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青年期~後編~
懐かしき対面
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……俺は目を逸らさずに、黙って父上の言葉を待つ。
そして……。
「ハァァァァ——」
父上が、大きなため息を吐く。
「正直言って、そうなると思っていた。そして、それが有効だということも……そして、任命するに当たり……父親ではなく、皇帝としての俺が……それを利用しろと囁いた」
(そうか……それもあって悩んでいたのか)
「いえ、それで良いんですよ。あくまでも、今は臣下の立場なのですから」
「そんなことはわかってる! ……す、すまん」
「いえ……その気持ちはとても嬉しいです。俺は父上を愛していますし、愛されていることを幸せだと思います。ですが、それではいけないのです。父上は、皇太子のことを優先してください。それが、この国のために……ひいては、俺たちのためになります」
(皇太子であるライル兄上が大人になったとはいえ……周りの家臣は、俺のことを良く思わないだろうし)
「俺とてわかってる……お前に肩入れしないことが、お前達を一番守る術だということは……! だが、それでは……!」
「父上……ご安心下さい」
「アレス?」
「父上が気兼ねなく俺達と接することができるように……俺、頑張りますから。だから、俺を遠慮なく使ってください」
「っ——!? ……ガキなのは俺の方だな。そうだな、そうできるようにするのが一番の近道かもしれん……」
(父上の顔には疲労が見え隠れしている……当たり前の話で、もう四十歳を軽く超えている。この世界では、もう隠居を考える年代に入ろうとしている……早く楽にさせてあげなくてはいけない)
「では、良いですね?」
「ああ、頼む……指令は追って出す。それまで、屋敷で待機してくれ」
「はい、わかりました」
俺が席を立って、部屋から出る直前……父上のため息が漏れる。
俺はすぐに踵を返して——父上を抱きしめる。
「ア、アレス?」
「父上、肩の力を抜きましょう」
「し、しかし……」
「そんな顔では、エリカに嫌われてしまいますよ?」
「……それは困るな」
「可愛い息子の頼みです……父上、俺をもっと頼ってください。そのために強くなったのですから」
「……それは聞かないわけにはいかんな」
「ええ、そうですよ……じゃあ、帰りますね」
俺は振り返らずに、今度こそ部屋から出て行く。
「アレス様、ありがとうございます」
「いえ、ゼトさん。これも、俺の役目でしょう」
「陛下は、ここのところお忙し過ぎなのです。宰相がいない分、寝る間もなく働き……私には相談に乗ることくらいしか出来ないのが歯痒いです」
「そんなことありませんよ。ゼトさんっていう信頼できる人がいるから、俺達は父上の安全を考える必要がないのですから」
「……私まで励まされてしまいましたか。本当に、大きくなられて……引き留めて申し訳ありません——あとは私にお任せを」
「はい、父上をよろしくお願いします」
ゼトさんにお辞儀をして、俺はその場を立ち去る。
そして、城の中を歩いていると……太ったおっさんと細身の男が向かってくる。
「これはこれは……アレス様ではありませんか」
「ア、アレス様、お久しぶりでございます」
(出たか……財務大臣である、ハデス-レイガンか……そして、隣にいるということはロレンソか?)
以前は傲慢さが滲み出ていたが……何か様子が違う。
細身の長身にはなったが、視線も合わないし気弱な印象を受ける
「どうも、レイガン殿。ロレンソも、久しぶりだな」
「え、ええ……」
「ロレンソ、お前は黙ってなさい。それで、何か用事でも?」
「父上に会いに来ましたね。誰かさんが苦労ばかりかけるので」
「ほう? とんだ不届き者がいるのですなぁ」
(この狸め……お前のことだよ。最近のし上がってきたという話だが……)
以前は、軍務大臣でもあるゲルボイグ-ダオスの下についていたが……。
そこから鞍替えして、一気に財務大臣までのし上がったらしい。
その裏には、ターレスがいるとも言われているが……。
「ええ、困ったものです。まあ、優秀なレイガン殿には関係ない話ですね」
「ほほ、その通りですなぁ。おっと、お時間をとらせてしまいましたな。どうぞ、お通りくださいませ」
「いえいえ、それでは失礼します」
俺は顔には一切出さずに、その場を立ち去る。
すると、今度は……。
「アレス様、お久しぶりでございます」
「アレス様、お久しぶりでございます」
全く同じ言葉を、似たような雰囲気で言われる。
「これは、ダオス殿。それに、ザガンか」
「随分とご立派になられましたな」
「アレス様、ご活躍は聞いております」
「いえいえ、大したことはしてませんよ」
(さて……言葉こそ丁寧だが、俺を見下すことを隠しきれていないな)
どうやら、こいつらは変わらないということらしい。
ならば、特に用はない。
「それでは急いでますので」
俺はすぐに、その場を立ち去る。
(おそらく、俺を確認しにきたのだろう。何をするのか、誰につくのか……)
城を出た俺は、考えを巡らせる。
(財務大臣と軍務大臣、そして法務大臣か……)
他にもいるが、その三人が宰相の座を巡って争っているって話だ。
伯爵家であるハデス-レイガン、侯爵家であるゲイボルグ-ダオス……。
そして法務大臣である、グングニル-モーリスか……。
