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前世と今世が交わる時

決着

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 ……動く気配、回復する兆しはないか。

 俺はゆっくりと、そいつに近づいていく……。

「ガ……」
「あの魔法をくらって生きているか……とんでもないな」

 おそらく、超級以上の威力があったはず。
 屋敷は半壊し、天井には大きな穴が空いているくらいだ。
 普通の生き物なら、原形すら残らない。

「グガッ……オ、オレハ……」
「……ザガンか?」
「……ソウカ……オレハマケタノカ」
「そうだ。お前は類稀なる才能を持ちながら、それを磨くことを怠った。さらには、それをよくない方向に向けていった……残念だよ」

 こいつの才能は、ガクラにも劣っていない。
 きっと真面目に鍛えていれば、もっと色々な人の言葉に耳を傾けていれば……。
 今頃、強き者になっていたに違いない……中身はともかく。

「ク、クソガ……ナンテザマダ……オマエタチノセイデ、オレノジンセイハダイナシダ」
「それは違う。いくらでも道はあった。それを塞いだのは……他でもないお前自身だ。もし……もし、お前が……まともに生きようとしたならば、俺が拒むことはなかった。共に切磋琢磨し、卒業して……あんなこともあったと笑いあえた未来もあったはず」

 俺とて、最初の頃はそれを願っていた。
 だから、何度も忠告もした……が、それを突っぱねたのは……。

「……クソクラエダ、キサマタチトナド……」
「そうか、それなら仕方ない」
「クク……アマチャンダツタノニ、スイブントカワッタナ……コレガ、スゴシテキタジカンノサトイウヤツカ……」
「そうだな。俺自身も、甘さについては未だに迷っている。だが、それで良いと思っている。迷い続け模索して……生きていくしかない」
「……アァ……」

 徐々に身体が崩れていっている……もう……。

「最後に、何か言い残すことはあるか?」
「オレニクスリヲワタシノハ……ターレス……ダ……コレヲノメバツヨクナレルト……クソォ……サイゴマデ、オレヲリヨウシヤガツテ……」

 その目からは……涙がこぼれ落ちる。
 こいつのしたことは許されることではない。
 しかし、ターレスによって狂わされたのも事実だろう。

「わかった。ターレスは……責任持って俺が殺す。今は無理でも——必ず」
「……キヲツケロ…アノヒトハ、ムカシカラエタイガシレナイ……」
「まさか、お前に心配されるとはな」
「ククク……ァァァァ……」
「ん? どうした?」

 俺は最後の言葉に耳を傾ける……。

「ソウダ………ア、アイツモ……ウラギリモノダツタ」
「……何? それはどういう……ダメか」

 俺が見つめる中……ザガンだったものが塵と化していく……。

 さらばだ……ザガン-ゲイボルグよ。

 それにしても……最後の言葉はどういう意味だったんだ?

   裏切り者か……調べてみる必要があるな。






 その後、事後処理を他の方々に任せ、家にへと帰還する。

「ふぅ……疲れたな……みんなもお疲れさん」
「いえ、まだまだ元気なのだ」
「わたしはヘトヘトですぅ~」
「私もですねー」

 なんと……さすがはカグラだ。
 ここで、体力馬鹿とか言ってはいけないことは確かだ。

「けど、なんだったのだ? あれ……少し怖かったのだ。強いこともそうですが……何やら、本能が恐れていたというか」
「あっ、実はわたしもです。アレス様がいなければ、腰が抜けちゃうところでした」
「アレー? みんなもですか? 実は、私もなんですよね……こう、潜在的な恐怖……そんな感じでした。身体が震えてきましたけど……御主人の側にいると不思議と収まったような気が……」
「なに? 確かにバケモノではあったが……俺は特に何も感じなかったぞ?」

 なんだ? カグラたちは修羅場をくぐっているし、これまで経験を積んできた。
 奴が強く醜かったとはいえ……恐怖するような相手ではないはず。
 ……俺の側にいると平気だった? 
 そして、俺だけが何も感じていない……どうしてだ?
 ……ただの偶然だろうが、何だか気になるな。

「確かに、アレス様は平気そうでしたね。わたしは魔法撃つときも、一瞬遅れてしまいました……」
「確かに戸惑っていたな」
「ごめんなさい……」

 落ち込むセレナの頭に、優しくポンポンする。

「ふえっ!?」
「気にするな。サイクロンといい、俺に魔法を合わせたこと……そのどれもが、セレナでなければ出来ないことだ。それに、みんなを指揮するのがリーダーである俺の役目だ。何より、俺がいることで安心出来るなら……頼ってくれ」
「は、はぃ……」

 セレナが顔を真っ赤にして俯く……うん、可愛い。
 ある意味で、普通の一番女の子らしいからなぁ。

「ずるいのだっ!」
「ずるいですよ~!」
「い、良いじゃないですか! わたしのターンです!」

 何やら、三人で言い争いを始める。

「おいおい、落ち着けって……」
「大体、セレナはあざといのだっ!」
「そうですよー! 腹黒のくせに!」
「あぁー! 言いましたね! それをいうなら……」

 ……だめだ、聞いちゃいない。

 はぁ……自業自得なのはわかっているが……。

 ハーレムってやつも大変だなぁ……。

 ……ほんと、結衣に会わす顔がない。

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