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青年期~後編~
任命され、認められる
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それから数日が過ぎ……。
「ロックブラスト!」
「そうです! 出す前にどこを狙うか、的との距離はどんなかを意識してください」
「おっ、今のはいいな。あとは、もっと圧縮して放つといい」
「はいっ! 師匠!」
庭にて、レナの魔法の鍛錬を行っている。
日々の日課に取り入れ、俺とセレナが指導にあたる。
自分で言うのもあれだが……贅沢な話だ。
そのまま続けていると……見覚えのある人が庭に入ってくる。
カイゼルと一言二言話してから、こちらに向かってくる。
「あら~! なんか、良い感じの子がいるわね!」
「誰なのじゃ!?」
「コルンさんだよ!」
「お二人とも、拙者と少し遊びましょう」
カグラがそう言い、二人を部屋へと連れて行く。
(へぇ……そういう気配りもできるようになったのか)
ちなみに、アスナはカエラに変わって家事などをこなしている。
母上の話し相手になったり……正直言って、めちゃくちゃ助かっている。
「コルン先輩! こんにちは!」
「こんにちは、セレナさん。ふふ、良かったわね? 愛しのアレス君に会えて」
「あぅぅ……はぃ」
「どうも先生、お久しぶりです。どうやら、色々とお世話になったようで……」
「アレス君、もう先生じゃないからねー」
「確かに……コルンさんと呼ばせていただきますね」
(……それにしても、見た目が全く変わっていないのだが? 相変わらず小さいし、いつの間にか見下ろしてるし)
「むっ! 今、小さいと思いましたね!?」
「い、いえ! 滅相もない!」
「別に良いですよ……私なんて、このまま一人で生きていくのよ……アレス君は三人も婚約者がいるのに……グスッ」
「せ、先輩! 泣かないでくださいよぉ~! きっと良い人いますから!」
「ええいっ! 何を言うか! このおっぱいめ!」
素早い動きでセレナの後ろに回り……胸を揉みしだいている。
「キャァァァ!」
「へへへ、こうか? こうが良いのか?」
「や、やめてください! ア、アレス様がいるのに~!」
「ふふふ、アレス君だって見たいでしょ?」
(……すごいな、あんなに形が変わるのか……おっと、いかんいかん)
「先生……見たいし触りたいのは否定しませんが——そろそろ、怒りますよ?」
「ふえっ~!?」
「……良い顔になったわね~。ますます、ラグナに似てきたわ」
「そうですかね? 顔は母上譲りな気がしますけど……」
「雰囲気というか……さて、私も遊びに来たわけじゃないの」
「いや、それはそうでしょうね」
(仮にも、宮廷魔導師なんだし……見た目は子供だけど)
「何か?」
「いえ、何も。それで?」
「えっと……これね、はい」
何やら封筒を手渡される。
「見ても良いですか?」
「ええ、平気よ」
封筒を開けて、紙を開いてみると……。
「なになに……其方を特務隊隊長に任命する……?」
(聞いたことない役職だな……)
我が国は、大将をトップとした分かりやすい階級制だ。
大将、中将、少将、大佐、中佐……という感じに。
「これは?」
「皇帝陛下が新しく作った役職よ。既存の軍に組み込むと、色々と問題があるからって。例えば、大臣達が煩かったり……軍上層部が自分の立場を脅かすと思ったりとか。この役職には昇格もないし、彼らに命令することもできないから」
(なるほど……軍内部を変えることはできないが、これはこれでありだな)
「という建前で、大臣達を説得したんですね?」
「ふふ、そういうことね」
「ふえっ? どういう意味ですか?」
「つまりは……俺は誰にも命令出来ないし、昇格することもない。そのかわりに、誰の命令も聞く必要がないってことだ——任命した皇帝陛下以外には」
「……あっ! そういうことですね! 皇帝陛下直属の特殊部隊ってことですよね?」
「ええ、それで合ってるわね」
(父上……中々考えましたね。これなら、渋々ながら大臣達や将軍達も認めるだろう)
彼らは自分たちの役職さえ脅かさなければ、それで良いというスタンスだから。
「じゃあ、これで自由に動けるってことですね! 魔物討伐なんかでも、やっぱり上下関係が邪魔することもありますし……」
「うん、それもあるよね。しかも……おそらく、本来の狙いはそれじゃない」
「へぇ? わかるのね?」
コルンさんの目つきが変わる……。
(やっぱり、そっち側の人間だったのか。全く、全然気づかなかったなぁ……いかに、俺達が子供だったってことだな)
「これで、炙り出せってことですね? ……腐った者達を——それこそ、貴女のように」
「あら? それにも気づいたの?」
「ええ、貴女が父上の命令を受けて学校にいたということは……そもそも、直属の部下ってことですよね?」
(つまり、今の俺と変わらないってことは……)
「ええ、そうね」
「俺たちを見守るという任務に嘘はないと思いますけど……何気ない会話から、子供達の性格ももちろんのこと……その親とかも知ろうとしたのでは?」
「どうして、そう思うの?」
「だって……俺が卒業するまでいたじゃないですか」
「ふえっ? ……あっ——そっか、皇族の方々がいたから……先輩は学校に……でも、一番年下であるアレス様だけになっても……先輩はいました」
(そう……俺を守るだけという理由だけでは弱い)
「ふふ……合格ね。いや~昔から頭が良いとは思ってだけど……これなら、仕事仲間としてやれそうだわ」
「……それも含めての会話だった?」
「それも正解ね。私も——命をかけてるし」
その目はいつものお調子者ではなく、威厳のある大人の姿だった。
