149 / 257
前世と今世が交わる時
嵐の前の静けさ
しおりを挟む
あれから、三ヶ月ほどが経ち……。
俺も表の仕事と、裏の仕事にも慣れてきた。
昼間は魔物退治、夜は貴族達の悪事を暴く生活だ。
そんな日々を過ごす中……俺は十四歳の誕生日を迎える。
その日は我が家に皆が集まり、盛大なお祝いをしてくれる。
『おめでとうございます!』
「みんな……ありがとう」
皆の声に、少し照れながら答える。
その後、皆が気を使い……母上と二人きりでソファーに座る。
少し気恥ずかしいが……これも、大事な時間だ。
親孝行なんて、生きてるうちにしかできないのだから。
「ふふ、去年は祝えなかったから。もう十四歳か……大きくなったわね。また、身長も伸びて……若い頃のラグナに似てきたわ」
「そうですか? 俺としては、母上に似ていると思うのですが」
確かに身長は伸びて、百七十センチを超えてきた。
体格や背格好だけで言えば、もう大人と変わりはなくなってきている。
でも顔は、まだ少し幼い気がするし……少し女顔なのが実は嬉しい。
なにせ、前世ではゴツイタイプの男だったからなぁ。
「うーん……雰囲気かしら? ふと見せる表情とか、仕草とか」
「なるほど……そういうものですか」
「その……頭を撫でてもいいかしら?」
「え、ええ……どうぞ」
「ふふ。ごめんなさいね。もう嫌でしょうけど……」
俺を撫でながら、そんなことを言うが……答え辛い質問だ。
嫌というわけではないが、やはり気恥ずかしいものだ。
でも……悪い気はしない。
「い、いえ……」
「今日だけは許してね、アレス。貴方が生まれた日だもの……立派になって」
「母上、泣かないでくださいよ。まだ成人もしていないですから」
「そ、そうよね……やだわ、歳をとると涙もろくなって」
「大丈夫です、まだまだ若くてお綺麗ですから」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」
母上は三十歳半ばになっているが、実際には二十代後半にしか見えない。
と言うか、俺が生まれた頃からあんまり変わってないかもしれない。
「いえ、実際にお変わりないですからね」
「もう! その手口で三人もお嫁さんを連れてきたのね!」
「手口って……と言うか、アスナは別に……」
「ダメよ、アレス。あんなに、貴方に尽くしてあげてるんだから。それに、あの子達一家のおかけで、私たちは安心して生活ができるようになったわ。それに、私にしっかりと挨拶もしてくれたし」
……何という手口だ。
どっちかというと、あいつが恐ろしい。
そして……噂をすれば何とやらだ。
「呼びましたか!?」
「呼んでない」
「ひどい!?」
「あらあら、仲良いわね」
「えへへ~、お義母さん!ありがとうございます!」
「おい?」
俺はともかく……後ろの二人が。
「アスナさん?」
「拙者達だって、邪魔をしないように我慢してたのに!」
「戦略的撤退です!」
「待つのだ!」
「ふふ……ちょっと、お話しましょうね?」
そう言い、逃げるアスナを追いかけていく。
「ほんと……良い子達ね」
「まあ……俺には勿体ないくらいの女性達ですね」
皆、俺の裏の仕事を手伝ってくれている。
決して、誰からも賞賛されない仕事だ。
何より、危険を伴う。
もしバレたなら……他の貴族達が狙ってくるに違いない。
そういえば……ターレスが動かないのが不気味なところだ。
「あら、そんなことないわよ。貴方は、自慢の息子よ。家族思いで仲間思いで……優しい子に育ってくれたわ」
「そ、そうですか……」
すると……天使がやってくる。
どうやら、アスナ達を見て我慢の限界を超えたらしい。
「お話終わった!?」
エリカがそう言い、ソファーに座る俺の膝に乗ってくる。
「いや、どうだろう?」
「ふふ、平気よ。ありがとね、エリカ。お兄ちゃんを独占させてくれて」
「ふふ~ん! 私は偉いもん!」
「そうだな、偉いぞ」
そう言い、頭を撫でてあげる。
「えへへ~、パパに似てきたね!」
「そうか?」
「うん! あったかくておっきな手をしてるの!」
「なるほど……そうか」
俺は、さっきからずっと気になってることがあるが……。
うむ……この場合は、どうすればいいか。
「……ほら! レナお姉ちゃんも!」
「ふえっ!?」
