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最終章

ターレス

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……強い。

女神の力が、どうとかではない。

速さ、膂力、体力、器用さ、その全てが高い水準にある。

この老人のどこに、そんな力が……。

やはり、長年この国を支配してきた男ということか。

「クク、若いのに随分と鍛えてるな。流石はカイゼルの愛弟子よ」

「そっちこそ、じいさんのくせに体力あるな」

先程から剣を交えているが、あちらも疲れた様子はない。
それも、聖女の血が関係しているのか?

「私はカイゼルのように酷使していないからな。使うべき時にだけ使う、そうすれば早々衰えはしない。そもそも、私はまだ若い」

「……意外とそこを気にするのか」

今、明らかに顔つきが変わった。

「……私とてただの人間ということだ。老いは恐ろしいし、自分がいざという時に成し遂げる力がなかったら悔やむくらいにはな」

「それをきいて安心した」

「クク、お主は達観しておるな? やはり、一度死んでいるからか?」

「どうだろうな、一度試してみるか? 今なら俺が味あわせてやるが」

「ははっ! 愉快だ! やはり、お主との会話は良い。私を前にすると、誰もが畏怖するものでな。こうして啖呵をきってくるお主との会話は心地いいものよ」

「持っている力はともかく、色々と怖い人たちは知ってるんでね」

前世でも怖い思いは色々した。
営業先がヤのつくところだったり。
ヤクザなんか目じゃないくらい怖い社長や会長クラスのご老人とか。

「ふむふむ、なるほど……さて、どうやら私一人になったようだな」

「なに? ……みんな無事だったか」

振り返ると、ライル兄上とゼト、結衣を除くみんなが揃っていた。
しかし……皆、疲労困憊の様子だ。

「クク、どうする? 全員でかかってくるか?」

「いや、良い。お前に大事な人を殺させるわけにはいかない……と言いたいところだが、納得しない子がいそうだ」

俺の両隣にカグラとオルガが立つ。
それも、俺よりも少し前に出て。

「もちろんなのだ! こればっかりは聞けないのだ!」

「右に同じく。僕も、貴方と共に戦います。命令違反上等ですから」

「後ろの二人もそうか?」

セレナとアスナに問いかける。

「私はセレナさんの護衛に徹しますよ~。流石に足手まといなので」

「補佐はわたしに任せてください!」

……やれやれ、皆疲れているだろうに。
本当に、良い仲間を見つけた。
だが、俺は彼らに死んでほしくない。

「わかった。ただ一つだけ言う——死ぬことは許さん」

「「「「「はいっ!!!」」」」」

そして、決める。

彼らを死なせないために、場合によっては切り札を切ることを。
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