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青年期~前編~

決着

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 生き残りは……いないか。

 奴ら二人に始末されてしまったようだな。

「チッ! すまねえ!」

「いや、俺も逃してしまいましたから。それに、深追いはしない方が良いです。今回の目的は、あいつらを倒すことじゃないですし」

「まあ、そうだな。けっ、相変わらず気味が悪い奴らだぜ」

「とりあえず、ここは人に任せて、ロナードの所に戻りましょう」

 生き残りの兵士に後を任せ、ロナードの所に戻ると……。

「ライト! 賊を雇い、民に犠牲を出すとは! 貴様には王になる資格はないっ!」

「う、うるさいっ! 平民の血を引くお前よりはマシだっ!」

「我が国に、妾の子が王位についてはいけないなどという決まりはないっ! たまたま、今までがそうだっただけである!」

「黙れ黙れ黙れ………黙れぇぇ——!! 

(子供みたいに喚いて……あれでは、自ら王の器がないと言っているようなものだ)

「ロナード、説得は無理そうか?」

「ああ、そのようだ。すまぬな、お前達に敵を任せてしまったのに」

「いや、こちらも逃してしまったよ。さて……橋の鎖は壊してもいいかな?」

「いけるのか? 王城に使うだけあって、頑丈に作られてるぞ?」

 俺は鞘から刀を抜き……。

「ええ、これならいけます」

「うむ……不思議な武器よな。この国では見たことがない」

「作り手が、もうほとんどいないらしいですからね。それも異端だったらしいですから」

「クク、お主にはお似合いだな?」

「ええ、自分でも思います」

「では、任せるとしよう」

「もう一度聞きますが、破壊しても?」

「……仕方あるまいな。ああ、俺からも頼む。急がないと、民や兵士にも犠牲が出てしまう」

「わかりました。では——シィ!」

 気合い一閃……居合い斬りをする。
 鎖は千切れ、グワンクワンと片方の橋が揺れる。

「じゃあ、俺がこっちをやるぜ! スゥ——オラァ!」

「いや! 拳じゃ……まじか」

 ガロンが放った拳は、橋の鎖を粉砕した。

(どれだけ強力な身体強化だ? いや、それだけじゃない。インパクトの瞬間に、腰のひねりと腕の回転を加えていた……これで、弱いと言われていたのか?)

「反対側はどうします?」

「ガロン殿、俺たちを投げられますか?」

「おう、余裕だぜ」

「では、行きましょう」

 片方の降りた橋の先端に来て……。

「では、お願いします」

 まずは、俺が乗り……。

「おう——オラァ!!」

 砲丸投げの要領で、空へと撃ち出される!

「くっ! 届くか!?」

 俺は手を伸ばし……橋の先端を掴む!

「ふぅ……バランスが悪い」

 斜めになっている橋の先端にて。バランスを取る

「アレス様!」
「よいしょっと」

 飛んできたアスナを引っ張り上げると……。

「う、撃てぇぇ! 早く!」

 矢が飛んでくるが……。

「ヤァ!」

 それらは、アスナが防いでくれる。

「早く魔法を撃て! 何をしてる!? 使えない奴らめ!」

「アレス様! 急いでください! 魔法が来る前に!」

「わかってる——シッ!」

 綱渡りのように移動して、左右の鎖を斬った瞬間——

「うひゃあ!?」
「おおっと!」

 とっさにアスナを抱きしめ、地上に降り立つ。

「ふぁぁ……ゾワってしましたよー。おしっこちびってません?」

(俺も懐かしい感覚だったな。いきなり宙に浮いたし)

「おい、勘弁してくれよ」

「あっ——来ますね」

「ああ、だが——問題ない」

 警戒していた魔法が飛んでくるが……。
 軽く動くだけで、容易く躱すことができた。

「威力も精度も低いな……やはり、魔法が弱い国のようだ」

(見習いであるセレナの方が、圧倒的に上だ。これは、ロナードがレナのことを頼むわけだ。ここでは、彼女の才能が育たない)

「何をしてる! 早く魔法を撃て! 弓兵! 何をしている!?」

 上にいる王子が、物凄い形相で喚いている。
 すると……二人もやってきたようだ。

「ライト! 無駄な抵抗はやめよっ! 今すぐに投降せよっ!  これ以上、国に混乱をもたらすな! 王だと名乗るなら、それくらいの気概は見せろっ!」

「ふ。ふざけるなっ! お前に投降するくらいなら、死んだ方がマシだっ! それに、この城には蓄えがある! 一年でも、二年でも、籠城してやる!」

「チッ……なんだ、あいつは。あんなのが王太子か」

「耳がいたいな……しかし、どうやら……もうダメかもしれんな」

「ロナード、流石に門は破壊しちゃまずいよね?」

「ああ、もはや材料がわからないからな。それに、いくらお主でも厳しいはずだ。上級にも耐えうる素材だと聞いている」

「そっか……ん? あれ?」

 扉が開いていく……。

「な、何故だ!? 誰が……アランドル!?」
「ライト様、もうお辞めください」
「どうやって出てきた!? 宰相はどうした!?」
「失礼」
「や、やめろ! 俺を誰だと! おい! 誰かこいつを殺せ! 王を拘束しようと……何故だっ! どうして誰もいない!?」
「すでに、貴方のお仲間は捕らえました。もう勝敗は決しましたよ。では、行きましょう」


 その光景を見て……。

「ふむ、近衛騎士団がいない思っていたが……」

「どうします?」

「ひとまず、このまま進むとしよう」



 警戒をしつつ、王城の中に入っていくと……。

「アランドル」
「これはロナード様」
「ヒィ!?」

 ライトを引きずりながら、アランドル殿が待っていた。

「さて、どういうことだ? 近衛騎士が見えなかったが」

「申しありません。我ら一同、牢屋に閉じ込められていたのです……恥ずかしながら、眠り薬によって……」

「いや、俺とて同じ手をくらった……やはり、宰相か?」

「ええ、そのようです。いまだに姿が見えないことを考えるに」

「う、嘘だっ! あいつが……!」

「なるほど……兄上、何を言われた?」

「ち、父上が、お前を極秘で王位につけるって! 母上もそう聞いたって!」

「ほう? それで……殺したのか?」

「し、仕方ないだろう!? 高貴な血を引く、俺が国王になるべきだっ! お前のような雑種ではなく! それを! あのクソ親父!」

「アランドル、王妃は?」

「それが……誰かに刺され、亡くなっておりました」

「へっ? は、母上が? だ、誰がやったんだ!?」

「なるほど……宰相と王妃はグルだった可能性があるか。口封じか?」

「な、何を言ってる!?」

「貴方は……いえ、知らない方が幸せかもしれませんね」

「兄ですらない可能性か……ライト、お前は罪を犯した」

「く、くるなぁぁ——!」

 ロナードが歩き、地面をカラカラと剣を引きずる音がする。

「どんな理由があろうと、父上を殺したお主を許すことはありえない。だが、仮にも兄弟として育った中だ……苦しまないように——俺が始末をつける」

「や、やめ——」

 剣を水平になぎ——ライトの首が宙を舞う。

 その顔は……驚愕に染まっていた。
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