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最終章

人と人の繋がり

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 その後、義兄さんとエラルド殿だけ先に部屋に入り……。

 疲労したセレナとカエラを、カグラとアスナが部屋に送っていき……。

 その後、少し待って……俺たちも部屋に入る。

「わぁ……! 可愛い!」

「可愛いのじゃ!」

「ああ、そうだな。姉さん、お疲れ様」

 ヒルダ姉さんの隣には、小さな命が眠っている。
 どうやら、男の子らしい。

「ふふ……ありがとう、アレス……貴方が生まれた時を思い出すわ」

「そ、そうですか」

「そうよー。アレスったら可愛くてね」

「母上!」

「あらー、いいじゃない。今は婚約者達もいないし」

「いや、妹がいますし……」

「お兄ちゃんも、こんなだったの?」

「そうよ、エリカ。小さくて可愛くて……あれほど嬉しかったことはないわ」

「……そりゃ、どうも」

「師匠、照れてるのじゃ!」

 俺は黙って、レナの両ほっぺを伸ばす。

「なにひゅるのじゃー!?」

「そういうことは突っ込んではいけません」

「むぅ……」

「ふふ……ほら、エリカにレナ。もっとこっちに来て、この子を見てあげて」

 姉さんがそう言うと、二人が恐る恐る近づいていく。

「ほら、触ってちょうだい」

「「い、いいの?」」

「ええ、もちろんよ。貴方達の弟だもの」

「弟……えへへ! 」

「ふえっ!? わ、私は他人だし……」

「関係ないわ。アレスの弟子なら身内も同然だし。何より、私が決めたわ」

「ひ、ヒルダさん……」

 ……もしや、俺が姉さんに話したからかもしれない。
 彼女の事情を……母親もいない、信頼していたメイドに裏切られたことを。

「あら、ダメじゃない。きちんと、姉さんって言わないと。あっ、でもアレね。きちんとお兄さんに許可を取らないとね」

「平気ですよ、ヒルダ。ロナード殿は気にしないかと。ねっ、アレス殿」

「ええ、義兄さん。あの人は器の大きい方ですから」

 俺に代わって妹を守って欲しいと、年下の俺に頭を下げてきた男だ。
 そして、国を救ってくれた恩を返すと。
 そして、今回……俺の味方になってくれると言ってくれた。

「じゃあ、わたしのお姉ちゃんだね!」

「エリカ……ありがとぅ……えっと、ヒルダお姉ちゃん……」

「レナ、よろしくね。この子のこともね。カイルって呼んであげて」

「う、うん! カイル……」

「カイルかぁ~えへへ! よろしくね!」

 俺は、その光景を見ながら涙が出そうになる。

 それを堪えつつ……。

「二人とも、そろそろ部屋に帰ろう。姉さんも疲れてるし、二人もとっくに寝る時間だ」

「「うん!」」

 二人を母上に任せ……。

 その後、エラルド殿や義兄さんも部屋を出て行く。

 体力が残っている俺は部屋に一人残り、今日は寝ずの番をすることになっている。

 お付きのメイド達もいるが、姉さんが俺にいて欲しいと願ったからだ。




 そして、それから数時間後……夜が明けてきた。

「アレス? 」

「姉さん? どうしたの?」

「ふふ、いてくれたのね。もっと、こっちにこれる?」

 俺は赤子を起こさないように、静かに近づく。

「どうしたのですか?」

「ううん、顔が見たかっただけ」

「そうですか……姉さん、ありがとうございます。レナやエリカのこと」

「……だって、私が嬉しかったから」

「えっ?」

「エリカが生まれた時……貴方が私に言ってくれたわ。この子のお姉ちゃんになってくれませんかって……私、あの時ほど嬉しくて泣いたことない」

「姉さん……」

「あら、ちょっと語弊があるかも。そうね、今日と同じくらい嬉しかった」

 そう言い、赤子をそっと撫でる。

「だからエリカはもちろん、可愛がってるレナにも同じようにしてあげたかったのよ。エレナ様には本当の娘のように可愛がってもらって、同い年のカエラも沢山遊んでくれて……私が、そうしてもらって……救われたから。私には、血が濃くなくても家族がいるんだって」

「…………」

「ふふ、どうしてアレスが泣くのよ?」

「す、すみません……」

「仕方ない子ね。良いわ、頭を撫でてあげる」

 俺は姉上に撫でられながら思う。

 貴方に救われたのは、俺の方ですと……。
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