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青年期~後編~
皇太子との再会
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覚悟を決めた俺は、父上の元に挨拶に向かう。
そして、城への橋を渡っていると……。
「おい、アレス」
「あ、兄上?」
そこには護衛を連れた皇太子がいた。
その姿は、もはや子供ではない。
威風堂々たる立ち姿、成長した肉体と大人びた顔。
それもそうだ、すでに成人を迎えているはずだ。
俺は参加していないが、儀式も行なったと手紙には書いてあった。
つまり……正式に皇太子ということだ。
「おい、お前たち。俺はアレスと話がある。人払いをしろ」
「はっ!」
護衛達が、俺とライル兄上だけの空間を作る。
「さて……色々と大暴れをしたらしいな?」
「まあ……半分は成り行きというか」
「ふん、どうせお人好しのお前のことだ。その第二王子に肩入れしたのだろう?」
「間違ってはないですね」
「大臣共が、戦々恐々としてたぞ? 自らが皇位に就くために、あちらの国王を味方につけたのではないかと。さらには、姉上とその旦那と手を組んだと」
(……やっぱり、そう思われてるか)
「そんなつもりはないんですけどね」
「ふっ、わかっている。しかし、あいつらは自分の考えていることが正しいと思い込んでいる。この後、どうするつもりだ?」
「兄上は?」
「質問に質問で返すな……と言いたいところだが、許すとしよう。俺は正式に皇太子になった。そして、これから国の内部へ入り込む。腐った者どもを排除しつつ、皇帝としての道筋を示すつもりだ」
「そうですか」
「今はうちの国も色々あってな……」
「えっ?」
「いや、これは父上から聞くといい。で、お前は?」
(……なんだ? 何かあったのか? ……まあ、いい)
「では、俺は強くなります」
「ほう?」
「たとえ、何があろうとも大事な人達を守れる強さを」
「……貴様らしいな。しかし、皇帝の器ではない」
「そうかもしれませんね。では、それは兄上にお願いします」
「ははっ! ……ああ、任せておけ。では、お前は外側で頑張るということだな?」
「ええ、魔物退治につくかと思います」
「そうか、ならば良い。俺のために役立ててやる。では、行くといい」
それたけ言って、兄上は城に戻っていった。
(別に一緒に行けばいいのに……まあ、馴れ合うつもりはないってことだね)
俺としても、それで構わない。
兄上がきちんと国を治めてくれるなら、それに越したことはないしね。
そして、城に入ると……。
「ゼノさん」
「お久しぶりでございます、アレス様。随分とご成長されましたね」
「ありがとうございます。ええ、研鑽を積んできました」
「……どうやら、留学して正解だったようですね」
「えっ?」
「顔つきが違いますから。迷いは晴れましたか?」
「どうでしょう……でも、俺の大切な人達に恥じない自分になろうと思います」
「そうでございますか……おっと、失礼いたしました。皇帝陛下がお待ちしておりますので、私についてきてください」
「はい、お願いします」
(……なんで、わざわざゼトさんが待っていたのかはわからないが。まあ、ついていけばわかることだな)
その後、城の中を歩いていると……。
「お、おい、アレス様か?」
「随分と大きくなって……まるで銀髪の貴公子のようだ」
「我らがアイドルの婚約者……悔しいが、お似合いだ」
(アイドル? なんのことだ?)
