127 / 257
青年期~前編~
幕間~その1~
しおりを挟む
グロリア王国を出た俺たちは、無事にフラムベルク侯爵領に到着する。
すると……あの人が待ち構えていた。
「アレス!」
「おっと……姉上、相変わらずですね」
飛び出してきた姉上をしっかりと受け止める。
「あら……大きくなったわねっ! もう目線が違うわ!」
「まあ、俺も十四歳になりますから」
「……あっという間に大きくなって。もう子供扱いはできないわね」
「いえ、して頂けると嬉しいですけどね。ヒルダ姉さんにとっては、俺はいつまでも可愛い弟のつもりですから」
「ホント!? やったわ! ……ところで、その可愛い子は誰?」
「は、初めまして! レナ-グロリアと申します!」
レナはガチガチに緊張しているようだ。
無理もない、見ず知らずの土地に一人で来たんだしな。
「姉さん、この子は俺の弟子になったんだ。これから一年ほど預かる予定なんだ」
「そうなのね……ヒルダ-フラムベルクよ、よろしくね」
「は、はいっ! か、カッコいいですねっ!」
「あら! 良い子じゃない!」
「うひゃあ!?」
「姉さん、抱きしめるのはほどほどにね……」
すると……あの方も歩いてくる。
「ロンド義兄さん、お久しぶりです」
「ええ、お久しぶりですね。アレス殿もお元気そうで。それにしても、成長しましたね」
「自分ではあまりわからないですけどね」
「身体や見た目は当然として……立ち姿が違いますね。何か成果がありましたか?」
「ええ、まあ……少し人払いはできますか?」
「ふむ……わかりました。一応、事の顛末はロナード殿から聞いていますが、アレス殿からもお聞かせください」
「アスナ、ダインさん」
「はーい、お任せを~」
「ええ、我々が見張りをします」
後ろにいた二人に見張りを頼み、大きな木の下で三人で密談をする。
「ヒルダ、この上に」
「あら、ありがとう」
ごく自然に、ロンド義兄さんがヒルダ姉さんが座る場所に布をひく。
(へぇ……自然な空気感だし、仲も良さそうだ。本当に良かった……それに、父上にも良い報告ができそうだね)
「姉さん、もしかして……?」
「あら、気づかれたわね。そうなの……子供ができたわ」
「お、おめでとうございます!」
(やっぱり、そうだったか。少し空気が柔らかくなったし、二人の雰囲気も違ったし)
「あ、ありがとう……私に育てられるかな?」
「ええ、出来ますよ」
「でも、私も母上みたいに……」
「平気ですよ、姉さん。貴女なら立派な母親になれます。俺が保証しますよ」
「アレス……うん! 頑張るわ! アレスが言うんだもの!」
「すみません、アレス殿。本来なら、私の役目なのですが……」
「いえ、こちらこそ出しゃばって申し訳ない」
「いえいえ、本当に助かります。生まれてくる子も、可愛がってくれますか?」
「ええ、もちろんです」
「ふふ、良かった」
「ええ、本当に」
(そっか……子供がいるんだ。こりゃ、無茶しないように釘を刺しておかないとね)
「それでは、本題に入りましょう」
「ええ、こちら側では……」
一連の流れと、ロナードにも話した推察を伝える。
「なるほど……この世界がおかしいと思う人が増えたのは嬉しいことです。それが、ブリューナグ家の嫡男なら尚更のこと。そして、ロナード殿が王位にですね。いや、望んではいましたが……こういう形になるとは」
「ええ、俺としても色々と驚きがあります」
「教会……やはり、何かしらの考えがあるということですね。そして、我が家に関係するかもしれない話ですね?」
「ええ、歴史は教会によって捻じ曲げられてきたのではないかと」
「……ふむ、それが我が家が皇位を継承する家だと主張する理由なのかもしれないと」
「あくまでも推測の域でしかありませんが……」
「いえ、貴重なご意見でした」
その後も色々推測はするが、答えが出るわけではないので……。
「それは、ひとまず置いときまして……我々の方も、少しずつ前に進んでいます」
「あのねっ! ロンドにも味方が増えてきたの!」
「いえいえ、それもヒルダのおかげですよ。街の者や、領地で働いてる役人や兵士にも大人気ですからね」
「はは、相変わらずですか。姉さんは、昔から人気者でしたからね」
「むぅ……私は、別に普通にしてるだけよ」
「姉さん、それが難しいんですよ」
「ええ、全くです」
「二人して……まあ、仲良しならいいわ」
俺とロンド義兄さんは、顔を見合わせて……微笑む。
きっと、似たような気持ちなのだろう。
「なるほど……それでは、後継に近づいたと?」
「ええ、一応ですがね。いち早く子供も出来たことで、父上の関心が向きましたね。どうやら、ヒルダのことも気に入った様子で……これは驚きましたね」
「何をしたんです?」
「普通よ? お庭で剣をふるっていたから、思い切ってお相手をお願いしたわ。そしたら、笑ってくださったわ」
「ははっ! それはそうですよね!」
(まさか、相手も皇女が剣を振るうとは思うまい。いくら噂で色々聞いているといえ……相変わらず、型破りな人だ)
「父上に言われましたよ……『お前には戦う力はない。しかし、それを補う頭脳がある。そして、良い妻を迎えたな。強く、気高く、人を惹きつける……お前に足りなかったものだ』と。ヒルダを選んだのは間違いじゃなかった」
「ふふ~そうでしょ?」
「ええ、ありがとうございます」
(うん、継承云々はさておき……姉さんが幸せそうで良かった。俺にとっては、それだけで充分だ。つぎは……俺自身の立場を考えていかないとね
すると……あの人が待ち構えていた。
「アレス!」
「おっと……姉上、相変わらずですね」
飛び出してきた姉上をしっかりと受け止める。
「あら……大きくなったわねっ! もう目線が違うわ!」
「まあ、俺も十四歳になりますから」
「……あっという間に大きくなって。もう子供扱いはできないわね」
「いえ、して頂けると嬉しいですけどね。ヒルダ姉さんにとっては、俺はいつまでも可愛い弟のつもりですから」
