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最終章

先手

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 城内を進んでいると……。

「待て! ……そこにいるのは誰だ?」

 物陰から一人の男が現れた。

「お前は……」
「ど、どうも……」
「全員下がってろ。俺が話をする」

 皆を待機させ、そいつに近づいていく。

「勝手に出てきたのか?」
「い、いえ、ライル様が味方の兵士達を解放する際に、一緒に解放させて頂きました。でも、どうしていいか分からず、ずっと隠れてて……でも、アレス様が来たって話を聞いて……し、信用できないですよね?」

 さて、どうする?
 今は一人でも戦力が欲しいところだ。
 信用は出来ないが……変わりたいと言ったことを信じるとしよう。

「完全には無理だ。だが、出てきた以上……戦う気はあるってことか?」
「……はいっ! 俺にできることがあるなら!」
「わかった、ではついてこい」



 そいつを連れ、再び玉座の間に向かう。

 それにしても……場内には敵しかいないのか?

 先ほど、兄上が味方の兵士達を解放したと言った。

 しかし、味方らしき人たちが見当たらない。

 まさか、全員やられてしまったのか?




 そして、玉座の間に近づくと……。

「主人殿! 敵が退いていくのだ!」
「なに? いや……なるほど、逃がさないようにか」

 玉座の間の通路の両端には兵士達が溢れている。
 俺たちが中に入ったら、出ることは難しいだろう。

「どうします~?」
「問題ない——このまま突入する!」

 俺は闇のマントを展開して、姿を消しておく。

 カグラが先頭に立ち……その扉を開ける!

 その中では、六人が待ち構えていた。

 その中の一人にターゲットを絞り——駆け出す!

「来たか……ん? アレスがいない? なるほど、消えているのか」
「闇のマントですか……ふっ、今更ですね——私には通用しませんよっ!」

 ターレスの側近が、接近してきた俺に剣を向ける!
 その剣は、俺の刀と交わり……闇が解け始める。

「ふふ、闇に乗じての先制攻撃とは考えましたが……」
「やれ」
「なっ!?」

 闇が解け——もう一人の男が姿を現す。

「敵を貫け——アースランス!!」
「ガァァ!?」

 土の槍は、右に避けようとしたハロルドの左腕を貫いた。

「く、くそっ! 仕留められなかった!」
「上等だ——ロレンソ。これで、あいつの戦力は半減する。あとは、オルガに任せよう」

 そう、先ほどあった人物こそがロレンソ-ハデスだ。

 以前の騒動の時に死刑を免れて、牢屋に入れられていた。

 そして、俺に恩義を感じている彼は、勇気を出して戦いに参加すると言った。

 あの時、助けるか迷ったが——これにて先手はもらった。
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