってくるのじゃ!」
「ああ、行ってくる。父上と母上を頼んだぞ」
「おいおい、まだまだ若いっての。そうだ! もう一人くらい作るか!」
「も、もう! 何言ってるのよ!」
……自分の子供を作る前に、弟か妹が出来てそうだ。
「アレス様」
「カイゼル、片腕のお前には悪いが……」
「いえ、片腕さえあれば充分かと。アレス様不在中の守りはお任せを」
「ああ、カイゼルなら安心だ……俺が子供を連れてくるまで死ぬなよ?」
「クク……それは死ねない理由ができましたな。ええ、この腕に抱く日を楽しみにしております」
「……それじゃあ、みんな……元気でな!」
俺は、振り返らずに背を向けて歩き出す。
……そうしないと、もう涙を堪えるのが限界だったから。
その後、人目を避けるように門の入り口に行き……。
ブリューナグ家の紋章が刻まれた馬車に乗り込む。
もう一台の馬車には、中村君と結衣が乗っているはずだ。
「待たせたな、三人とも」
「いえいえ~」
「カグラちゃん、お願い」
「うむ! 行くのだ!」
そして、ゆっくりと馬車が走り出し……生まれ育った場所を出て行く。
「………」
「アレス様……」
「御主人様……涙が出て……」
「いや、すまん……さっき拭いたばかりなんだが」
俺は二人から目を背け、外の景色を眺める。
以前、グロリア王国に行った時とはまた違う。
今回はいつ帰ってこれるかわからない。
未知の世界に行くということは危険との隣り合わせ。
ワクワクと寂しいという気持ちが混同する。
だが、俺とて一人立ちしないとな。
今日は、俺が成人になった日なのだから。
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