220 / 257
最終章
真実の一端
しおりを挟む
とある世界に神が二体。
片方は表の世界の神、片方は裏の世界の神。
それぞれ主神より任され、世界を見守っていた。
しかし、とある時……表の世界の神に異変が起きる。
神とは人々の信仰によって成り立っている。
自分の存在を保つ術であり、力の源でもある。
人々の信仰が薄れ、次第に力を失っていった。
表の神は焦った……このままでは、いずれ消えゆくと。
神である自分が消え去るなど、耐えられないと思ったのだろう。
そして、裏の世界の神を頼ることにする。
裏の世界の神は、まだまだ力を持っていたからだ。
それこそ、現世に干渉できるほどに人々の信仰を持っていた。
表の神はそこに目をつけた。
表の世界では文明が発達し、今更力を取り戻すことは不可能だった。
故に、裏の世界の一部を借りて、そこで信仰を募ると。
いずれは回復し、元の世界に帰ると。
裏の神は承諾し、一つの大陸を与えることにする。
「……それが、この大陸だと?」
「おそらくな。だから、この世界にはまだまだ大陸があるはずだ」
「どうして、お前は知っている?」
「全てを知ってはいない。ただ、私の一族は……ここではない世界の者の末裔だ。故に、代々受け継がれてる情報はある。それらを繋ぎ合わせれば……そこまで間違ってはないはずだ」
……ここではない世界?
信仰が薄れる……文明が発達……そういうことか?
表の世界というのは、前世の俺が元々いた世界のことか?
そして、今世の俺がいる世界こそが……裏の世界。
「二つの世界は何らかの繋がりを持っている。故に、世界の壁を越えることが可能?」
「さすがに理解が早い。転生する前は、あちらの世界にいたのだろう?」
「知っているのか」
「無論だ。それを知った時から——私は決めた」
「なに?」
「いや、なんでもない……どんな世界だ?」
「なんてことないさ。人々は醜い争いをしてるし、善なる者は損をする。上に立つ者は腐り、下にいる者達は搾取される」
「どこの世界も同じということか」
「ああ——勇気ある者が立ち上がって歴史を作ることもな」
あの世界とて、今は停滞しているが……。
昔からそうだったわけじゃない。
一部の勇敢なる人たちが、今の歴史を作り出した。
だから、今日の俺たちがいた。
そのことに感謝せず、のうのうと生きているやつが多いがな。
「なるほど……私が悪で、お前が善か」
「いや、どっちでも良い。それを決めるのは……俺たちじゃない」
「クク……そうだな」
「ただ言えることは、俺は善なる者ではない。俺は自分が生き残るために戦う。大事な人たちと、この先を生きていくために戦う……そんな自己中な人間だ」
女神に従って生きている方が幸せだったという者もいるだろう。
ただ流されるままに生きること……それを否定はしない。
だが、俺は……自分の意思で生きたい。
魔王であり邪神の使徒と呼ばれる俺は、今のこの世界においてはいてはいけない存在。
ならば……この世界の理が、俺を否定するというなら……その理を覆すまでだ!
片方は表の世界の神、片方は裏の世界の神。
それぞれ主神より任され、世界を見守っていた。
しかし、とある時……表の世界の神に異変が起きる。
神とは人々の信仰によって成り立っている。
自分の存在を保つ術であり、力の源でもある。
人々の信仰が薄れ、次第に力を失っていった。
表の神は焦った……このままでは、いずれ消えゆくと。
神である自分が消え去るなど、耐えられないと思ったのだろう。
そして、裏の世界の神を頼ることにする。
裏の世界の神は、まだまだ力を持っていたからだ。
それこそ、現世に干渉できるほどに人々の信仰を持っていた。
表の神はそこに目をつけた。
表の世界では文明が発達し、今更力を取り戻すことは不可能だった。
故に、裏の世界の一部を借りて、そこで信仰を募ると。
いずれは回復し、元の世界に帰ると。
裏の神は承諾し、一つの大陸を与えることにする。
「……それが、この大陸だと?」
「おそらくな。だから、この世界にはまだまだ大陸があるはずだ」
「どうして、お前は知っている?」
「全てを知ってはいない。ただ、私の一族は……ここではない世界の者の末裔だ。故に、代々受け継がれてる情報はある。それらを繋ぎ合わせれば……そこまで間違ってはないはずだ」
……ここではない世界?