どうやら俺も、大人に近い者として……。
背中を預ける者として、認められたようだ。
「ロックブラスト!」
「そうです! 出す前にどこを狙うか、的との距離はどんなかを意識してください」
「おっ、今のはいいな。あとは、もっと圧縮して放つといい」
「はいっ! 師匠!」
庭にて、レナの魔法の鍛錬を行っている。
日々の日課に取り入れ、俺とセレナが指導にあたる。
自分で言うのもあれだが……贅沢な話だ。
そのまま続けていると……見覚えのある人が庭に入ってくる。
カイゼルと一言二言話してから、こちらに向かってくる。
「あら~! なんか、良い感じの子がいるわね!」
「誰なのじゃ!?」
「コルンさんだよ!」
「お二人とも、拙者と少し遊びましょう」
カグラがそう言い、二人を部屋へと連れて行く。
(へぇ……そういう気配りもできるようになったのか)
ちなみに、アスナはカエラに変わって家事などをこなしている。
母上の話し相手になったり……正直言って、めちゃくちゃ助かっている。
「コルン先輩! こんにちは!」
「こんにちは、セレナさん。ふふ、良かったわね? 愛しのアレス君に会えて」
「あぅぅ……はぃ」
「どうも先生、お久しぶりです。どうやら、色々とお世話になったようで……」
「アレス君、もう先生じゃないからねー」
「確かに……コルンさんと呼ばせていただきますね」
(……それにしても、見た目が全く変わっていないのだが? 相変わらず小さいし、いつの間にか見下ろしてるし)
「むっ! 今、小さいと思いましたね!?」
「い、いえ! 滅相もない!」
「別に良いですよ……私なんて、このまま一人で生きていくのよ……アレス君は三人も婚約者がいるのに……グスッ」
「せ、先輩! 泣かないでくださいよぉ~! きっと良い人いますから!」
「ええいっ! 何を言うか! このおっぱいめ!」
素早い動きでセレナの後ろに回り……胸を揉みしだいている。
「キャァァァ!」
「へへへ、こうか? こうが良いのか?」
「や、やめてください! ア、アレス様がいるのに~!」
「ふふふ、アレス君だって見たいでしょ?」
(……すごいな、あんなに形が変わるのか……おっと、いかんいかん)
「先生……見たいし触りたいのは否定しませんが——そろそろ、怒りますよ?」
「ふえっ~!?」
「……良い顔になったわね~。ますます、ラグナに似てきたわ」
「そうですかね? 顔は母上譲りな気がしますけど……」
「雰囲気というか……さて、私も遊びに来たわけじゃないの」
「いや、それはそうでしょうね」
(仮にも、宮廷魔導師なんだし……見た目は子供だけど)
「何か?」
「いえ、何も。それで?」
「えっと……これね、はい」
何やら封筒を手渡される。
「見ても良いですか?」
「ええ、平気よ」
封筒を開けて、紙を開いてみると……。
「なになに……其方を特務隊隊長に任命する……?」
(聞いたことない役職だな……)
我が国は、大将をトップとした分かりやすい階級制だ。
大将、中将、少将、大佐、中佐……という感じに。
「これは?」
「皇帝陛下が新しく作った役職よ。既存の軍に組み込むと、色々と問題があるからって。例えば、大臣達が煩かったり……軍上層部が自分の立場を脅かすと思ったりとか。この役職には昇格もないし、彼らに命令することもできないから」
(なるほど……軍内部を変えることはできないが、これはこれでありだな)
「という建前で、大臣達を説得したんですね?」
「ふふ、そういうことね」
「ふえっ? どういう意味ですか?」
「つまりは……俺は誰にも命令出来ないし、昇格することもない。そのかわりに、誰の命令も聞く必要がないってことだ——任命した皇帝陛下以外には」
「……あっ! そういうことですね! 皇帝陛下直属の特殊部隊ってことですよね?」
「ええ、それで合ってるわね」
(父上……中々考えましたね。これなら、渋々ながら大臣達や将軍達も認めるだろう)
彼らは自分たちの役職さえ脅かさなければ、それで良いというスタンスだから。
「じゃあ、これで自由に動けるってことですね! 魔物討伐なんかでも、やっぱり上下関係が邪魔することもありますし……」
「うん、それもあるよね。しかも……おそらく、本来の狙いはそれじゃない」
「へぇ? わかるのね?」
コルンさんの目つきが変わる……。
(やっぱり、そっち側の人間だったのか。全く、全然気づかなかったなぁ……いかに、俺達が子供だったってことだな)
「これで、炙り出せってことですね? ……腐った者達を——それこそ、貴女のように」
「あら? それにも気づいたの?」
「ええ、貴女が父上の命令を受けて学校にいたということは……そもそも、直属の部下ってことですよね?」
(つまり、今の俺と変わらないってことは……)
「ええ、そうね」
「俺たちを見守るという任務に嘘はないと思いますけど……何気ない会話から、子供達の性格ももちろんのこと……その親とかも知ろうとしたのでは?」
「どうして、そう思うの?」
「だって……俺が卒業するまでいたじゃないですか」
「ふえっ? ……あっ——そっか、皇族の方々がいたから……先輩は学校に……でも、一番年下であるアレス様だけになっても……先輩はいました」
(そう……俺を守るだけという理由だけでは弱い)
「ふふ……合格ね。いや~昔から頭が良いとは思ってだけど……これなら、仕事仲間としてやれそうだわ」
「……それも含めての会話だった?」
「それも正解ね。私も——命をかけてるし」
その目はいつものお調子者ではなく、威厳のある大人の姿だった。
どうやら俺も、大人に近い者として……。
背中を預ける者として、認められたようだ。
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