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前世と今世が交わる時

異形

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 まずは、人質が優先か。

「サスケ殿!」

 俺の声に、頭上から人が降ってくる。

「はっ、ここに」
「人質を任せてもいいですか?」
「お任せください。アレス様達は、戦いに専念なさってください」
「感謝します——行くぞ」

 それぞれが頷き……行動を開始する!

「アレス様! どうします?」
「人質がいる間は、大規模な魔法は使えない——カグラ! 道を切り開け! 俺が続く!」
「承知!」
「では、私はセレナさんの護衛ですねー」
「私は、敵の魔導師を狙います!」
「ああ、頼む! って——先走りすぎだ!」

 すでにカグラは敵に向かって駆け出していた!
 二人と別れ、俺は慌ててカグラの後を追う!






 ……心配無用ってやつか。

 やれやれ……出会った頃が懐かしいな。

 学校の試験中、森で先走った時は怒ってしまったが……。

 実力が伴っているなら、最早文句は言えまい。

「ヤァァァ!」
「ぎゃァァァ!」
「ヒィ!? ひ、人が吹き飛んだぞ!?」

 荒くれ者達が、カグラに迫るが……。
 俺が預けた大剣を一振りすれば、人が数人まとめて宙に舞う。
 威勢の良かった奴らが、尻込みするほどの光景だ。
 敵からしたら恐ろしいかもしれないが……俺は、その光景に見とれていた。
 剣を振るうたびに、赤いポニーテールが舞い……不謹慎にも綺麗だと思ってしまう。

「おい、一応言っておくが……心配かけるな」
「す、すみません……えへへ、懐かしいのだ」

 どうやら、カグラも同じことを考えていたらしい。

「だが、あの時とは違う。俺が守る必要はないな?」
「っ——! は、はいっ!」
「いい返事だ」
「むしろ、拙者がお守りするのだ!」
「そういうわけにもいかない。守る必要はないが、カグラが守りたい女性に変わりはない」
「……ふえっ?」

 まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている……可愛いな、おい。
 不謹慎にも、少しときめいてしまった……いかんいかん。

「ほら、 行くぞ。奴だけは……俺の手で仕留める」
「ま、待ってください!」

 気恥ずかしさを隠すように、俺は敵陣に突っ込んでいく!

「ァァァ! 腕がぁ!?」

 俺が剣を一振りすれば、敵の四肢が飛ぶ。

「隙ありだ!」
「人数で攻めるぞ!」
「数が多いが……問題ない」

 斬った後の一瞬の隙は……。

「アクアバレット!」
「いきますよー!」
「ゴハッ!?」
「かへっ?」

 セレナが魔法、アスナが飛び道具にて援護してくれる。

 さらには、俺には彼女がいる。

「主人の邪魔をするな!」
「ゲベァ!?」

 俺とは違い、血は流れないが……敵の四肢がひしゃげている。
 やはり、カグラに預けて正解だったか。

「主人殿! この剣は凄いのだ! 拙者が本気を出しても、全然問題ない!」
「そいつは良かった! なにせグロリア王国の国宝らしいからな!」

 カグラに唯一足らなかったのは武器だ。
 その戦い方と、類い稀なる身体強化魔法に耐えうる武器が。
 それが補われた今——彼女を止めることができるのは一握りだろう。

「お前達! 何をぼけっとしている! さっさとやれ! もういい! 最悪殺してしまえ!」
「くそっ! 余裕ぶっこきやがって!」
「やるぞ! どうせ、後にはひけねえ!」

 ザガンの声に、ならず者達が動き出す。
 奴らもわかっているのだろう……捕まればどうなるのか。

「ならば、俺にできることは……」
「シネェェ——クハッ?」

 苦しまずに、一思いに死なせてやることだけだ。
 故に、迫り来る敵を一太刀で仕留めて行く。

「数で押し切れ! 何倍いると思ってんだ!?」

 ザガンの言う通り、人数差は歴然だ。
 このままでは、少々まずいが……来たか。

「主人様、人質を救出致しました」
「サスケ殿、ご苦労様です」
「いえ、では私達は引き続き護衛を致します。なので……本気を出して構いません」

 それだけ言い、人質達の元に戻る。
 どうやら、いつの間か後ろの方にまとめていたらしい。
 ほんと、頼りになる御仁だよ。
 カイゼルにサスケ殿という歴戦の勇者……期待には応えたいな。

「く、クソ! いつの間に! 役立たずどもめ!」
「お前は仲間を何だと……いや、もう何も言うまい」

 奴に説いても無駄なことだ。
 きっと奴は……環境が違っていてもああなった可能性が高い。
 人は変われるが……どうしようもない人間がいるのも事実だからだ。

「アレス様!」
「セレナ! 遠慮なくやれ!」
「はいっ! 荒れ狂う風よ全てを蹴散らせ——サイクロン!」

 広い部屋の中央で、強烈な竜巻が発生する!
 俺とカグラは阿吽の呼吸で、後方へ避難していたが……。

「ぎゃァァァ!?」
「うァァァ!?」

 ある者は空に巻き上げられ、地に落ち……四肢が折れ曲がる。
 ある者は腕や足を切断され、もがき苦しんでいる。
 天井には穴ができ……夜空が見える。

「おいおい、何という威力だ」
「す、凄いのだ。あの魔力の質……拙者でも、まともに食らえばタダではすまないのだ」

 カグラの言う通り……収まった後は、死屍累々といったところだ。

 もちろん、その中には……ザガンもいた。

「ば、馬鹿な……平民ごときが、超級魔法を?」
「お前に言っても無駄だが……生まれで才能は決まらない。どこで生まれようとも、どう生きるかだ」

 俺はトドメをさすため、奴に近づいて行く。

「や、やめろぉぉ……く、くそ……こうなったら」
「なに?」

 奴が何かを口に含んだ——次の瞬間。

「ガァァァァァァ!」

 メキメキと音を立てながら……ザガンの姿が変貌していく。

 その姿は、さながらバケモノのように……。
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