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前世と今世が交わる時
胸騒ぎ
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あれから一ヶ月が過ぎ……。
状況も色々と変化してきた。
ザガンの父親は息子の罪により、爵位を剥奪され……。
もう再起不能の状態に陥った。
故に、放っておいても問題ない。
こちらの思惑通りに、宰相にはグングニル-モーリス殿がついた。
実直な人柄なので、無難といったところか。
このような状況下なので、少々不安ではあるが……。
少なくとも敵に回ることがないだけ安心ではある。
新たな大臣には、近衛騎士団長であるゼトさんの身内がついた。
これで、父上の地盤が整ったといっていいだろう。
あとは、皇太子であるライル兄上のために地盤をさらに固めることだ。
そして、然るべき時に……皇位継承を行うだろう。
ライル兄上は十六歳になったから、この世界では別におかしなことではない。
流石に今すぐというわけにはいかないが、数年の後に交代するかもしれない。
その時、父親はもう初老に近い……何より、本来なら戦う方が向いている父親だ。
慣れない責務によって、その疲弊度は凄まじい……。
早く、楽にさせてあげたいものだ。
母上やエリカとの時間を作ってもらい、楽しい時間を過ごしてもらいたい。
母上もエリカも、もちろん俺も……それを望んでいる。
そのためには……俺も頑張らないといけないな。
そして、今日も稽古に励む。
「ヤァッ!」
カグラが剣を振るうが……。
「遅い」
俺は半歩ずれ、最小限の動きで躱す。
「くっ! 当たらないのだっ!」
「カグラ、君は強い。おそらく、大多数の敵や大物相手には恐ろしい存在となるだろう」
躱しながらも、話を続ける。
「むぅ……」
「しかし、大振りするクセがある。一撃は恐ろしいが、躱すことも出来てしまう」
「そんなの、主人殿くらいなのだ」
まあ、確かに……暴風と共に振られる剣を恐れずに躱すのは困難だ。
しかし、俺が出会った聖騎士達……そして、ザガンの変身……。
これから、もっと手強い敵が出てくるかもしれない。
「ふっ、そんなでは頼ることはできないな」
「むぅ……」
「おしまいにするか?」
「いえ! やるのだっ!」
「そう来なくては」
カグラが剣を振るい、俺がカウンターを仕掛ける構図が続く。
もちろん、俺にも課題はある。
俺の剣がカグラに当たるが、傷一つついていない。
これはカグラの身体強化魔法が強力なのもある。
しかし、一番は俺の攻撃が軽いということだ。
もっと、一撃の威力を高めるか……。
それに頼るのもあれだが、強い武器が欲しいところだ。
「セァ!」
「甘いですな」
「わわっ!?」
アスナはカイゼルに稽古をつけてもらっている。
俺という主人に仕えるなら、今のままではダメだと。
本来なら弟子はとらないが……まあ、俺のためということだろう。
あとは、一応アスナのことを認めたということかも。
「ムゥ~! このおじさん、相変わらず隙がないです!」
「おじさん……ははっ! そうだっ! ワシごときの攻撃を掻い潜れないようでは、アレス様の役には立たん!」
「わかりましたよっ! やりますよっ!」
今やってるのは、槍のリーチを掻い潜り、相手に接近する鍛錬だ。
カイゼルほどの腕前の持ち主から、それが出来たなら……相当なものだ。
「はい、レナちゃん。魔法はイメージですよ」
「は、はいっ!」
「自分を守ってくれる盾……そして、みんなを守りたいという気持ちを乗せることです」
「みんなを守りたい……わかったのじゃ!」
こっちでは、レナがセレナの稽古を受けている。
セレナ自身も教えることで、基礎鍛錬の見直しになると。
「レナお姉ちゃん! 頑張って!」
「う、うむ! 我が盾になれ——アースウォール!」
「そうですっ!」
「で、できたぁ!」
レナの目の前に、高さ二メートルほどの岩の盾が出現する。
あれならば、軽い魔法や弓矢から身を守ることも可能だろう。
「ほう? やるな」
「隙ありなのだっ!」
俺がよそ見をしている間に、カグラが剣を振り下ろしてきたので……。
「それは——君かな」
「はわっ!?」
足払いをかけ……カグラが前のめりになる。
そして、その背中に……剣を突きつける。
「うぅー……ずるいのだ」
「ず、ずるくないさ」
「拙者ばかり弱くて役立たずなのだ……」
い、いかん……この子は褒めて伸ばすタイプだった。
どうやら、少し厳しくしすぎたか。
「そんなことないさ。いつだって頼りにしてる」
「……ほんとですか?」
「ああ、もちろんだ。ほら、これ終わったらお出掛けでもしよう」
「えっ?」
俺の台詞に、その純粋な瞳が見開かれる。
……ほんと、良い意味で子供みたいだよなぁ。
「たまには婚約者とデートしないとな。御両親に怒られてしまうよ」
「ふえっ!?」
「さて、どうする?」
「い、行くのだっ!」
「じゃあ、かかってくるといい」
「はいっ!」
再びやる気を取り戻したカグラと稽古をする。
そんな中……俺の心には焦りがあった。
なんだか胸騒ぎがする……杞憂だといいのだが。
そして、皆それぞれ鍛錬を積み……。
休みの日は、エリカやレナと街に出て遊び……。
