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最終章

結衣と俺

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ひとまず敵を追い返した俺たちは、領地の前線基地へと帰還する。

民は、これより後方に避難誘導ができている。

逆を言えば……ここを突破されれば、無辜の民が犠牲になるということだ。

「さて、ひとまず敵を追い返した」

「ええ……」

「ふむ……何やら、事情があるようだ。戦況やその他のことは我々に任せると良い。お主は、少し休むと良い」

「そうですよ、アレス殿。私は戦ってませんし、後のことはお任せください」

「ありがとうございます……あとで、きちんとお話ししますから」

俺自身、いまだによくわかっていない。
いや……わかりたくないが正解か。
結衣が聖女で、俺の敵ということが。




その後、外に出て、丘の上に立っていると……。

「主人殿!」

「アレス様!」

カグラやセレナ、アスナやオルガが駆け寄ってくる。

「皆……」

「アレですよね? 前世の話ですかー?」

「そうだと思ったので、レナさんやエリカさんは、エレナ様とカエラに預けてきました」

確かに、レナやエリカは俺が前世の記憶があることを知らない。
知らせても良いが、混乱させるだけだ。

「助かる。ふぅ……少し話を聞いてもらえるか?」

皆が顔を見合わせて、黙って頷く。

「ありがとう。さっきいた聖女……彼女の名前は、清水結衣——前世での俺の従姉妹で、俺の妹のような存在だ」

「それはエリカちゃんのような?」

「……いや、言い訳はよそう。妹であり……俺の好きだった子かもしれない。と言っても、気づいたのは死んでからだが」

振り返ると、カグラとセレナが不安な表情を浮かべた。

「だが、安心してくれ。和馬は、確かに結衣が好きだった。しかし、アレスである俺は……セレナ、カグラ、君たちを愛している。それは嘘じゃない」

「は、はぃ……」

「あぅぅ……良かったのだ」

そうだ、今の俺は和馬じゃない。
だから、ある意味で……結衣の言ってることは正しい。
俺は和馬の記憶と魂を持っているが、あくまでも俺自身はアレスだと。

「アレ? 私はー?」

「お前は……うん、頼りにしてる」

「むぅ……まあ、今は良いですけどね~私は愛人枠ですし」

「まあまあ、アスナさん。それでも……大事な人なんですね?」

「ああ、それは間違いない。俺は、彼女を殺したくはない——殺せるわけがない」

和馬は、彼女に救われた。
あの子が、俺を家族にしてくれた。
おじさんやおばさんはもちろんだが、その娘である彼女が受け入れてくれたから……。
そのおかげで、両親を亡くしたけど……俺が孤独になることがなかった。


「むぅ……難しいのだ。でも、なんとかするのだ」

「敵意むき出しだったもんね。でも、やるしかないよね」

「御主人様を完全に敵と見なしてましたねー。さて、どうしますかね」

「そうなると、それを救うには……」

「……みんな……」

俺の個人的な願いに、みんな当たり前のように賛同してくれている。

俺は……前世でも、今世でも、恵まれているな。
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