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最終章
ターレス視点
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……ふむ、そろそろか。
アレスならば、あの程度存在なら跳ね返すだろう。
不思議と、そのことを疑う余地はない。
やはり、女神という存在をこの目で見たからだ。
実際にあってみれば、大したことはない。
確かに神器アスカロンは厄介だが……私にはアレがある。
アレスが弱らせれば……いけるか。
「どうやら、ライルが皇都を制圧したようです」
「そうか。まあ、無駄なことだ。これから、私のモノになるのだから」
「……では、いよいよ行動を開始するのですか?」
「うむ……退屈しのぎは終わりだ。ようやく、女神とやらも出現して楽しくなると思ったら……ただ踏ん反り返って、いいとこ取りをする普通の行動しかせん——つまらん。すぐに退場を願おうか」
「御意。では、手配を済ませてまいります」
「ああ、手配は任せよう」
側近が出て行った後、別宅の窓から外を眺める。
私は忠実なる女神の僕ではない。
教皇から受けた命……龍神の一族を殺すというのも、実行しなかった。
むしろ、興味を持った。
そいつらが神を殺す刀を作ると知ったから。
と言っても、女神や教皇に逆らうつもりもなかった。
ただ……何となく、そっちの方が面白いと思った。
「本当は聖女の血を流す者として、大人しく教皇や女神に従う道もあったのだが……龍神の眷属を殺し、完璧に民に女神を信仰させることも」
結果的に、私は宙ぶらりんな状態になった。
「我が一族はフラムベルク皇家を追い出し、アスカロン帝国を建てた。そして、裏から帝国を操ることを代々受け継いできたが……私のやることなど、ほとんどないに等しい。初代のように、面白いことはできていない」
ほどほどに仕事をこなし……任務をこなすつまらない日々だった。
しかし、アレスという存在に会って考えが変わった。
あの時、少年の彼が、私に挑戦してきた時から。
「いくら龍神の使徒とはいえ、転生しているとはいえ、私に挑んできたことは称賛に値する」
あの機転の良さ、私の落とし所を見つける頭。
私やその他の者達の前での、堂々たる姿。
憎んでいるあろうヒルダの母を許す、その鋼の心。
「クク……あんなのを見せられては、楽しくなってしまうではないか——私の中の燻っていた想いが、蘇ってしまう」
この退屈な生を、潤してくれる存在を。
私に、生きていることを実感させてくれる存在を。
「アレスよ、お主ならあの女神ごときにやられはしまい?」
いや、そうでなくてはいけない。
もっと、もっと、私を楽しませてくれ。
私と——殺し合おうではないか。
アレスならば、あの程度存在なら跳ね返すだろう。
不思議と、そのことを疑う余地はない。
やはり、女神という存在をこの目で見たからだ。
実際にあってみれば、大したことはない。
確かに神器アスカロンは厄介だが……私にはアレがある。
アレスが弱らせれば……いけるか。
「どうやら、ライルが皇都を制圧したようです」
「そうか。まあ、無駄なことだ。これから、私のモノになるのだから」
「……では、いよいよ行動を開始するのですか?」
「うむ……退屈しのぎは終わりだ。ようやく、女神とやらも出現して楽しくなると思ったら……ただ踏ん反り返って、いいとこ取りをする普通の行動しかせん——つまらん。すぐに退場を願おうか」
「御意。では、手配を済ませてまいります」
「ああ、手配は任せよう」
側近が出て行った後、別宅の窓から外を眺める。
私は忠実なる女神の僕ではない。
教皇から受けた命……龍神の一族を殺すというのも、実行しなかった。
むしろ、興味を持った。
そいつらが神を殺す刀を作ると知ったから。
と言っても、女神や教皇に逆らうつもりもなかった。
ただ……何となく、そっちの方が面白いと思った。
「本当は聖女の血を流す者として、大人しく教皇や女神に従う道もあったのだが……龍神の眷属を殺し、完璧に民に女神を信仰させることも」
結果的に、私は宙ぶらりんな状態になった。
「我が一族はフラムベルク皇家を追い出し、アスカロン帝国を建てた。そして、裏から帝国を操ることを代々受け継いできたが……私のやることなど、ほとんどないに等しい。初代のように、面白いことはできていない」
ほどほどに仕事をこなし……任務をこなすつまらない日々だった。
しかし、アレスという存在に会って考えが変わった。
あの時、少年の彼が、私に挑戦してきた時から。
「いくら龍神の使徒とはいえ、転生しているとはいえ、私に挑んできたことは称賛に値する」
あの機転の良さ、私の落とし所を見つける頭。
私やその他の者達の前での、堂々たる姿。
憎んでいるあろうヒルダの母を許す、その鋼の心。
「クク……あんなのを見せられては、楽しくなってしまうではないか——私の中の燻っていた想いが、蘇ってしまう」
この退屈な生を、潤してくれる存在を。
私に、生きていることを実感させてくれる存在を。
「アレスよ、お主ならあの女神ごときにやられはしまい?」
いや、そうでなくてはいけない。
もっと、もっと、私を楽しませてくれ。
私と——殺し合おうではないか。
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