気になるが、そのままついていくと……。
普段の私室ではなく、謁見の間に到着する。
(なるほど……つまりは、皇帝陛下と皇子という立場ってことだ。そのために、ゼノさんを迎えに寄越したってことか)
俺は意識を切り替え、意識的に背筋を伸ばす。
「アレス様、武器をお預かりいたします。そして、このままお進みください」
「はい、わかりました。案内、ありがとうございます」
俺は武器を手渡し、謁見の間を進んでいく。
皇子である俺は下を向く必要はないので……。
あえて、堂々と歩いていく。
そして、居並ぶ大臣達の視線を感じつつ、皇帝陛下に膝をつく。
「アレス、立ち上がり話をすることを許可する」
「はっ、皇帝陛下。第三皇子アレス、ただ今帰還いたしました」
「うむ……第三皇子アレスよ、よくぞ帰った。元気そうで何よりだ……それに、随分と逞しくなった」
「ありがとうございます。皇帝陛下もお変わりなくお元気そうで何よりです」
「他国でのお主の話は聞いている。大活躍だったそうだな?」
「いえ、私など大したことはしておりません。しかし、この国のために全力で対応いたしました」
「そうだ。もし、あのまま第一王子が王位についていたら、我が国まで混乱に巻き込まれる可能性もあった。さて……褒美をやらねばならんな。何が良い?」
「そうですね……戦う機会があればと」
「ほう? 国の内政には興味ないと?」
「はい、そうですね。それは皇太子にお任せいたします」
その瞬間——大臣達の顔色が変わる。
(ん? 何かまずいこと言ったか?)
「そうか、わかった。それを聞いて余も安心だ。皇子として、皇太子を支えてやってくれ」
「畏まりました」
「では、役職は追って知らせる。ひとまず、下がるといい」
俺は一礼をして、謁見の間から退出する。
「ふぅ……」
「お疲れ様でした。大変ご立派だったかと」
「ゼノさん、ありがとうございます」
「それでは、案内するのでついてきてください」
「あれ? まだ何かあるんですか?」
「ふふ、皇帝陛下の相手をしてあげてください。ずっと、待っていましたから」
「そういうことですか。仕方ない父上ですね。ええ、わかりました」
「素直じゃないところなんかは、相変わらずそっくりですね」
「……そうですかね」
「照れ屋なところもですね」
その後、皇族と近衛騎士のみが入れる場所へと案内される。
「では、少し部屋でお休みください。後ほど陛下が来ますので」
「わかりました。では、少し休ませていただきますね」
俺は部屋に入り、ソファーに腰をかける。
「ふぅ……流石に疲れたな」
帰ってきてから、ここまで休み無しだし。
(ゼトさんが見張りにつくなら安心だし、少し休ませてもらうか)
俺はソファーに身を委ね、微睡みの中へ沈んでいく……。
そして、城への橋を渡っていると……。
「おい、アレス」
「あ、兄上?」
そこには護衛を連れた皇太子がいた。
その姿は、もはや子供ではない。
威風堂々たる立ち姿、成長した肉体と大人びた顔。
それもそうだ、すでに成人を迎えているはずだ。
俺は参加していないが、儀式も行なったと手紙には書いてあった。
つまり……正式に皇太子ということだ。
「おい、お前たち。俺はアレスと話がある。人払いをしろ」
「はっ!」
護衛達が、俺とライル兄上だけの空間を作る。
「さて……色々と大暴れをしたらしいな?」
「まあ……半分は成り行きというか」
「ふん、どうせお人好しのお前のことだ。その第二王子に肩入れしたのだろう?」
「間違ってはないですね」
「大臣共が、戦々恐々としてたぞ? 自らが皇位に就くために、あちらの国王を味方につけたのではないかと。さらには、姉上とその旦那と手を組んだと」
(……やっぱり、そう思われてるか)
「そんなつもりはないんですけどね」
「ふっ、わかっている。しかし、あいつらは自分の考えていることが正しいと思い込んでいる。この後、どうするつもりだ?」
「兄上は?」
「質問に質問で返すな……と言いたいところだが、許すとしよう。俺は正式に皇太子になった。そして、これから国の内部へ入り込む。腐った者どもを排除しつつ、皇帝としての道筋を示すつもりだ」
「そうですか」
「今はうちの国も色々あってな……」
「えっ?」
「いや、これは父上から聞くといい。で、お前は?」
(……なんだ? 何かあったのか? ……まあ、いい)
「では、俺は強くなります」
「ほう?」
「たとえ、何があろうとも大事な人達を守れる強さを」
