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前世と今世が交わる時

嵐の前の静けさ

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 あれから、三ヶ月ほどが経ち……。

 俺も表の仕事と、裏の仕事にも慣れてきた。

 昼間は魔物退治、夜は貴族達の悪事を暴く生活だ。

 そんな日々を過ごす中……俺は十四歳の誕生日を迎える。





 その日は我が家に皆が集まり、盛大なお祝いをしてくれる。

『おめでとうございます!』
「みんな……ありがとう」

 皆の声に、少し照れながら答える。
 その後、皆が気を使い……母上と二人きりでソファーに座る。
 少し気恥ずかしいが……これも、大事な時間だ。
 親孝行なんて、生きてるうちにしかできないのだから。

「ふふ、去年は祝えなかったから。もう十四歳か……大きくなったわね。また、身長も伸びて……若い頃のラグナに似てきたわ」
「そうですか? 俺としては、母上に似ていると思うのですが」

 確かに身長は伸びて、百七十センチを超えてきた。
 体格や背格好だけで言えば、もう大人と変わりはなくなってきている。
 でも顔は、まだ少し幼い気がするし……少し女顔なのが実は嬉しい。
 なにせ、前世ではゴツイタイプの男だったからなぁ。

「うーん……雰囲気かしら? ふと見せる表情とか、仕草とか」
「なるほど……そういうものですか」
「その……頭を撫でてもいいかしら?」
「え、ええ……どうぞ」
「ふふ。ごめんなさいね。もう嫌でしょうけど……」

 俺を撫でながら、そんなことを言うが……答え辛い質問だ。
 嫌というわけではないが、やはり気恥ずかしいものだ。
 でも……悪い気はしない。

「い、いえ……」
「今日だけは許してね、アレス。貴方が生まれた日だもの……立派になって」
「母上、泣かないでくださいよ。まだ成人もしていないですから」
「そ、そうよね……やだわ、歳をとると涙もろくなって」
「大丈夫です、まだまだ若くてお綺麗ですから」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」

 母上は三十歳半ばになっているが、実際には二十代後半にしか見えない。
 と言うか、俺が生まれた頃からあんまり変わってないかもしれない。

「いえ、実際にお変わりないですからね」
「もう! その手口で三人もお嫁さんを連れてきたのね!」
「手口って……と言うか、アスナは別に……」
「ダメよ、アレス。あんなに、貴方に尽くしてあげてるんだから。それに、あの子達一家のおかけで、私たちは安心して生活ができるようになったわ。それに、私にしっかりと挨拶もしてくれたし」

 ……何という手口だ。
 どっちかというと、あいつが恐ろしい。
 そして……噂をすれば何とやらだ。

「呼びましたか!?」
「呼んでない」
「ひどい!?」
「あらあら、仲良いわね」
「えへへ~、お義母さん!ありがとうございます!」
「おい?」

 俺はともかく……後ろの二人が。

「アスナさん?」
「拙者達だって、邪魔をしないように我慢してたのに!」
「戦略的撤退です!」
「待つのだ!」
「ふふ……ちょっと、お話しましょうね?」

 そう言い、逃げるアスナを追いかけていく。

「ほんと……良い子達ね」
「まあ……俺には勿体ないくらいの女性達ですね」

 皆、俺の裏の仕事を手伝ってくれている。
 決して、誰からも賞賛されない仕事だ。
 何より、危険を伴う。
 もしバレたなら……他の貴族達が狙ってくるに違いない。
 そういえば……ターレスが動かないのが不気味なところだ。

「あら、そんなことないわよ。貴方は、自慢の息子よ。家族思いで仲間思いで……優しい子に育ってくれたわ」
「そ、そうですか……」

 すると……天使がやってくる。
 どうやら、アスナ達を見て我慢の限界を超えたらしい。

「お話終わった!?」

 エリカがそう言い、ソファーに座る俺の膝に乗ってくる。

「いや、どうだろう?」
「ふふ、平気よ。ありがとね、エリカ。お兄ちゃんを独占させてくれて」
「ふふ~ん! 私は偉いもん!」
「そうだな、偉いぞ」

 そう言い、頭を撫でてあげる。

「えへへ~、パパに似てきたね!」
「そうか?」
「うん! あったかくておっきな手をしてるの!」
「なるほど……そうか」

 俺は、さっきからずっと気になってることがあるが……。
 うむ……この場合は、どうすればいいか。

「……ほら! レナお姉ちゃんも!」
「ふえっ!?」

 そう……レナが、さっきからずっと俺を見ている。
 ただ、その理由がわからない。

「お兄ちゃんの膝に乗るの!」
「し、しかし……」

 視線を泳がして、オロオロしている。
 なるほど……そういうことか。
 ロナードの代わりを務めなくてはな。

「レナ、おいで」
「うぅ……し、失礼するのじゃ」

 恐る恐る近づいてきて……俺の左膝に乗る。

「し、師匠! お、重くないですか?」
「ああ、平気さ」
「ふふ~、お兄ちゃんがおっきくなったからできるね!」
「エリカちゃん……ありがとう」
「ううん! 友達だもん!」

 その姿を見て……母上と微笑み合う。

 言わなくともわかる。

 きっと……自分の気持ちより、人の気持ちを考える子になってくれたことが嬉しいと。






 その日の夜……俺は気配を感じ、静かに家を出る。

「サスケ殿」
「さすがはアレス様。すっかり、気づかれるようになってしまいましたな」
「全く……貴方が、いつも気配を消して近づくからですよ」

 そのおかげで、こちらも鍛錬になるから良いけど。

「アレス様は、暗殺者としても一流になれましたな」
「一応、褒め言葉として受け取っておくよ……それで?」
「とある情報を得ました——実は……」

 その内容を聞き……。

「そうか……ご苦労だった」
「いえ。しかし……罠の可能性も」
「それならそれで良い。罠があるとわかっているなら……それごと粉砕するまでだ」
「御意。では、私は準備に入ります」
「ああ、よろしく頼む」

 サスケ殿が去った後、満月を空を見上げ……。

「静かな夜だ」

 だが……そろそろ、終わりにしようか。


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