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最終章

女神戦その三

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 ……今の俺の肉体が、この刀の全力に耐えられるのは一回が限度。

 ならば、その一刀に全てを賭けるだけだ。

「ふふ、覚悟はいいですか?」

「ああ、出来ている——貴様を斬るという覚悟が」

 こいつを倒せなくても良い。
 今の俺で、少しでもダメージを負わせることができれば……。

「……口の減らない男ですね——では、確実な死を」

 奴から、いや……アスカロンがまばゆい光を放つ。

「貴方に神器の力を使う予定はなかったんですけどねぇ……シネェェ!!」

「っ~!!」

 直感的に左に体を動かす!

(パパ!?)

(へ、平気だ! 服にかすっただけだ!)

 ……なんだ? 何が起きた?

 相手は一歩も動いていないのに、俺の服が破けた?

「避けましたか……ですが」

 よく見ろ……! 敵の手元を……! 初動を感じ取れれば……!

「いつまで続きますかね?」

 次の瞬間——奴の手元が光を放った。

(パパ——左!)

 その声に従い左に飛ぶ!

「勘がいいですね」

「……なるほど、そういうことか」

 クロスの声のおかげで、見ることに集中できた。
 どうやら、伸縮自在な槍と化しているようだ。

「おや?」

「その場から一歩も動かずに、槍を伸ばして攻撃できるってわけか」

「よく気づきましたね。ですが、気づいたところでどうしようもないですが」

 奴の言う通り……戦いにおいて、圧倒的なリーチの差は埋めようがない。
 しかし……要は戦い方次第だ。
 槍に勝つために人生を費やしたカイゼル……その弟子として、負けられん。

(クロス、お前に任せて良いか?)

(うん! 僕も役にたつよ! それにセレナも言ってたけど、パパの悪い癖だよ! もっと、みんなを信じて頼って!)

(……ああ、そうだな。お前を守るというのは傲慢だった)

(じゃあ、攻撃は任せるからね!)

「作戦会議ですか? そうはさせません!」

「ちっ!」

(右! 左! 左! 左! 右!)

 クロスの声を信じて、光の槍を避け続ける!



 そして避け続けること数分……。

 よし……目が慣れてきた。

 これなら、どうにかできるか?

「しぶといですねぇ!」

「良いのか? そんなに力を使って。俺はこうして避け続けるだけで、貴様の力とやらを使わせてやる」

 俺とて言うほど余裕はない……しかし、こいつもにも制限や焦りはある。
 女神だが何だが知らないが、完璧な存在などいるわけがない。

「……ニンゲンフゼイガァァァ!!」

 くる! よく見ろ!

 迫り来る槍を右に半歩ずれて、紙一重で躱し……。

 闇をまとった左手で……槍を掴む!

 そして奴が槍を戻す力を利用し、一気に間合いを詰める!

「——なっ!?」

「神を殺せ——黒炎刃!!」

 右手で魔刀を振り抜き、闇の炎刃を——解き放つ!

 それは奴の胴体に亀裂を与える!

「ぁぁぃぁぁぎぁぃぃ!?」

「人間を舐めるなよ」

「オ、おのれぇぇえぇぇ!?」

 俺を睨みつつも、奴がその場から去っていく。

 追い討ちをかけたいが……今は、あっちが優先だ。
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