「ホント!? やったわ! ……ところで、その可愛い子は誰?」
「は、初めまして! レナ-グロリアと申します!」
レナはガチガチに緊張しているようだ。
無理もない、見ず知らずの土地に一人で来たんだしな。
「姉さん、この子は俺の弟子になったんだ。これから一年ほど預かる予定なんだ」
「そうなのね……ヒルダ-フラムベルクよ、よろしくね」
「は、はいっ! か、カッコいいですねっ!」
「あら! 良い子じゃない!」
「うひゃあ!?」
「姉さん、抱きしめるのはほどほどにね……」
すると……あの方も歩いてくる。
「ロンド義兄さん、お久しぶりです」
「ええ、お久しぶりですね。アレス殿もお元気そうで。それにしても、成長しましたね」
「自分ではあまりわからないですけどね」
「身体や見た目は当然として……立ち姿が違いますね。何か成果がありましたか?」
「ええ、まあ……少し人払いはできますか?」
「ふむ……わかりました。一応、事の顛末はロナード殿から聞いていますが、アレス殿からもお聞かせください」
「アスナ、ダインさん」
「はーい、お任せを~」
「ええ、我々が見張りをします」
後ろにいた二人に見張りを頼み、大きな木の下で三人で密談をする。
「ヒルダ、この上に」
「あら、ありがとう」
ごく自然に、ロンド義兄さんがヒルダ姉さんが座る場所に布をひく。
(へぇ……自然な空気感だし、仲も良さそうだ。本当に良かった……それに、父上にも良い報告ができそうだね)
「姉さん、もしかして……?」
「あら、気づかれたわね。そうなの……子供ができたわ」
「お、おめでとうございます!」
(やっぱり、そうだったか。少し空気が柔らかくなったし、二人の雰囲気も違ったし)
「あ、ありがとう……私に育てられるかな?」
「ええ、出来ますよ」
「でも、私も母上みたいに……」
「平気ですよ、姉さん。貴女なら立派な母親になれます。俺が保証しますよ」
「アレス……うん! 頑張るわ! アレスが言うんだもの!」
「すみません、アレス殿。本来なら、私の役目なのですが……」
「いえ、こちらこそ出しゃばって申し訳ない」
「いえいえ、本当に助かります。生まれてくる子も、可愛がってくれますか?」
「ええ、もちろんです」
「ふふ、良かった」
「ええ、本当に」
(そっか……子供がいるんだ。こりゃ、無茶しないように釘を刺しておかないとね)
「それでは、本題に入りましょう」
「ええ、こちら側では……」
一連の流れと、ロナードにも話した推察を伝える。
「なるほど……この世界がおかしいと思う人が増えたのは嬉しいことです。それが、ブリューナグ家の嫡男なら尚更のこと。そして、ロナード殿が王位にですね。いや、望んではいましたが……こういう形になるとは」
「ええ、俺としても色々と驚きがあります」
「教会……やはり、何かしらの考えがあるということですね。そして、我が家に関係するかもしれない話ですね?」
「ええ、歴史は教会によって捻じ曲げられてきたのではないかと」
「……ふむ、それが我が家が皇位を継承する家だと主張する理由なのかもしれないと」
「あくまでも推測の域でしかありませんが……」
「いえ、貴重なご意見でした」
その後も色々推測はするが、答えが出るわけではないので……。
「それは、ひとまず置いときまして……我々の方も、少しずつ前に進んでいます」
「あのねっ! ロンドにも味方が増えてきたの!」
「いえいえ、それもヒルダのおかげですよ。街の者や、領地で働いてる役人や兵士にも大人気ですからね」
「はは、相変わらずですか。姉さんは、昔から人気者でしたからね」
「むぅ……私は、別に普通にしてるだけよ」
「姉さん、それが難しいんですよ」
「ええ、全くです」
「二人して……まあ、仲良しならいいわ」
俺とロンド義兄さんは、顔を見合わせて……微笑む。
きっと、似たような気持ちなのだろう。
「なるほど……それでは、後継に近づいたと?」
「ええ、一応ですがね。いち早く子供も出来たことで、父上の関心が向きましたね。どうやら、ヒルダのことも気に入った様子で……これは驚きましたね」
「何をしたんです?」
「普通よ? お庭で剣をふるっていたから、思い切ってお相手をお願いしたわ。そしたら、笑ってくださったわ」
「ははっ! それはそうですよね!」
(まさか、相手も皇女が剣を振るうとは思うまい。いくら噂で色々聞いているといえ……相変わらず、型破りな人だ)
「父上に言われましたよ……『お前には戦う力はない。しかし、それを補う頭脳がある。そして、良い妻を迎えたな。強く、気高く、人を惹きつける……お前に足りなかったものだ』と。ヒルダを選んだのは間違いじゃなかった」
「ふふ~そうでしょ?」
「ええ、ありがとうございます」
(うん、継承云々はさておき……姉さんが幸せそうで良かった。俺にとっては、それだけで充分だ。つぎは……俺自身の立場を考えていかないとね
21
お気に入りに追加
2,753
あなたにおすすめの小説
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!
ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。
その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。
ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。
それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。
そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。
※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる