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最終章

葛藤

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ひとまず結衣を説得した俺が、カグラ達の元に向かうと……。

「主人殿!」

「やったんですねー」

「勇者は?」

「……すまないのだ」

「逃げられちゃいましたねー」

「そうか、仕方あるまい。オルガは……来たか」

こちらに歩いてくるのが見える。
どうやら、みんな無事なようだ。

「主君よ、申し訳ありません。奴を逃してしまいました」

「いや、気にするな。ハロルドは強い。それを抑えてくれたなら上出来だ」

「いえ、次こそは仕留めます——僕に任せてくださいますか?」

「……わかった。俺は手出ししないから、お前に任せよう。だが、やるからには——勝つことを約束しろ」

「御意」

今のオルガなら、任せても平気そうだ。
俺は俺で、やることがある。

「アレス~!!」

「ぐはっ!?」

気がつくと、後ろから羽交い決めにされていた!

「ひ、ヒルダ姉さん!? 無駄に気配を消さないでください!」

「いやよ! アレスの驚く顔が好きなんだから!」

「ええぇ……なんですか、それ」

「それより、良くやったわね。流石、私の弟ね」

「ええ、どうにか。ですが、これからが問題です」

どうして良いか分からず、オロオロしている結衣に視線を向ける。

「結衣、ここにいる連中は信用して良い。今世での、俺の大切な人たちだ」

「そ、そう……」

「あぁー……すまんが、皆」

俺の言葉に黙って頷き、みんなが先に歩いていく。

「気を遣わせちゃった……言わなくてもわかる人たちなんだね?」

「ああ、そうだ……ん? 何か違和感がある……」

「だ、だって、貴方は和馬さんの生まれ変わりなんでしょ? なら、見た目はともかく年上じゃない」

そうか……俺が知っている結衣の喋り方になったのか。

「なるほど、それは言えてるな」

「中身は全然違うけど。和馬さんは、二股とかしないもん。いや、三股? それに、女の子ばっかり」

「ぐっ……それを言われると痛いなぁ」

結衣に異世界の常識を教えたところで、その気持ちが解消されるわけでないし。
俺自身も、最初の頃は悩んでいたし。

「だから……貴方は和馬さんじゃない」

「ああ、それだけは間違いない。和馬はあの時……結衣をかばって死んだんだ」

「うん……でも、一言だけ言わせて——和馬さん! あの時私を助けてくれてありがとうございます!」

「……ああ」

俺の中の和馬が、激しく揺さぶられる。

何故、今すぐに抱きしめに行かないのかと。

だが、それはだめだ。

アレスである俺が、結衣の人生を縛ってしまうわけにはいかない。

彼女には、帰るべき場所があるのだから。
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