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青年期~前編~

ロナード殿との会話

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 鍛錬を終えると……。

「ぜぇ、ぜぇ……なんで、息を切らしてないんですか?」

「こ、これは……体力までもあるんですねー」

 二人は寝転んで、息を切らしている。

「まあ、この程度ならね。カイゼルの扱きは、こんなものではなかったし。二人とも、俺を退屈させないてくれよ?」

「あっ、今ムカつきましたね」

「むぅ……安い挑発ですけど、効果的ですねー」

「うむ! 見事なのじゃ!」

「あちゃー、私でも勝てませんね」

「ありがとうね、二人とも」

 意外にも、大人しく見ててくれたし。

「う、うむ……あ、あの!」

「ん? どうしたの? レナちゃん」

 きちんと膝を曲げて、目線を合わせる。

「うぅー……」

「あらあら~、お嬢様ってば照れてますね?」

「て、照れてないもん!」

 うん、やっぱり子供は子供らしくないとね。
 いずれ、いやでも大人になるけど……王族とはいえ、少しくらいはね。

「何か用事があったんじゃないのかな?」

「わ、我にも戦いを教えて欲しいのじゃ!」

「へっ?」

「あ、アレス殿は、魔法も使えると聞いたのじゃ」

「まあ、使えますけど……ということは?」

「ええ、お嬢様は地属性の魔法に適性がありますよ。ただ、必要ないということで教えていませんが」

「なるほど……それは、許可を得ないと無理かなぁ」

「や、やっぱり……」

「うーん……どうして、そう思ったんだい?」

「その……ア、アレス殿と仲良くなれるかなぁって」

「そっか、ありがとね」

「あぅぅ……」

「なるほど、無意識キラータイプですか」

「ハハ……別にそういうわけではないですよ? ただどんな相手でも、なるべく真摯に向き合っているだけです」

「ふむ……お嬢様の始めの態度も軽く受け流したことといい……面白い方です」

「そ、それはどうも?」

 褒められたんだか、微妙な感じだけど。

「だ、ダメですか……?」

「いや、そんなことはないよ。じゃあ、国王陛下に会うときに聞いてみるよ」

 俺がそう言うと、パァっと顔を明るくする。

「わぁーい! ……あっ——さ、さらばじゃ!」

 そう言い、ピューと走り去っていく。

「あらあら、素が出て恥ずかしかったんですねー。では、私もこれにて」

「あっ、風呂って勝手に入って良いですか?」

「ええ、もちろんです」




 二人が去ったあと、許可を得たので風呂に入る。

「ふぅ……良い湯だ」

 そのまま、浸かっていると……。

「邪魔するぞ」

「へっ? ……ロナード殿?」

「風呂に入っていると聞いたのでな」

「言ってくれれば、すぐに出ましたのに……」

「いや、俺も入りたいと思っていたからな……フゥ」

 そう言いながら、俺の隣に座る。
 それにしても……良い体つきをしているな。

「むっ?」

「あっ、すみません。鍛えられた身体だと思いまして」

「うむ、これでも将として戦いを生業にしているからな。たまにだが、剣闘士もしているしな」

「そのお年で将ですか……凄いですね。それと、剣闘士とは……?」

 前世のイメージ通りならわかるが、一応聞いてみる。

「そうか、そちらの国ではあまり知られていないのだな。うむ……では、まずはそこに連れて行くとするか」

「えっと……?」

「闘技場があるから、そこに行くとしよう。その行きに、これからについても説明しよう。国王陛下から言付けを預かっているしな」

「なるほど、わかりました。では、出るとしましょうか」

「うむ、良い湯であった。やはり、気を使わない相手は楽で良い」

「ああ、それはよくわかります。お世話係の人には申し訳ないですが、一人の方が気楽なんですよね」

「ハハッ! やはり、お主とは気が合いそうだ」

「それに自分の身は自分で守りたいですから。自分のために、誰かが犠牲になるなんて嫌ですし」

「うむ……皇族にあるまじき発言だな?」

「わかっていますよ、自分が歪んでいることは」

「そうか……まあ、俺も似たようなものだ。さあ、行くとしよう」






 風呂を済ませ、準備をして、三人で馬車に乗る。
 ダインさんは、自らお留守番を買って出てくれた。
 貴重品や荷物などもあるからと。
 相手を信用していないわけではないが、一応他国だしね。