あっという間に時が過ぎていく……。
そして……運命の日が訪れる。
状況も色々と変化してきた。
ザガンの父親は息子の罪により、爵位を剥奪され……。
もう再起不能の状態に陥った。
故に、放っておいても問題ない。
こちらの思惑通りに、宰相にはグングニル-モーリス殿がついた。
実直な人柄なので、無難といったところか。
このような状況下なので、少々不安ではあるが……。
少なくとも敵に回ることがないだけ安心ではある。
新たな大臣には、近衛騎士団長であるゼトさんの身内がついた。
これで、父上の地盤が整ったといっていいだろう。
あとは、皇太子であるライル兄上のために地盤をさらに固めることだ。
そして、然るべき時に……皇位継承を行うだろう。
ライル兄上は十六歳になったから、この世界では別におかしなことではない。
流石に今すぐというわけにはいかないが、数年の後に交代するかもしれない。
その時、父親はもう初老に近い……何より、本来なら戦う方が向いている父親だ。
慣れない責務によって、その疲弊度は凄まじい……。
早く、楽にさせてあげたいものだ。
母上やエリカとの時間を作ってもらい、楽しい時間を過ごしてもらいたい。
母上もエリカも、もちろん俺も……それを望んでいる。
そのためには……俺も頑張らないといけないな。
そして、今日も稽古に励む。
「ヤァッ!」
カグラが剣を振るうが……。
「遅い」
俺は半歩ずれ、最小限の動きで躱す。
「くっ! 当たらないのだっ!」
「カグラ、君は強い。おそらく、大多数の敵や大物相手には恐ろしい存在となるだろう」
躱しながらも、話を続ける。
「むぅ……」
「しかし、大振りするクセがある。一撃は恐ろしいが、躱すことも出来てしまう」
「そんなの、主人殿くらいなのだ」
まあ、確かに……暴風と共に振られる剣を恐れずに躱すのは困難だ。
しかし、俺が出会った聖騎士達……そして、ザガンの変身……。
これから、もっと手強い敵が出てくるかもしれない。
「ふっ、そんなでは頼ることはできないな」
「むぅ……」
「おしまいにするか?」
「いえ! やるのだっ!」
「そう来なくては」
カグラが剣を振るい、俺がカウンターを仕掛ける構図が続く。
もちろん、俺にも課題はある。
俺の剣がカグラに当たるが、傷一つついていない。
これはカグラの身体強化魔法が強力なのもある。
しかし、一番は俺の攻撃が軽いということだ。
もっと、一撃の威力を高めるか……。
それに頼るのもあれだが、強い武器が欲しいところだ。
「セァ!」
「甘いですな」
「わわっ!?」
アスナはカイゼルに稽古をつけてもらっている。
俺という主人に仕えるなら、今のままではダメだと。
本来なら弟子はとらないが……まあ、俺のためということだろう。
あとは、一応アスナのことを認めたということかも。
「ムゥ~! このおじさん、相変わらず隙がないです!」
「おじさん……ははっ! そうだっ! ワシごときの攻撃を掻い潜れないようでは、アレス様の役には立たん!」
「わかりましたよっ! やりますよっ!」
今やってるのは、槍のリーチを掻い潜り、相手に接近する鍛錬だ。
カイゼルほどの腕前の持ち主から、それが出来たなら……相当なものだ。
「はい、レナちゃん。魔法はイメージですよ」
「は、はいっ!」
「自分を守ってくれる盾……そして、みんなを守りたいという気持ちを乗せることです」
「みんなを守りたい……わかったのじゃ!」
こっちでは、レナがセレナの稽古を受けている。
セレナ自身も教えることで、基礎鍛錬の見直しになると。
「レナお姉ちゃん! 頑張って!」
「う、うむ! 我が盾になれ——アースウォール!」
「そうですっ!」
「で、できたぁ!」
レナの目の前に、高さ二メートルほどの岩の盾が出現する。
あれならば、軽い魔法や弓矢から身を守ることも可能だろう。
「ほう? やるな」
「隙ありなのだっ!」
俺がよそ見をしている間に、カグラが剣を振り下ろしてきたので……。
「それは——君かな」
「はわっ!?」
足払いをかけ……カグラが前のめりになる。
そして、その背中に……剣を突きつける。
「うぅー……ずるいのだ」
「ず、ずるくないさ」
「拙者ばかり弱くて役立たずなのだ……」
い、いかん……この子は褒めて伸ばすタイプだった。
どうやら、少し厳しくしすぎたか。
「そんなことないさ。いつだって頼りにしてる」
「……ほんとですか?」
「ああ、もちろんだ。ほら、これ終わったらお出掛けでもしよう」
「えっ?」
俺の台詞に、その純粋な瞳が見開かれる。
……ほんと、良い意味で子供みたいだよなぁ。
「たまには婚約者とデートしないとな。御両親に怒られてしまうよ」
「ふえっ!?」
「さて、どうする?」
「い、行くのだっ!」
「じゃあ、かかってくるといい」
「はいっ!」
再びやる気を取り戻したカグラと稽古をする。
そんな中……俺の心には焦りがあった。
なんだか胸騒ぎがする……杞憂だといいのだが。
そして、皆それぞれ鍛錬を積み……。
休みの日は、エリカやレナと街に出て遊び……。
あっという間に時が過ぎていく……。
そして……運命の日が訪れる。
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