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最終章

未来への希望

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 それから、数週間経ったが……。

 不気味なほどに静かな日々が続いていた。

 それが嵐の前の静けさなのかはわからない。

 ただ、一つだけ良かったことがある。

 それは……。




「アァァァァ!! イイイィヤァ!」

 部屋の中から、叫び声が廊下まで聞こえてくる。

「ど、どうしよう!?」

「義兄さん、落ち着いてください」

 いつもは冷静な方だが、流石に慌てた様子だ。
 本人は辛いだろうが、少し安心した面もある。
 本当に、ヒルダ姉さんを愛しているということだ。
 そして……これから生まれようとしている子供のことも。

「し、しかし!」

「そ、そうだ!」

 ……ただ、予想外だった。
 まさか、その父親までテンパっているとは。

「エラルド殿も落ち着いてください。不幸中の幸いと言いますか、今はセレナがいます。彼女を超える水魔法の使い手を俺は知りません。なにせ、最年少の宮廷魔導師ですから」

「そ、そうだね」

「う、うむ」

 という俺も、少し焦ってはいる。
 ただ、二人がそれ以上にテンパっていること。
 セレナを信頼しているから、まだ落ち着いていられる。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん……大丈夫?」

「師匠、だ、大丈夫なのかな?」

 今度は小さい妹たちが、泣きそうな顔をしている。
 本人たちには、夜も遅いから寝たほうが良いと言ったが……。
 生まれるまで待つと言って聞かなかった。
 この短期間なのに、レナまでヒルダ姉さんに懐いてしまった。
 まあ、グロリア王族の中、一人だけ女の子だ……なつくのも無理もない。

「大丈夫だ。カエラは、エリカが生まれる時にも手伝ったからな」

「そうなの!?」

「そうだぞ。だから、安心して待ってると良い」

「う、うん!」

「わ、わかったのじゃ!」

 そう言い、二人は手を繋ぐ。
 この二人も、仲良くなったものだな。

「何より……ヒルダ姉さんを信じましょう。あの方が、これくらいでくじけるとでも?」

「「「「……………」」」」

 四人が顔を見合わせ……頷きあう。

「アレス様」

「オルガ?」

「今……静かになってませんか?」

「言われてみれば……」

 次の瞬間——ヒルダ姉さんではない泣き声が聞こえくる。

「う、生まれたのだっ! 母子ともに無事なのだ!」

「カグラちゃん! 待って! すぐに部屋を開けないで!」

「わわっ!? ごめんなさいなのだ!」

 そう言い、再び扉が閉まる。

「良かった! 本当に良かった!」

「ふむ……」

 そして、親子二人が自然と握手を交わした。

「お兄ちゃん!」

「師匠!」

「ああ、良かったな」

 泣きじゃくる二人を優しく抱きしめる。

 ふぅ……とりあえず無事に生まれてくれたか。

 先行きは不安だらけだが……。

 この未来への希望のためにも、この戦い——負けられないな。
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