今まで、グングニル家は中立を貫いてきた。
できれば、かの家になってほしいが……さて、どうなることやら。
そして……。
「ハァァァァ——」
父上が、大きなため息を吐く。
「正直言って、そうなると思っていた。そして、それが有効だということも……そして、任命するに当たり……父親ではなく、皇帝としての俺が……それを利用しろと囁いた」
(そうか……それもあって悩んでいたのか)
「いえ、それで良いんですよ。あくまでも、今は臣下の立場なのですから」
「そんなことはわかってる! ……す、すまん」
「いえ……その気持ちはとても嬉しいです。俺は父上を愛していますし、愛されていることを幸せだと思います。ですが、それではいけないのです。父上は、皇太子のことを優先してください。それが、この国のために……ひいては、俺たちのためになります」
(皇太子であるライル兄上が大人になったとはいえ……周りの家臣は、俺のことを良く思わないだろうし)
「俺とてわかってる……お前に肩入れしないことが、お前達を一番守る術だということは……! だが、それでは……!」
「父上……ご安心下さい」
「アレス?」
「父上が気兼ねなく俺達と接することができるように……俺、頑張りますから。だから、俺を遠慮なく使ってください」
「っ——!? ……ガキなのは俺の方だな。そうだな、そうできるようにするのが一番の近道かもしれん……」
(父上の顔には疲労が見え隠れしている……当たり前の話で、もう四十歳を軽く超えている。この世界では、もう隠居を考える年代に入ろうとしている……早く楽にさせてあげなくてはいけない)
「では、良いですね?」
「ああ、頼む……指令は追って出す。それまで、屋敷で待機してくれ」
「はい、わかりました」
俺が席を立って、部屋から出る直前……父上のため息が漏れる。
俺はすぐに踵を返して——父上を抱きしめる。
「ア、アレス?」
「父上、肩の力を抜きましょう」
「し、しかし……」
「そんな顔では、エリカに嫌われてしまいますよ?」
「……それは困るな」
「可愛い息子の頼みです……父上、俺をもっと頼ってください。そのために強くなったのですから」
「……それは聞かないわけにはいかんな」
「ええ、そうですよ……じゃあ、帰りますね」
俺は振り返らずに、今度こそ部屋から出て行く。
「アレス様、ありがとうございます」
「いえ、ゼトさん。これも、俺の役目でしょう」
「陛下は、ここのところお忙し過ぎなのです。宰相がいない分、寝る間もなく働き……私には相談に乗ることくらいしか出来ないのが歯痒いです」
「そんなことありませんよ。ゼトさんっていう信頼できる人がいるから、俺達は父上の安全を考える必要がないのですから」
「……私まで励まされてしまいましたか。本当に、大きくなられて……引き留めて申し訳ありません——あとは私にお任せを」
「はい、父上をよろしくお願いします」
ゼトさんにお辞儀をして、俺はその場を立ち去る。
そして、城の中を歩いていると……太ったおっさんと細身の男が向かってくる。
「これはこれは……アレス様ではありませんか」
「ア、アレス様、お久しぶりでございます」
(出たか……財務大臣である、ハデス-レイガンか……そして、隣にいるということはロレンソか?)
以前は傲慢さが滲み出ていたが……何か様子が違う。
細身の長身にはなったが、視線も合わないし気弱な印象を受ける
「どうも、レイガン殿。ロレンソも、久しぶりだな」
「え、ええ……」
「ロレンソ、お前は黙ってなさい。それで、何か用事でも?」
「父上に会いに来ましたね。誰かさんが苦労ばかりかけるので」
「ほう? とんだ不届き者がいるのですなぁ」
(この狸め……お前のことだよ。最近のし上がってきたという話だが……)
以前は、軍務大臣でもあるゲルボイグ-ダオスの下についていたが……。
そこから鞍替えして、一気に財務大臣までのし上がったらしい。
その裏には、ターレスがいるとも言われているが……。
「ええ、困ったものです。まあ、優秀なレイガン殿には関係ない話ですね」
「ほほ、その通りですなぁ。おっと、お時間をとらせてしまいましたな。どうぞ、お通りくださいませ」
「いえいえ、それでは失礼します」
俺は顔には一切出さずに、その場を立ち去る。
すると、今度は……。
「アレス様、お久しぶりでございます」
「アレス様、お久しぶりでございます」
全く同じ言葉を、似たような雰囲気で言われる。
「これは、ダオス殿。それに、ザガンか」
「随分とご立派になられましたな」
「アレス様、ご活躍は聞いております」
「いえいえ、大したことはしてませんよ」
(さて……言葉こそ丁寧だが、俺を見下すことを隠しきれていないな)
どうやら、こいつらは変わらないということらしい。
ならば、特に用はない。
「それでは急いでますので」
俺はすぐに、その場を立ち去る。
(おそらく、俺を確認しにきたのだろう。何をするのか、誰につくのか……)
城を出た俺は、考えを巡らせる。
(財務大臣と軍務大臣、そして法務大臣か……)
他にもいるが、その三人が宰相の座を巡って争っているって話だ。
伯爵家であるハデス-レイガン、侯爵家であるゲイボルグ-ダオス……。
そして法務大臣である、グングニル-モーリスか……。
今まで、グングニル家は中立を貫いてきた。
できれば、かの家になってほしいが……さて、どうなることやら。
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