「……貴様らしいな。しかし、皇帝の器ではない」
「そうかもしれませんね。では、それは兄上にお願いします」
「ははっ! ……ああ、任せておけ。では、お前は外側で頑張るということだな?」
「ええ、魔物退治につくかと思います」
「そうか、ならば良い。俺のために役立ててやる。では、行くといい」
それたけ言って、兄上は城に戻っていった。
(別に一緒に行けばいいのに……まあ、馴れ合うつもりはないってことだね)
俺としても、それで構わない。
兄上がきちんと国を治めてくれるなら、それに越したことはないしね。
そして、城に入ると……。
「ゼノさん」
「お久しぶりでございます、アレス様。随分とご成長されましたね」
「ありがとうございます。ええ、研鑽を積んできました」
「……どうやら、留学して正解だったようですね」
「えっ?」
「顔つきが違いますから。迷いは晴れましたか?」
「どうでしょう……でも、俺の大切な人達に恥じない自分になろうと思います」
「そうでございますか……おっと、失礼いたしました。皇帝陛下がお待ちしておりますので、私についてきてください」
「はい、お願いします」
(……なんで、わざわざゼトさんが待っていたのかはわからないが。まあ、ついていけばわかることだな)
その後、城の中を歩いていると……。
「お、おい、アレス様か?」
「随分と大きくなって……まるで銀髪の貴公子のようだ」
「我らがアイドルの婚約者……悔しいが、お似合いだ」
(アイドル? なんのことだ?)
気になるが、そのままついていくと……。
普段の私室ではなく、謁見の間に到着する。
(なるほど……つまりは、皇帝陛下と皇子という立場ってことだ。そのために、ゼノさんを迎えに寄越したってことか)
俺は意識を切り替え、意識的に背筋を伸ばす。
「アレス様、武器をお預かりいたします。そして、このままお進みください」
「はい、わかりました。案内、ありがとうございます」
俺は武器を手渡し、謁見の間を進んでいく。
皇子である俺は下を向く必要はないので……。
あえて、堂々と歩いていく。
そして、居並ぶ大臣達の視線を感じつつ、皇帝陛下に膝をつく。
「アレス、立ち上がり話をすることを許可する」
「はっ、皇帝陛下。第三皇子アレス、ただ今帰還いたしました」
「うむ……第三皇子アレスよ、よくぞ帰った。元気そうで何よりだ……それに、随分と逞しくなった」
「ありがとうございます。皇帝陛下もお変わりなくお元気そうで何よりです」
「他国でのお主の話は聞いている。大活躍だったそうだな?」
「いえ、私など大したことはしておりません。しかし、この国のために全力で対応いたしました」
「そうだ。もし、あのまま第一王子が王位についていたら、我が国まで混乱に巻き込まれる可能性もあった。さて……褒美をやらねばならんな。何が良い?」
「そうですね……戦う機会があればと」
「ほう? 国の内政には興味ないと?」
「はい、そうですね。それは皇太子にお任せいたします」
その瞬間——大臣達の顔色が変わる。
(ん? 何かまずいこと言ったか?)
「そうか、わかった。それを聞いて余も安心だ。皇子として、皇太子を支えてやってくれ」
「畏まりました」
「では、役職は追って知らせる。ひとまず、下がるといい」
俺は一礼をして、謁見の間から退出する。
「ふぅ……」
「お疲れ様でした。大変ご立派だったかと」
「ゼノさん、ありがとうございます」
「それでは、案内するのでついてきてください」
「あれ? まだ何かあるんですか?」
「ふふ、皇帝陛下の相手をしてあげてください。ずっと、待っていましたから」
「そういうことですか。仕方ない父上ですね。ええ、わかりました」
「素直じゃないところなんかは、相変わらずそっくりですね」
「……そうですかね」
「照れ屋なところもですね」
その後、皇族と近衛騎士のみが入れる場所へと案内される。
「では、少し部屋でお休みください。後ほど陛下が来ますので」
「わかりました。では、少し休ませていただきますね」
俺は部屋に入り、ソファーに腰をかける。
「ふぅ……流石に疲れたな」
帰ってきてから、ここまで休み無しだし。
(ゼトさんが見張りにつくなら安心だし、少し休ませてもらうか)
俺はソファーに身を委ね、微睡みの中へ沈んでいく……。
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