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青年期~前編~
救出劇
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……さて、どこまで保つか。
闇の衣をまとい、アスナと地下牢を移動しているが……。
戦闘や帰りのことを考えると……無理は禁物だ。
「なあ、ロナード様って、この下にいるんだろ?」
「ああ、そう聞いてる」
「あーあ、なんでこうなっちゃったかね」
「そんなこと言うなよ。ライト様派に聞かれたらどうする?」
「別にこれくらいは良いだろ? 別に敵対するわけじゃないし」
「まあ、そうだが……」
「なに? 助けたいのか?」
「いや、まあ……」
「まあ……あの人、良い人だったからなぁ。俺らみたいな下っ端にも、声かけてくれるし」
「ああ、そうだが……いや、やめておこう。俺たちだって生活がある」
……なるほど。
「なあ、聞いたか!?」
「ああ、ざまぁねえな」
「いい気味だよな! いつも民に優しくしろとか、上司なら部下を守れとか!」
「まあ、口うるさい人だったのは確かだ」
「ライト様が即位すれば、俺たちも自由にできるぜ。俺、街で良い女見かけたんだぜ」
「なに? そいつは良い。じゃあ、さっさと処刑してくれるように願うか」
「ハハッ! 違いねえ!」
……なるほど、見えてきたな。
明らかに、軽装でしっかりと巡回してるのが下級の貴族や兵士。
だらだらして、無駄に豪華な格好をしてるのが上級の貴族や兵士。
それぞれが王子について、派閥みたいになっていると。
そのまま兵士たちにぶつからないように、進んでいくと……。
階段があるが、見張りがいる……二階に降りる時はいなかった。
つまり、あの先にロナードがいる……ここからが勝負か。
俺はアスナと視線をかわし、作戦通りにする。
「なあ、交代まだか?」
「もうすぐだよ。ったく、こんな時間に来るわけねえし」
「だよなぁ、そもそもここに来ることすら無理だろ?」
「見張り台がいくつかあるし、兵士も巡回してるしな」
「それこそ消えてもしないとな!」
「ほら、つまんないこと言って——かっ」
「お、おい——ぐっ」
同時に動いて、それぞれを昏倒させる。
「ふぅ……どうやら急いだ方がいい。見張りの時間がどうとか言っていたな」
「ええ、行きましょう」
静かに階段を降り……奥へと進んでいく。
「あーあ、さっさと処刑日きまんねえかな」
「だな。そうすりゃ、面倒な見張りもしなくていい」
奥の方に、牢屋とは違う扉付きの部屋がある。
見張りといい、間違いなくあれだろう。
「じゃあ、寝ているといい」
「ぐはっ……!」
「ゴハッ……!」
昏倒した兵士を、二人で調べるが……。
「鍵が……ないのか」
「こっちもですねー」
「しかし……蹴破れるような扉ではないな」
「どうします?」
「その声は……アレス?」
「ロナード、良かったぁ……ああ、俺だよ。助けに来たんだ」
「他国の皇子であるお主が……俺は、何をもって返せばいい?」
「それは生き残ってからにしよう。ロナード、扉を斬るから離れてください」
「……わかった」
「よし、行くぞ——火炎刃」
火をまとった剣を振り下ろすと……バターのように扉が斬れる。
「アレス……感謝する」
「気にしないでください、ロナード。弟子の頼みでもありますから」
「しかし、どうやって……いや、今は良い」
「助かります。では、さっさと出て行くとしましょう。すぐにても気づかれます」
「いや待て、そこにいる奴を助けてくれるか? 俺を助けようとして暴れたのだが、俺を人質に取られて捕まってしまったのだ」
「わかりました、それなら……火炎刃」
ロナードが指定した扉を斬ると……。
「おおっ! 扉が開いたぜ!」
「で、でかい……」
扉から、二メートル近い男が出てくる。
筋肉隆々で、囚人服の上からでもわかる、たくましい肉体の持ち主だ。
身体のあちこちに傷があり、まさしく歴戦の猛者って感じだ。
「あん? なんだ、貴様は?」
「ゼスト! それが助けてくれた方に言うセリフか!」
「おおっ! ロナード! 生きてやがったか!」
「ふ、二人とも、声がでかい……!」
「あちゃー、もう遅いですねー」
階段を駆け下りてくる音が聞こえる。
「馬鹿者!」
「うるせーな!」
「もう! 作戦が台無しだよ!」
「ご主人様、腹をくくりましょー」
「はぁ……仕方ないか」
階段を降りてきた兵士達を見て、覚悟を決める。
「いや、待て……諸君! 我が名はロナード! 国王陛下殺害の汚名を着せられた者である! しかし、私は亡き先祖に誓って、していないと宣言しよう!」
「ど、どうする?」
「いや、俺は……」
「ロナード様が、もう人質じゃないなら……」
「我は親殺してあるライトを討つ! 我につくなら、これまでの事は水に流す! 諸君らも生活や家族があるだろう! 俺に味方しろとは言わない! ただ、敵にならなければいい!」
「お、俺は……ロナード様につきます!」
「そうだ! ここまで言ってくれて……!」
「どうぞ! お通りください!」
武器を放り投げ、左右に分かれ……一本の道ができる。
見事だな……ロナードは、まさしく王者の資質がある。
「感謝する! では、行くとしよう」
「おう!」
「やれやれ……まいったな」
「少し妬けますかー?」
「ああ、俺があの立場だったら……」
ライル兄上やヘイゼル兄上が、父上を殺し……。