「レナ王女は良かったのですか?」

 最後まで行きたいとただをこねていたが……。

「うむ、甘やかし過ぎると良くないからな」

 そう言いつつも、少し凹んでいる様子だ。

「難しいですよね……自分の立場や相手の立場を考えてしまうと」

「そうだな……親の愛を知らぬ彼奴には、出来るだけ甘やかしてやりたいが……そういうわけにもいかん。この国唯一の王女にして——貴重な政治の駒となるのだから」

 ……これは、はっきり言って他人事ではない。
 姉上だって、たまたま相手が良かっただけで……。
 それに、将来的にエリカがそうなる可能性が高い。
 父上や母上が、どう思おうとも……。

「ふふ~二人共兄馬鹿ですねー」

「おい、俺はともかく……」

「アレス殿、気にするな。風呂の前で待機していたから、その時に言っておいた。少なくとも一年の付き合いになるのだから、砕けた口調で良いと。それに、奴で慣れている」

「そういうことですよー」

「ったく、そういうことは早く言ってくれ」

「すみませんねー」

「クク、お互い癖のある部下には苦労するな?」

「ええ、全くです。ですが、変わり者のにはこれくらいが丁度いいのかと」

「ハハッ! 違いない!」

「むぅ……複雑ですね」

「さて……例の件について話しておくか」

「許可の件ですね?」

「ああ、そうだ。一応、普通の図書館の出入りは自由だ。あとは、街の中も見張りがつくが自由て良いと。外に行くには、俺が同行する必要があるとのことだ」

 ……随分と破格の待遇だな。
 もっと動きを制限されると思っていたが……。

「ありがとうございます。それで、十分です。ロナード殿には迷惑をかけてしまいますか。……」

「なに、気にするな。俺とて用事がないと自由には動けん。それと、気になってるようだから言うが……国王陛下は、アスカロン帝国と友好を深めたいと思っている」

「なるほど、それで待遇がいいのですね」

「一部の……まあ、ほとんどの貴族は反対しているがな。長年の宿敵に膝をつくのか!とな。そもそも、国土の広さや戦力も違うのに、一体なにを言っているのだが。何より、今はそんなことを気にしてる場合ではない」

「……女神の結界ですね?」

「ああ、それもある。しかし、問題は教会だ」

 そっか……国の位置的に、教会とグロリア王国は隣になるのか。
 我が国はノスタルジアを挟んでいるので、中々情報が入ってこないが……。

「やはり、浄化を傘に着て好き勝手にしていると?」

「うむ、その通りだ。光魔法の使い手は、奴らしか持っておらぬ。こっちで、対処すると押し留めているが……民の不安は増すばかりだ」

「こちらでもですか……国に行ったことはありますか?」

「ああ、少しだけだかな。教会の神父や神聖騎士が偉そうにしていたな。確か『ここに住める貴方達は幸せ者です。何故なら瘴気のほとんどない聖なる土地なのですから。これも女神様のおかげですね』とか言ってたな」

「噂は本当なんですね」

 教会の土地には、瘴気がほとんど出ない——つまり魔物がほぼ出ない。
 そりゃ、民が信仰するのも無理はない。

「だが、どうもきな臭い」

「ええ、わかります。うまく出来すぎていますね」

「そういうことだ。俺はそこまで気にしていなかったのだが、ロンドと会って考えが変わった。言われてみるとこの世界は、何かがおかしい気がすると」

「同感です」

「うむ、お主と会えたことは僥倖だったかもしれぬ。おっと……そろそろ着くな」

 闘技場か……真面目な話の後だけど……。

 やはり、男として少しワクワクしている自分がいるな。
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