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最終章

決戦前

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 ターレスに聞いた話をしつつ、カイゼルが目を覚ますのを待っていると……。

「うっ……」
「カイゼル!」
「……アレス様?」
「良かった……本当に」
「これは……夢ですかな? 私は死を覚悟して……」
「そう簡単に死なせてやるものか」

 カイゼルが起き上がろうとするが……。

「……私の手がない?」
「……すまん、斬ったのは俺だ。お前の動きを止めるために、そして正気に戻すために」
「そうですか……アレは夢ではなかったと。いえ、ありがとうございます。私は主君を殺さずにすみました……ですが、主君に剣を向けるとは切腹モノですな」
「そう言うと思ったよ。だから——腕一本で許してやる」

 その可能性は考えていた。
 きっと、カイゼルならそう言うと。

「……ははっ! こいつは1本とられましたな! それでは……自害することはかないませんな。まだ、先帝陛下には会えそうにないと」
「そんなことは許さん。カイゼルには、俺の子供を抱いてもらわないと」
「……この片腕にも、まだ役目があるということですな」
「ああ、大事な役目だ」
「……楽しみです……な」

 そういい、再び眠りにつく。
 これで、ひとまず死ぬことはないだろう。



 すると……それまで見守っていた仲間たちが近づいてくる。

「御主人様、この後はどうしますか~?」
「無論、ターレスを仕留める」
「でも、アレス様。カイゼル様はどうしますか? わたしが残るとか……」
「むぅ……難しい問題なのだ」
「確かにそうですね……僕が残るのもありかと」

 問題はそこだ。
 この状態のカイゼルを放っておくわけにはいかない。
 傷を癒したとはいえ、体力も落ちている。

「じじゃーん! そんな時は先生にお任せあれ!」
「「「「「コリン先生!?」」」」」
「……誰?」

 突然現れたその人は、俺たちの担任だったコリン先生に間違いない。

「先輩! 今まで何処にいたんです!?」
「ごめんねー! セレナちゃん! 私もさっき起きたばっかりで!」
「とりあえず、端的に説明してもらえますか? こちらもしますので」
「あら、相変わらず冷静ね。じゃあ、わたしから……」

 話を聞いてみると、コリン先生はカイゼル達が父上達を逃がす時間を稼いだと。
 挟み撃ちをされぬように、ターレスの私兵を押しとどめていたと。
 ただ、魔力切れを起こし、潜伏先で気を失っていたということらしい。


 こちらのことも、簡単に説明する。

「なるほど……ターレスが……」

「コリン先生、カイゼルのこと頼めますか?」

「行くのね?」

「ええ、決着をつけに」

「情けないわね……子供に押し付けてしまうなんて」

「大丈夫ですよ、もう皆成長してますから」

「……そうね、みんな大きくなったもんね。じゃあ、先生に任せて行ってらっしゃい!」

 俺たちは顔を見合わせて、力強く頷く。

 これで後顧の憂いはない。

 全戦力でもって、ターレスに挑むだけだ。
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