そう……レナが、さっきからずっと俺を見ている。
ただ、その理由がわからない。
「お兄ちゃんの膝に乗るの!」
「し、しかし……」
視線を泳がして、オロオロしている。
なるほど……そういうことか。
ロナードの代わりを務めなくてはな。
「レナ、おいで」
「うぅ……し、失礼するのじゃ」
恐る恐る近づいてきて……俺の左膝に乗る。
「し、師匠! お、重くないですか?」
「ああ、平気さ」
「ふふ~、お兄ちゃんがおっきくなったからできるね!」
「エリカちゃん……ありがとう」
「ううん! 友達だもん!」
その姿を見て……母上と微笑み合う。
言わなくともわかる。
きっと……自分の気持ちより、人の気持ちを考える子になってくれたことが嬉しいと。
その日の夜……俺は気配を感じ、静かに家を出る。
「サスケ殿」
「さすがはアレス様。すっかり、気づかれるようになってしまいましたな」
「全く……貴方が、いつも気配を消して近づくからですよ」
そのおかげで、こちらも鍛錬になるから良いけど。
「アレス様は、暗殺者としても一流になれましたな」
「一応、褒め言葉として受け取っておくよ……それで?」
「とある情報を得ました——実は……」
その内容を聞き……。
「そうか……ご苦労だった」
「いえ。しかし……罠の可能性も」
「それならそれで良い。罠があるとわかっているなら……それごと粉砕するまでだ」
「御意。では、私は準備に入ります」
「ああ、よろしく頼む」
サスケ殿が去った後、満月を空を見上げ……。
「静かな夜だ」
だが……そろそろ、終わりにしようか。
俺も表の仕事と、裏の仕事にも慣れてきた。
昼間は魔物退治、夜は貴族達の悪事を暴く生活だ。
そんな日々を過ごす中……俺は十四歳の誕生日を迎える。
その日は我が家に皆が集まり、盛大なお祝いをしてくれる。
『おめでとうございます!』
「みんな……ありがとう」
皆の声に、少し照れながら答える。
その後、皆が気を使い……母上と二人きりでソファーに座る。
少し気恥ずかしいが……これも、大事な時間だ。
親孝行なんて、生きてるうちにしかできないのだから。
「ふふ、去年は祝えなかったから。もう十四歳か……大きくなったわね。また、身長も伸びて……若い頃のラグナに似てきたわ」
「そうですか? 俺としては、母上に似ていると思うのですが」
確かに身長は伸びて、百七十センチを超えてきた。
体格や背格好だけで言えば、もう大人と変わりはなくなってきている。
でも顔は、まだ少し幼い気がするし……少し女顔なのが実は嬉しい。
なにせ、前世ではゴツイタイプの男だったからなぁ。
「うーん……雰囲気かしら? ふと見せる表情とか、仕草とか」
「なるほど……そういうものですか」
「その……頭を撫でてもいいかしら?」
「え、ええ……どうぞ」
「ふふ。ごめんなさいね。もう嫌でしょうけど……」
俺を撫でながら、そんなことを言うが……答え辛い質問だ。
嫌というわけではないが、やはり気恥ずかしいものだ。
でも……悪い気はしない。
「い、いえ……」
「今日だけは許してね、アレス。貴方が生まれた日だもの……立派になって」
「母上、泣かないでくださいよ。まだ成人もしていないですから」
「そ、そうよね……やだわ、歳をとると涙もろくなって」
「大丈夫です、まだまだ若くてお綺麗ですから」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」
母上は三十歳半ばになっているが、実際には二十代後半にしか見えない。
と言うか、俺が生まれた頃からあんまり変わってないかもしれない。
「いえ、実際にお変わりないですからね」
「もう! その手口で三人もお嫁さんを連れてきたのね!」
「手口って……と言うか、アスナは別に……」
「ダメよ、アレス。あんなに、貴方に尽くしてあげてるんだから。それに、あの子達一家のおかけで、私たちは安心して生活ができるようになったわ。それに、私にしっかりと挨拶もしてくれたし」
……何という手口だ。
どっちかというと、あいつが恐ろしい。
そして……噂をすれば何とやらだ。
「呼びましたか!?」
「呼んでない」
「ひどい!?」
「あらあら、仲良いわね」
「えへへ~、お義母さん!ありがとうございます!」
「おい?」