信仰が薄れる……文明が発達……そういうことか?
表の世界というのは、前世の俺が元々いた世界のことか?
そして、今世の俺がいる世界こそが……裏の世界。
「二つの世界は何らかの繋がりを持っている。故に、世界の壁を越えることが可能?」
「さすがに理解が早い。転生する前は、あちらの世界にいたのだろう?」
「知っているのか」
「無論だ。それを知った時から——私は決めた」
「なに?」
「いや、なんでもない……どんな世界だ?」
「なんてことないさ。人々は醜い争いをしてるし、善なる者は損をする。上に立つ者は腐り、下にいる者達は搾取される」
「どこの世界も同じということか」
「ああ——勇気ある者が立ち上がって歴史を作ることもな」
あの世界とて、今は停滞しているが……。
昔からそうだったわけじゃない。
一部の勇敢なる人たちが、今の歴史を作り出した。
だから、今日の俺たちがいた。
そのことに感謝せず、のうのうと生きているやつが多いがな。
「なるほど……私が悪で、お前が善か」
「いや、どっちでも良い。それを決めるのは……俺たちじゃない」
「クク……そうだな」
「ただ言えることは、俺は善なる者ではない。俺は自分が生き残るために戦う。大事な人たちと、この先を生きていくために戦う……そんな自己中な人間だ」
女神に従って生きている方が幸せだったという者もいるだろう。
ただ流されるままに生きること……それを否定はしない。
だが、俺は……自分の意思で生きたい。
魔王であり邪神の使徒と呼ばれる俺は、今のこの世界においてはいてはいけない存在。
ならば……この世界の理が、俺を否定するというなら……その理を覆すまでだ!
14
お気に入りに追加
2,747
あなたにおすすめの小説
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
その聖女は身分を捨てた
メカ喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。
その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。
そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。
魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。
こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。
これは、平和を取り戻した後のお話である。
子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
このステータスプレート壊れてないですか?~壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活~
夢幻の翼
ファンタジー
典型的な社畜・ブラックバイトに翻弄される人生を送っていたラノベ好きの男が銀行強盗から女性行員を庇って撃たれた。
男は夢にまで見た異世界転生を果たしたが、ラノベのテンプレである神様からのお告げも貰えない状態に戸惑う。
それでも気を取り直して強く生きようと決めた矢先の事、国の方針により『ステータスプレート』を作成した際に数値異常となり改ざん容疑で捕縛され奴隷へ落とされる事になる。運の悪い男だったがチート能力により移送中に脱走し隣国へと逃れた。
一時は途方にくれた少年だったが神父に言われた『冒険者はステータスに関係なく出来る唯一の職業である』を胸に冒険者を目指す事にした。
持ち前の運の悪さもチート能力で回避し、自分の思う生き方を実現させる社畜転生者と自らも助けられ、少年に思いを寄せる美少女との恋愛、襲い来る盗賊の殲滅、新たな商売の開拓と現実では出来なかった夢を異世界で実現させる自由気ままな異世界生活が始まります。
他人の人生押し付けられたけど自由に生きます
鳥類
ファンタジー
『辛い人生なんて冗談じゃ無いわ! 楽に生きたいの!』
開いた扉の向こうから聞こえた怒声、訳のわからないままに奪われた私のカード、そして押し付けられた黒いカード…。
よくわからないまま試練の多い人生を押し付けられた私が、うすらぼんやり残る前世の記憶とともに、それなりに努力しながら生きていく話。
※注意事項※
幼児虐待表現があります。ご不快に感じる方は開くのをおやめください。
ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~
碓氷唯
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる