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最終章

セレナの戦い

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 少し戦場から離れた場所では、二人の少女が対峙していた。

「目を覚まして!」

「………ホーリーランス」

 セレナの問いかけも虚しく、光の槍が飛んでくる。

「セレナ! よくやってくれた! 俺と交代しろ!」

 俺が前に出ようとすると……。

「来ないでください!」

 厚い水のバリアを張り、上位互換である光魔法を無理やり防ぐ。
 圧倒的な魔力量を誇る、セレナだから可能な技だ。

「お前では無理だ! 光魔法に対抗できるのは闇だけだ!」

「へ、平気です! わたしだって、サボってたわけじゃないんです!」

 次の瞬間——結衣の両手から光が溢れる。
 その魔力量は凄まじく、威力は考えるまでもない。

「まずい——セレナ! 俺の言うことを聞け!」

「いやです!」

「……へっ?」

 ここまではっきり言われたことのない俺は……思わず固まってしまう。
 何だかんだ言って、セレナは俺に強くモノを言うことはなかったから。

「光の雨よ、全てを飲み込め——シャイニングレイ」

「 風よ! 水よ! 混ざり合い奔流と化せ——アクアトルネイド水の螺旋!!」

 上から降ってくる光の雨と、下から発生した水の竜巻が激突する!

「ま、負けない——きゃっ!?」

「くっ——シャドーワープ!」

 セレナの影から飛び出して、しっかりと受け止める。

「へ、平気か?」

「は、はい……でも、見てましたよね?」

「ああ……見事だ」

 吹き飛びはしたが、きちんと相殺した。
 結衣の方は信じられないのか……呆然としている。

「えへへ……わたしだってやれるんですよ? だから……」

 俺の頬に柔らかいモノが触れる。

「セレナ?」

「わたし達を頼ってください。アレス様は一人じゃないんですから。そのために、わたし達は強くなったんですよ? カグラちゃんも、オルガ君も……まあ、アスナさんもですけど」

「……そうか。俺は独りよがりだったか。結衣のことを笑えないな……周りが見えてないのは俺の方だったか」

「ふふ、アレス様の悪い癖ですよ? 全部、自分で抱え込もうとして」

「……かもしれないな。わかった、結衣はセレナに任せる」

俺が救ってやるなんて傲慢だった。
そうだ……俺には頼りになる仲間たちがいる。
この今世で出会った、大切な人達が。

「はい! 任してください! それに……ムカついてるんですよね」

「ん?」

「アレス様があんなに真剣に考えてあげてるのに、全然話聞かないし……今も、こうして大人しく操られているし……」

「ま、まあ、結衣は結衣なりに……」

「いえ、これは女の戦いです」

 あっ、ブラックセレナモードだ。

「そ、そうか」

「アレス様は、アレをお願いします。なので、ここで力を使ってはダメです」

「……ああ、わかった」

 視線の先には……いつの間にか、女神が立っていた。

 確かに、アレの相手をできるのは俺だけだろう。

 俺は後ろを振り返らず、前へと向かうのだった。
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