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青年期~後編~

追跡

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 次の日の夜……。

 俺は単身で闇に紛れ……とある屋敷の前で待機していた。

 今回は素早い動きが必要になるので、三人には待機してもらった。

 もちろん、すぐに動けるように手配はしてあるが……。

 何より、すでに犯人の名前はわかっている。

 俺は待っている間に、父上との話を思い出しておく……。


 ◇


 翌朝、父上の私室に呼ばれ……。

「父上、お疲れ様です」
「アレスこそ、ご苦労だったな」
「それで、どうですか?」
「ああ、知っていることはサスケが吐かせた」

 できれば、俺も見たかったが……父上とサスケが許してくれなかった。
 それだけは、皇族にやらせるわけにはいかないと。
 俺としては甘い気もするし、その気持ちが嬉しくもあり……複雑である。

「それで……やはり?」
「ああ、ブライ伯爵で間違いない。そして、後ろには……ハデス伯爵がいる」

 ハデス伯爵……ロレンソの父親か。
 あいつも、絡んでいるのか?

「では、確実な証拠がないと捕らえられませんよね?」

 前の世界でもそうだったが……やはり、証拠がないと厳しいらしい。
 まあ、他人の証言だけで逮捕してたら何でもありになってしまうし。

「ああ、そうだ。そして、あの頭領はそこそこの情報を持っていた。というより、情報の照らし合わせと言ったところだ。これで、信憑性が増した」

 俺たちの仕事は人質救出と、敵の殲滅がメインだった。
 その他の調べ物や雑事は、サスケ殿が受け持ってくれる。
 今回の廃墟だって、サスケ殿が探し当ててくれたし。
 いやはや、心強い人が仲間になってくれたよ。

「まあ、いきなり捕まえるわけにはいかないですしね」
「それは仕方あるまい。それで、お前にはブライ伯爵の後をつけてほしい」
「なるほど……子飼いの賊が捕まったので、慌てて動き出すと?」
「ああ、そうだ。そいつの後を追って欲しい。もちろん、犯人の目星は付いているが……確実な証拠が必要だ。そのためには、皇族であるお前の証言が必要だ」

 出来損ないとはいえ……皇族の俺が証拠を掴んだら、流石に言い逃れはできないからな。
 闇魔法といい、どう考えても……俺が適任だろう。

「わかりました。その任務……遂行しましょう」

 そう言うと、父上が頭を下げ……。

「すまぬ……」
「父……
「っ!!」
「この任務、私が適任かと存じます」
「……アレスよ、余の命令だ。無事に任務を終えて帰ってくるのだ」
「はっ! 必ずや!」

 俺は膝をつき、臣下の立場をとる。

 汚れ仕事をやらせたくない気持ちは嬉しい。

 その気持ちさえあれば……俺は平気ですから。

 何より、もう——覚悟はできてる。




 ◇


 すると……だれかの気配がする。

「は、早く行かないと……!」

 ブライ伯爵本人が、慌てて屋敷から出て来て……。

「わ、私は、このままでは破滅だ……!」

 ブツブツ言いながら、馬車に乗り込む。

 どうやら、子飼いの賊が捕まったことを知ったらしい、
 まあ……奴にだけ、こちらから情報を流したんだけどな。
 そうすれば、ある程度行動を操る事ができる。





 その馬車についていくと……。

 とある建物の前で止まっていた。

「あの建物は……やはり、奴の別荘か」
「主人様」
「サスケ殿」

 いつのまにか、横にサスケ殿が横にいた。
 相変わらず、凄腕の忍びみたいな人だ。

「ご主人様~」
「アスナもきたか」
「では、この三人でまいりましょう。私について来てください」

 二人も闇のマントで包み、木の上を登り、屋根を伝って……

 高い位置にある窓に到着する。

「すでに、ここを開けるように指示しております」
「なるほど、何から何まで感謝する」
「い、いえ……容易いことです」
「ふふ、父上が照れてますね」
「無駄口を叩くな……行きますよ」

 そして、空いてる窓から潜入する。




 そこから、サスケ殿の指示で動き……。

 とある部屋の前に到着する。

「な、何しに来た!?」
「な、何って……子飼いの賊が捕まったと! 私はどうしたら!?」

 その部屋から、声が聞こえてくる。
 どうやら、二人とも興奮しているようだ。
 俺たちは気づかれぬように、ドアの隙間から部屋に侵入する。

「し、知らん! 私は知らん! 私には関係ない!」
「そ、そんな! 貴方が指示したことじゃないですか! それに何かあっても、大臣の力でもみ消すと……そして、いつか宰相になったら、私を大臣に任命してくれると!」

 なるほど、見えてきたな……。
 同じ階級なのに、変だと思っていたが……。
 ハデス伯爵が、大臣のポストを餌に操っていたわけか。

「そ、それは……ええい! いいから帰れ! このままでは、私まで疑われてしまう!」
「そ、そんな! 見捨てるのですか!?」
「ふふ、運が悪かったな。お前さえいなければ、私のことがバレることはない」
「な、何を?」
「いや、むしろ来てくれて助かったよ。ここで始末さえすれば……そして私が、一連の事件の犯人として——皇帝陛下に、貴様を差し出せばいい。そうすれば、宰相へ道が……クク」

 そう言って、剣を抜く。

「ヒィ!? や、やめてくれ!」
「すぐに楽にしてやる」

 もう十分だと思い、俺達が動き出そうとすると……。

「待ってください!」

 扉を開けて、誰が入ってくる。

 それは……全身痣だらけの、ロレンソの姿だった。
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