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前世と今世が交わる時

異形との戦い

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 アレはなんだ?

 異形としか言いようがない姿は……。

 全身が黒く染まり、二メートルを超える体躯を持つ。

 長い手足と爪、何やら尻尾のようなものまである。

 目はなく、大きい口は裂け、よだれが出ていた。

「あ、主人殿……なんなのだ?」
「み、見たことないです」
「私も知りませんね~……人間がバケモノになるなんて」
「わからん……が、倒すしかあるまい」

 おそらく、弱いということはありえない。
 だが……負けるわけにはいかない!

「主人様!」
「サスケ殿たちはみんなを連れて避難を! そして周辺の人払いをお願いします!」
「畏まりました! ご武運を!」

 そして、手際よく連れて行ってくれた。
 よし、これで人質のことは気にしないで良い。


「アレス様! 動きます!」
「グキァァアァ——!!」
「「「っ~!!」」」
「チッ! 耳鳴りがする!」

 甲高い声が俺たちの耳を襲う!

「グァァァ!」
「く、くるのだ!」

 その隙をついて、奴が迫ってくる!

「フレイムランス!」
「ウ、ウインドアロー!」

 俺は咄嗟に炎の槍を、少し遅れてセレナが風の矢を放つ!

「グギャァァァ!」
「何!? 叫び声で魔法をかき消した!?」

 どんな声だよ!? あの声には、魔力があるとでも!?

「でも、一瞬だけ止まったのだ! 拙者が参ります!」

 態勢を立て直したカグラが駆け出していく!

「私が援護しますねー!」
「任せた! セレナ! 俺たちは奴を倒せるだけの魔力を練る! 生半可な魔法は奴には効かなそうだ!」
「はいっ! わかりました!」

 そして……すぐに激戦が始まる。

「ヤァァ!」
「ゴァァァァ!」

 大剣と爪が激突し、轟音が鳴り響く。

「グカァ!」
「やらせません!」

 バケモノが尻尾でカグラを狙うが、それをアスナが小太刀で的確に弾いていく。
 少し焦っていたが……これなら心配なさそうだ。

「ふっ……良い連携だ」
「そうですね。大きい動きのカグラちゃんを、小さい動きのアスナちゃんが上手くフォローしてます。まあ、二人で訓練もしてたみたいですよ?」

 どうやら、俺の知らないところで上手くやってるようだな。

 俺は眼前の光景から目を逸らさず、魔力を高めていく……。



 ◇

 
 不謹慎にも、拙者の心は踊っていた。

 主人殿が……愛しき彼の方が、拙者を頼ってくれたのだ。

 強敵を前にしても、自分が前に出ず……拙者に任せると。

 拙者を大事に思ってくれること、それでも拙者の心を汲んでくれること……。

「これで燃えない方がおかしい!」
「グァァァ!?」

 迫り来る爪を、力を込めた大剣で叩き折る!
 その隙をついて、奴が尻尾を繰り出すが……。

「危ないですって!」

 後ろにいるアスナが、的確に弾いてくれる。

「お主がいるから平気なのだっ!」
「おや~、ということは御主人様の愛人として認めてくれます?」
「それとこれとは——話が別なのだっ!」

 軽口を叩きつつも、それぞれが補うように戦う。
 悔しいが……物凄く戦いやすい。
 多分、戦い方が主人殿に近いからだろう。

「え~! 仕方ない——役に立つとしますかね!」
「グァァァ!?」

 腰を深く落とした一閃により……尻尾を切断した!

「ハァァァァ!」
「グカァ!?」

 その隙をついて、胴体に大剣を叩き込む!
 バケモノが轟音を立てて、壁に激突する。
 そして……瓦礫の山に埋もれた。

「ふっ、主人の手を煩わすまでもない」
「どうです?」
「……悔しいが、主人殿にお主は必要だ」

 主人殿に近い戦い方、同じような武器……。
 これで臨機応変な対応ができ、こういう時に主人殿は魔法に専念できる。

「あれー?」
「仕事も出来るし、拙者と違い気配りもできる。お主が本気で主人に仕えるというのなら……背中を預ける友にはなれる」
「カグラさん……えへへ~」
「こ、こらっ! 抱きつくな!」
「平気ですよ! あいつは……あれ?」

 急に声色が変わり、アスナが臨戦態勢に入る。

「どうし……何?」

 瓦礫の山が揺れ……。

「グァァァ!」
「生きていたか……待て、拙者とお主がつけた傷が……」
「消えてますね~」

 やれやれ……まだ力が足りないか。

「仕方ない。主人殿とセレナの魔法が完成するまで時間を稼ぐぞ」
「そうですね、やりますか~」

 今はまだ弱い……でも、必ず——もっと強くなってみせる!



 ◇


 あのまま、カグラが倒してしまうかと思ったが……。

「セレナ」
「わかってます。再生が出来ないほどの威力ですね?」
「ああ、今の俺達が放てる最大の魔法をぶつけるぞ」
「はいっ!」

 奴の再生を見て、改めて魔力を高めていく。

「……いけるか?」
「……はい」
「よし……すまないが、俺と魔力を合わせてくれ」
「はいっ!」

 魔力の扱いが上手いセレナが、俺に合わせてくれる。

「カグラ! アスナ! もう少し時間を稼いでくれ!」
「承知!」
「あいさー!」

 二人が、再びバケモノを攻め立てる!

「ガァァァ!!」
「行かせるか!」
「邪魔はさせません!」

 本能で危険を感じたのか、俺達の方に向かってくるが……。
 それを、二人が防いでくれる。

「アレス様……いけます!」
「よし! 二人とも……やれやれ、頼りになる奴らだ」

 俺が言う前に、二人は下がっていた。
 しかも、バケモノを吹き飛ばした後で。

「 我が炎よ! 敵を焼き尽くせ!」
「風よ! 敵を切り刻め!」
「「ファイアーストーム!!」
「グキャァァ!?」

 バケモノが炎に焼かれ、風に切り刻まれ……。

「ガァ……ガ……ァァァァ……」

 再生が追いつかず……真っ黒になり地に伏せた。

 
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