いや、そんな事はあり得ない。
さあ、気を引き締めていかないと。
ある意味、こっからが本番だ。
闇の衣をまとい、アスナと地下牢を移動しているが……。
戦闘や帰りのことを考えると……無理は禁物だ。
「なあ、ロナード様って、この下にいるんだろ?」
「ああ、そう聞いてる」
「あーあ、なんでこうなっちゃったかね」
「そんなこと言うなよ。ライト様派に聞かれたらどうする?」
「別にこれくらいは良いだろ? 別に敵対するわけじゃないし」
「まあ、そうだが……」
「なに? 助けたいのか?」
「いや、まあ……」
「まあ……あの人、良い人だったからなぁ。俺らみたいな下っ端にも、声かけてくれるし」
「ああ、そうだが……いや、やめておこう。俺たちだって生活がある」
……なるほど。
「なあ、聞いたか!?」
「ああ、ざまぁねえな」
「いい気味だよな! いつも民に優しくしろとか、上司なら部下を守れとか!」
「まあ、口うるさい人だったのは確かだ」
「ライト様が即位すれば、俺たちも自由にできるぜ。俺、街で良い女見かけたんだぜ」
「なに? そいつは良い。じゃあ、さっさと処刑してくれるように願うか」
「ハハッ! 違いねえ!」
……なるほど、見えてきたな。
明らかに、軽装でしっかりと巡回してるのが下級の貴族や兵士。
だらだらして、無駄に豪華な格好をしてるのが上級の貴族や兵士。
それぞれが王子について、派閥みたいになっていると。
そのまま兵士たちにぶつからないように、進んでいくと……。
階段があるが、見張りがいる……二階に降りる時はいなかった。
つまり、あの先にロナードがいる……ここからが勝負か。
俺はアスナと視線をかわし、作戦通りにする。
「なあ、交代まだか?」
「もうすぐだよ。ったく、こんな時間に来るわけねえし」
「だよなぁ、そもそもここに来ることすら無理だろ?」
「見張り台がいくつかあるし、兵士も巡回してるしな」
「それこそ消えてもしないとな!」
「ほら、つまんないこと言って——かっ」
「お、おい——ぐっ」
同時に動いて、それぞれを昏倒させる。
「ふぅ……どうやら急いだ方がいい。見張りの時間がどうとか言っていたな」
「ええ、行きましょう」
静かに階段を降り……奥へと進んでいく。
「あーあ、さっさと処刑日きまんねえかな」
「だな。そうすりゃ、面倒な見張りもしなくていい」
奥の方に、牢屋とは違う扉付きの部屋がある。
見張りといい、間違いなくあれだろう。
「じゃあ、寝ているといい」
「ぐはっ……!」
「ゴハッ……!」
昏倒した兵士を、二人で調べるが……。
「鍵が……ないのか」
「こっちもですねー」
「しかし……蹴破れるような扉ではないな」
「どうします?」
「その声は……アレス?」
「ロナード、良かったぁ……ああ、俺だよ。助けに来たんだ」
「他国の皇子であるお主が……俺は、何をもって返せばいい?」
「それは生き残ってからにしよう。ロナード、扉を斬るから離れてください」
「……わかった」
「よし、行くぞ——火炎刃」
火をまとった剣を振り下ろすと……バターのように扉が斬れる。
「アレス……感謝する」
「気にしないでください、ロナード。弟子の頼みでもありますから」
「しかし、どうやって……いや、今は良い」
「助かります。では、さっさと出て行くとしましょう。すぐにても気づかれます」
「いや待て、そこにいる奴を助けてくれるか? 俺を助けようとして暴れたのだが、俺を人質に取られて捕まってしまったのだ」
「わかりました、それなら……火炎刃」
ロナードが指定した扉を斬ると……。
「おおっ! 扉が開いたぜ!」
「で、でかい……」
扉から、二メートル近い男が出てくる。
筋肉隆々で、囚人服の上からでもわかる、たくましい肉体の持ち主だ。
身体のあちこちに傷があり、まさしく歴戦の猛者って感じだ。
「あん? なんだ、貴様は?」
「ゼスト! それが助けてくれた方に言うセリフか!」
「おおっ! ロナード! 生きてやがったか!」
「ふ、二人とも、声がでかい……!」
「あちゃー、もう遅いですねー」
階段を駆け下りてくる音が聞こえる。
「馬鹿者!」
「うるせーな!」
「もう! 作戦が台無しだよ!」
「ご主人様、腹をくくりましょー」
「はぁ……仕方ないか」
階段を降りてきた兵士達を見て、覚悟を決める。
「いや、待て……諸君! 我が名はロナード! 国王陛下殺害の汚名を着せられた者である! しかし、私は亡き先祖に誓って、していないと宣言しよう!」
「ど、どうする?」
「いや、俺は……」
「ロナード様が、もう人質じゃないなら……」
「我は親殺してあるライトを討つ! 我につくなら、これまでの事は水に流す! 諸君らも生活や家族があるだろう! 俺に味方しろとは言わない! ただ、敵にならなければいい!」
「お、俺は……ロナード様につきます!」
「そうだ! ここまで言ってくれて……!」
「どうぞ! お通りください!」
武器を放り投げ、左右に分かれ……一本の道ができる。
見事だな……ロナードは、まさしく王者の資質がある。
「感謝する! では、行くとしよう」
「おう!」
「やれやれ……まいったな」
「少し妬けますかー?」
「ああ、俺があの立場だったら……」
ライル兄上やヘイゼル兄上が、父上を殺し……。
いや、そんな事はあり得ない。
さあ、気を引き締めていかないと。
ある意味、こっからが本番だ。
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