俺はともかく……後ろの二人が。
「アスナさん?」
「拙者達だって、邪魔をしないように我慢してたのに!」
「戦略的撤退です!」
「待つのだ!」
「ふふ……ちょっと、お話しましょうね?」
そう言い、逃げるアスナを追いかけていく。
「ほんと……良い子達ね」
「まあ……俺には勿体ないくらいの女性達ですね」
皆、俺の裏の仕事を手伝ってくれている。
決して、誰からも賞賛されない仕事だ。
何より、危険を伴う。
もしバレたなら……他の貴族達が狙ってくるに違いない。
そういえば……ターレスが動かないのが不気味なところだ。
「あら、そんなことないわよ。貴方は、自慢の息子よ。家族思いで仲間思いで……優しい子に育ってくれたわ」
「そ、そうですか……」
すると……天使がやってくる。
どうやら、アスナ達を見て我慢の限界を超えたらしい。
「お話終わった!?」
エリカがそう言い、ソファーに座る俺の膝に乗ってくる。
「いや、どうだろう?」
「ふふ、平気よ。ありがとね、エリカ。お兄ちゃんを独占させてくれて」
「ふふ~ん! 私は偉いもん!」
「そうだな、偉いぞ」
そう言い、頭を撫でてあげる。
「えへへ~、パパに似てきたね!」
「そうか?」
「うん! あったかくておっきな手をしてるの!」
「なるほど……そうか」
俺は、さっきからずっと気になってることがあるが……。
うむ……この場合は、どうすればいいか。
「……ほら! レナお姉ちゃんも!」
「ふえっ!?」
そう……レナが、さっきからずっと俺を見ている。
ただ、その理由がわからない。
「お兄ちゃんの膝に乗るの!」
「し、しかし……」
視線を泳がして、オロオロしている。
なるほど……そういうことか。
ロナードの代わりを務めなくてはな。
「レナ、おいで」
「うぅ……し、失礼するのじゃ」
恐る恐る近づいてきて……俺の左膝に乗る。
「し、師匠! お、重くないですか?」
「ああ、平気さ」
「ふふ~、お兄ちゃんがおっきくなったからできるね!」
「エリカちゃん……ありがとう」
「ううん! 友達だもん!」
その姿を見て……母上と微笑み合う。
言わなくともわかる。
きっと……自分の気持ちより、人の気持ちを考える子になってくれたことが嬉しいと。
その日の夜……俺は気配を感じ、静かに家を出る。
「サスケ殿」
「さすがはアレス様。すっかり、気づかれるようになってしまいましたな」
「全く……貴方が、いつも気配を消して近づくからですよ」
そのおかげで、こちらも鍛錬になるから良いけど。
「アレス様は、暗殺者としても一流になれましたな」
「一応、褒め言葉として受け取っておくよ……それで?」
「とある情報を得ました——実は……」
その内容を聞き……。
「そうか……ご苦労だった」
「いえ。しかし……罠の可能性も」
「それならそれで良い。罠があるとわかっているなら……それごと粉砕するまでだ」
「御意。では、私は準備に入ります」
「ああ、よろしく頼む」
サスケ殿が去った後、満月を空を見上げ……。
「静かな夜だ」
だが……そろそろ、終わりにしようか。
21
お気に入りに追加
2,767
あなたにおすすめの小説
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
【完結】僕は今、異世界の無人島で生活しています。
コル
ファンタジー
大学生の藤代 良太。
彼は大学に行こうと家から出た瞬間、謎の光に包まれ、女神が居る場所へと転移していた。
そして、その女神から異世界を救ってほしいと頼まれる。
異世界物が好きな良太は二つ返事で承諾し、異世界へと転送された。
ところが、女神に転送された場所はなんと異世界の無人島だった。
その事実に絶望した良太だったが、異世界の無人島を生き抜く為に日ごろからネットで見ているサバイバル系の動画の内容を思い出しながら生活を開始する。
果たして良太は、この異世界の無人島を無事に過ごし脱出する事が出来るのか!?
※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さん、「ノベルアップ+」さん、「ノベリズム」さんとのマルチ投稿です。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる