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青年期~後編~

仕事内容

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あれから、早くも1ヶ月が経過した。

俺は日々の鍛錬や、レナへの魔法の指導……。

束の間の休息の時間には、婚約者とデートしたり……。

とても充実した日々を過ごしていた。





もちろん……重大な仕事をしながら。

「キャァ!?」
「だ、だれかぁ!?」
「ゴブッ!」
「ゴァァ!」

村の中に、ゴブリンが入ろうとするが……。

「消え失せろ——」
「ゴァ!?」
「ゴ、ガ……」

刀を一閃……敵が煙と化す。

「あ、ありがとうございます!」
「いえ、これも皇族の務めですから」
「な、なんと……どうやら、噂は本当だったのか」

(ふむ……やはり、皇族や貴族のイメージが下がっているか)

誰かが、意図的に何かをしているのだろう……。
さて、どうするべきか……。

「アレス様! 魔物の大群が!」

警戒役であるアスナの声に反応して、見てみると……。
今まさに、瘴気が溢れるところだった。

「チッ! 本当に最近多いなっ! カグラ! 寄ってくる敵を倒して時間を稼いでくれ!」
「はっ! お任せを!」

大剣を振り回して、カグラが迫り来る魔物を一刀両断していく。

「セレナ! 俺に合わせろ!」
「はいっ!」

古代魔法の一部を解読し、俺達は新たな力を手に入れた。
俺とセレナは手を繋ぎ……互いの魔力を同調させる。

「「荒れ狂う炎の風よ! 全てを焼き尽くせ——ファイアーストーム炎の竜巻」」

魔物の中心地点から、炎の竜巻が発生し——全てを飲み込む。
逃げようとする者も、風に引き寄せられて焼かれていく。
そして……収まった時、もう何も残ってはいなかった。

「ふぅ……やはり、魔力を相当使うね」
「ふえっ? そうですか?」

(やっぱり、魔力総量はセレナが圧倒的に上か。おそらく、俺の倍くらいはありそうだ)

この合わせ技も、宮廷魔導師クラスでないと使用出来ないものだ。
そもそも、相性が良くないと同調すらできまい。

「すごいのだっ!」
「凄いですねー。やっぱり、魔法は戦局を変えますねー」
「いやいや、溜めるのは時間かかるし……前衛や遊撃があってこそだ」
「そうですよ!」

この四人で任務をしているが、バランスは悪くない。
アスナがいるおかけで、俺が魔法に集中できる。
ここにオルガがいれば、カグラの負担が減るのだが……。
まだ、こちらに帰ってくることはできないらしい。



その後、年老いた男性の村長から話を聞く。

「最近、魔物が多くて……そのせいか、行方不明になる者も……」
「そうですか……申し訳ない」
「い、いえ! アレス様は私達を体を張って救ってくださいました!」
「ですが本来なら、この地の貴族が守るべきなのです」

そう……この地を治めているクソ貴族が兵士などを出し渋っている。
それぞれに領地があり、いくら皇帝でも下手には手が出せない。
それもあって、俺を特殊部隊に任命したのだろう。

「お噂は聞いております……何やら不穏な世の中だと……貴族様は好き勝手にし……魔物は溢れ……教会の者が幅をきかせていると……」
「ええ……残念ながら」
「ですが、アレス様が民に寄り添う方というのは知っております。ましてや、聖女様を婚約者にしております。我々は、貴方を信じております」
「ありがとうございます……! 必ずや、この霧を晴らしてみせましょう」




その後、御礼を言われつつ……皇都へと帰還する。

俺は父上に、セレナはコルンさんに呼ばれたので……。

一緒に、城へと歩いていく。

「しかし……聖女だったり、アイドルだったり忙しいな?」
「あぅぅ……わたしは何もしてないのにぃ……」

(どうやら、平民の間では絶大な人気を誇っているらしい)

誰にでも優しく、怪我人を発見したら無償で治療をし……。
その可憐な容姿で微笑み……次々と骨抜きにしていくと。

「俺も、何回決闘を申し込まれたか……」
「ご、ごめんなさい……」
「良いさ——君を誰にも渡すつもりはないし」
「は、はぅ!?」

プシューと煙が出るように、みるみるうちに赤くなっていく。

(いや、可愛いよなぁ……最近、ブレーキが効かなくなりそうで怖いくらいだ)

だが、少なくとも十五歳になるまでは手を出さないと決めている。

……頑張れ、俺。





城の途中で分かれて、俺は父上の私室に向かう。

「ゼノさん、こんにちは」
「ええ、こんにちは。では、お入りください」
「はい、失礼します」

中に入り、父上と対面する。

「よう、アレス」
「お疲れ様です、父上」
「お前こそな。まあ、まずは座ってくれ」

ソファーに座り、お茶を飲む。

「まずは報告をしますね。無事に魔物討伐を終えました」
「うむ、ご苦労だった。やはり、出現率が上がっているか……」
「ええ、そうですね。それに民の不安も高まっています」
「そこだな……こっちも大臣共が醜い争いばかりで、色々と手が回らない」
「新しい宰相を決めることで?」

未だに空白のままだが……国の内政のトップが不在では、進むものも進まないだろう。

「ああ、あのバカ共め……互いに足を引っ張りおって。だが、一番の馬鹿は俺か……それを知りつつ、手が出せんとは」
「何か、問題があったのですか?」
「うむ……実はな、行方不明になる者が続出しているのだ。今は、そっちの問題を抱えていてな」
「なるほど……そういえば、村でも聞きましたね」

すると……父上の表情が変わる。

「……どう思う?」
「少しきな臭いですね」
「やはり、そう思うか」
「行方不明者の、性別や年齢の統計はありますか?」
「それが……わずかに若い娘が多いことがわかった」

(それはまた……何ともきな臭くなってきたね)

「誰がが、意図的に攫っていると?」
「ああ、しかも……魔物に襲われたことにしてな」
「なるほど……そうすれば、言い訳は幾らでも出来ますね」
「そうなのだ……確固たる証拠がないと、奴らを罰することはできない」

(うむ……これは考えていたことを実行に移す時が来たかな)

ずっと迷っていた……この力を使うことに。
そして……綺麗事ではない仕事になることがわかっていたから。

「父上、提案があります」
「何? ……言ってみろ」

俺は父上に、とある提案をする。

「な、何!? 反対だ! 危険が過ぎる!」
「しかし、確実に証拠は掴めます」
「そ、それは……しかし、それはもはや皇族の仕事ではない」
「これも、民の為です。父上、俺に——

俺は覚悟を決めて、父上を見つめるのだった……。
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